最初の夫を自死で亡くしたとき、
つい数日前まで一緒に笑って喋って食事を食べて触れ合っていた生身の人間が、
仏様になっている様子を間近で見た。
人というのは、自分の想像を絶する光景を目の当たりにすると、
涙は出ないものだと知った。(人によるのかもしれない)
ただただ無になる。
一体これはどういうことなのか?
夢を見ているのだろうか?
ドラマのワンシーンにある大袈裟な「〇〇子!〇〇子!〇〇子ぉぉ!」というようなことはない。
空虚という言葉が最も似つかわしいかもしれない。
“え。死んでなんかないでしょw頬だってほんのり桃色をしている。w”
俄かに気が狂った人間のように、笑みさえこぼれる。
今は亡き夫が本当に死んでいるのかを確かめようと、私は躊躇なく彼を触ろうと真横まで近づき、
腕に触れた。
「ちょ、ちょっと待ってね、ご遺体は後でご自宅にお運びしますから」
と立ち会っていた警官に離された。
それでも一瞬触れた腕は温かさがなく、まさに、血が通っていない硬い物質だった。
あれからもう14年が経つ。
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自宅に戻ると旦那がいない。
あれ・・・コンビニにでも出かけたの?
住んでいたアパートの外に出てその周辺を走って旦那を探した。
あれ~・・・いない。
アパートの階段を上がり、部屋に戻ると部屋の中には少し疲れた顔をした旦那がいる。
「ふぅ・・・・どこ行ってたのぉ・・・急にいなくなるからびっくりして探し回っちゃったじゃん!」
と言うと旦那は
大変申し訳なさそうな、バツの悪そうな表情をして私を見る。
「ごめんごめん、」
隠し事をしているときの旦那の表情だ。
いつも私はそれに気づいていたのに気づかないふりをしていた。
夫婦間にだって秘密はある。
言いたくないことは言わなくてもいい。
優しく理解のある妻でいたかった私は、夫の本質部分を見逃していた。
完全に。
いや、見逃していたのではない。
諦めていた。
でも私は判っていた。
夫が何か隠し事をしていたことぐらい。
それでもいい。
帰って来てくれたんだ。
「もぉ~!どっか行くときは一声かけて行ってよね。びっくりしちゃうから!」
と旦那に言って、そのまま旦那に抱き付いた。
背の高い旦那の顔をふと見上げると、心ここにあらずな表情をしている。
不安で不安で心が圧し潰されそうになった。
不安は増長し、脈拍が速まるのを感じる。
でも生きてるからいい・・・生きてるからいいんだ・・・
ツライもう。
私もうこんなところに居たくない、消えたい、いなくなりたい。
そう思っていると、パっと目が覚めた。
疲れた・・・
すごく疲れる夢だった・・・
なんだもう・・・夢じゃん・・・
そうよ・・・だって死んだんだもの・・・
そのまま脱力感に襲われてそのままいると、
さらに目が覚める。
これも夢?
何処までが夢?
どこからがこっち?
私は時々、こんな無限ループな夢を見る。
この夢を見る時は、疲労感が半端ない。
自死遺族の残された側は生き地獄なのだ。
私はいまだにこんな感覚に陥ることがある。