いつもお世話になっているお花屋さんがある。

 

花屋にコーヒーだけが飲める喫茶スペースが少しだけあり、

 

世間一般のお花屋さんのイメージとは少し違った、レトロ感あふれる花屋さんだ。

 

店主は60代の女性。

 

カヨ子さんという。

 

カヨ子さんと仲良くなってもう10年ほど経つ。

 

ヒロシとの再婚を決めかねたときに、何の気なしにカヨ子さんのところにコーヒーを飲みに行った。

 

「今日はお花は買わないの?」

 

と聞かれ

 

「うん、今日は買わない。コーヒーだけ頂きに来た」

 

とだけ言うと、

 

「なんか心が曇ってるね。まぁここでお花に癒してもらうといいわよ」

 

とだけ言ってカヨ子さんは作業を始めた。

 

値段で言うなら数十万はするであろうエスプレッソマシーンが、でん!と置いてあり、

 

その横には普通のコーヒーメーカーが置いてある。

 

“セルフで入れて飲んでください”“1杯200円”

 

とだけ書いてある。(笑)

 

カヨ子さんらしい。

 

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細身の体にいつもデニムのスキニーパンツをはいて、黒いエプロンをしている。

 

年季の入ったエプロンはいつから買い替えていないのだろうかと思わせる。

 

髪の毛は藁のようにパサついており、その髪を一つにまとめているのがカヨ子さんスタイルだ。

 

寒い日も暑い日も、小言一つ言わずに仕事をしているのだ。

 

彼女のような女性はどこに愚痴をこぼすのだろう・・・。

 

仲良くなったきっかけの出来事がある。

 

10年前、未亡人だった私は夫の墓に花を飾りに行くための花を買いに、まだ4歳のエマを連れてカヨ子さんのお花屋へ入った。

 

前々から可愛いお花屋さんがあるなとは思っていた。

 

店内にエマの手を引いて入ると、

 

「いらっしゃいませ」

 

と高い声がする。

 

パっと見ると、若い頃はさぞ美人だったのだろうな~という感じの女性が見えた。

 

ヨチヨチと歩くエマを見て可愛いねと話しかけてくれた。

 

「あのね、パパのね、お花をね、買いにね、来たの。エマちゃん」

 

とエマが上手にカヨ子さんに話すのだ。

 

「そう~^^パパお誕生日か何かかな!可愛いね~」

 

「パパね、お空にいるよ、あのね、エマちゃんのパパね、お空なんだよ、あそこ!」

 

と、エマが小さな手で人差し指を上に向けてカヨ子さんに説明している。

 

私は笑って、

 

「亡くなってるんですよ。それでお墓にまいろうと思って・・・」

 

というとカヨ子さんは私に何の気を遣うわけでもなく、驚くわけでもなく、

 

「そう。じゃあ菊とかがいいの?」

 

というので、

 

「いえ、もうちょっと明るい感じのお花がいいかなと思って」

 

と会話をした。

 

カヨ子さんはエマに飴を差し出してくれた。

 

4歳のエマは飴を見て

 

「こえ(これ)まだママが食べちゃダメっていうやちゅ(やつ)」

 

と言うのでカヨ子さんと笑った。

 

そうこうして花を買い、レジに行くと私の顔面から静かに鼻血がでれ~っと流れてきた。

 

Σヽ(゚Д゚; )ノ  ハッ・・・

 

持っていたハンカチタオルで押さえるも、止まる様子のない鼻血に私は調子を悪くして立っていられなくなってしまった。

 

脇で泣くエマを抱きながら私の介抱までしてくれるカヨ子さん。

 

いつまで経っても止まらない鼻血にさすがのカヨ子さんも怯み、

 

「あぁもう救急車呼ぶわよ」

 

と言う。

 

狭いカフェスペースの椅子に腰かけたままの私に、

 

カヨ子さんが

 

「あなた、名前は?住所は?」

 

と。

 

そうこうしているうちに救急車が到着したが、そのころには鼻血は止まっていた。

 

駆けつけてくださった救急隊員さんには平謝りし、私は救急車に乗ることなく、

 

もう暫くカヨ子さんのお店で休ませてもらった。

 

カヨ子さんと親しくなったきっかけが私の鼻血だったとは・・・