美晴とたった二人で沖縄旅行に行ったことがある。

 

過去に数回(笑)

 

レンタカーを借りて色々な観光地を廻った。

 

3度目の旅行では沖縄慣れして、観光地などには行かないでひたすら沖縄の美味しいものを食べてゆっくりした記憶がある。

 

「なんか恋人みたいよねw」

 

「やめてよw一生結婚出来ないみたいなその言葉!」

 

美晴と私は、お互いに夢を語り合いながらいた。

 

私は仕事が楽しくて、美晴にいつも

 

「キャリアウーマンになったらハルは絶対に婚期逃すだろうね~」

 

と言われていた。

 

美晴はとても現実主義で、夢見がちな発言はあまりしない。

 

「私は普通に結婚して子供二人ぐらい産んでそこそこ平凡な人生が送れたら目標達成ってとこかな~」

 

と言う。

 

「え~。ねぇその目標の先に、子育てが一段落したら私と旅行しまくるって追加してくれないの?」

 

と、私は面倒臭く美晴に甘えるのだ。

 

すると美晴は

 

「そんなこと言わなくたってどうせハルは自分で旅プラン持って行こうって言ってくるでしょw」

 

と笑う。

 

家族よりも共有していることが多い。

 

そんな美晴との写真はアルバム20冊分ほどもある。

 

いつだって気づけば美晴が傍にいた。

 

何も言わなくても、ただただ傍にいてくれた。

 

いま私は事務所の窓際のPC席でブログを打ち込んでいる。

 

背中にあたる西日が暖かくて眠気を誘う。

 

無邪気な太陽は娘たちで、

 

そっと背中を温めてくれる太陽はヒロシと美晴。

 

美晴家族はご主人も私をよく知ってくれている。

 

私が死別をしたとき、

 

何も言わずにまだ歩けない長女を代わりに抱いてくれていた。

 

義父母は自分の息子を亡くしてそれどころではなかったし、うちの両親も私に気兼ねをして黙っていた。

 

夫を亡くした私はもちろん辛かったが、

 

実の両親の気持ちを考えると苦しかった。

 

父のことだから、私が今どんなに心を痛めているのかと父こそ悲しんでいるだろうと思った。

 

また、母は感受性の強い母であるため、ときおり私を見るあの大きな目だけで心の声が聞こえてきた。

 

母が口元に当てたハンカチから、スッと尖った鼻先が悲しそうに見えた。

 

時間だけをもとに戻したかった。

 

お葬式を終えると美晴が私の近くに居て、

 

「ちょっとエマちゃん抱いておくから水分とっておいで」

 

と言った。

 

後に聞いたが、唇がパッサパサなのが気になっていたらしい。

 

取りたくもない水分をとった私は、美晴の場所に戻り、

 

エマを再び抱こうとすると、美晴がもう少し抱いていてくれると言う。

 

エマは泣かなかった。

 

寝ていたわけではないし、人見知りをしなかったわけでもないのだが、美晴には黙って抱かれていた。

 

特に何を話すわけでもなく、美晴が隣に立っている。

 

抱いているエマをあやすように、足でリズムをとっている。

 

そして美晴が

 

「あんた、おばちゃんやおじちゃんのこと考えてるでしょ。さっきうちね、おじちゃんとおばちゃんとお話ししたのよ。」

 

と言う。

 

美晴は続けて

 

「今はそれでいいけど、ダメになったら言っておいで。うち暇してるから。ね?」

 

とだけ言ってくれた。

 

感情が鈍くなっており、涙は流れない。

 

人間は、自分が深く傷つかないようにするための、本能を持っているのかもしれない。

 

その時の私は完全に“無”だった。

 

美晴の言葉もさほど心に響かなかった。

 

日を追うごとに悲しみは深まり、時間など薬にならないと心の中で嘆いていたが、

 

不思議なことに5年が経過したあたりから、少しずつ心が取り戻されていく気がしていた。

 

きっと、私より美晴が泣いていただろうなと思うようになった。

 

私が大好きな美晴はそういう人間だ。

 

美晴はときどき、

 

「今日はハルが必要なの」

 

と言う。

 

そういう誘い方をする。

 

そういう時の美晴は悲しいことがあったときだ。

 

そんなとき私はどんな予定が入っていても出来るだけ美晴のために時間を使うようにしている。

 

美晴は自分が私を思って流してきた涙や費やしてきた時間、お金のことは一切口に出さない。

 

恩着せがましく言葉にするのは私を笑わせる時に使うツールなだけで本心ではない。

 

そんな美晴の夢を、昨夜見た。

 

悪い夢ではなかった。

 

普通の夢だった。

 

連絡がなくても美晴は美晴のままだし、私も私のままだ。

 

これからもずっと、前を向きながらときを重ねていく。

 

夢の中の美晴は綺麗なドレスを着ていてものすごい笑顔でいた。

 

私と一緒に遠くに出かけるのだと言っている。

 

だから私にも、早く正装しろと言っていた。

 

何しに行くの?と聞くと美晴は

 

「人のためになることしに行くんでしょ?」

 

と笑っていた。