スクリーンで自分の至らなさと、
予想だにしない相手の気持ちを知り、途方に暮れた。
スクリーンにはもう何も映っていない。
とにかく歩こう・・・。
少し歩くと川が流れている。
川幅は500mぐらいだろうか・・・深さとしてはあまり深くはなさそうだ。
その川向こうから私を呼ぶ声がする。
呼ばれて行こうとすると、そこに居合わせた女性に
「渡るのに800円いるらしいのよ。」
と言われた。
(; ・`д・´)ナヌッ
お金持ってない・・・
ここは渡れないのか・・・
そう思って私はその場所を引き返した。
またしても私は途方に暮れた。
随分と長い距離を宛もなく歩いた。
さっきいた場所へ戻りたくて歩いた。
しかし、歩けども歩けども目的の場所に辿り着かない。
道標があればいいのに…
どうしようか・・・そう思っていると、美晴の声がした。
両親の声もした。
あれ?妹も声もする。
そして、わたしは眠りに落ちる瞬間に感じる、落ちていく感覚、
あれを“入眠時ミオクローヌス”と呼ぶらしいが、
まさにそれを感じたのだ。
ふぅ~・・・
小さく息を吐くと目が開いた。
一番に見えたのは両親の顔でもなく妹の顔でもなく、病院の無機質な天井だった。
そしてその次に見えたのが父の顔だった。
「ハル。見えるのか?おい、恵子!(母の名前)ハルが起きたぞ」
いでででで・・・・
体が思うように動かない・・・
首も回らない?
両親と妹は泣いていた。弟はその場には居合わせなかった。
そして一番泣いていたのは親友の美晴だった。
そんなこんなで私は長い夢を見ていたようだ。
臨死体験とはよく言ったものだ。
私が昏睡だった間に見た夢とも言えるが、私個人の記憶などを集めると、
それは紛れもなく私自身が体験したものだと言わせてほしい。
あの場所の花の香りを覚えている。
あの場所の温もりを覚えている。
川を渡るのにお金がいると言った女性の声も顔もはっきりと記憶している。
私はその日からみるみる回復して退院することが出来て今に至る。
この話は、家族には話した。
私の家族は皆、泣いて喜んでいた。
私は思った。
生きてて良かった・・・と。
私が生きているだけで、少なくとも5人の人間がこんなにも喜んでくれる。
この人たちを悲しませるようなことだけはしてはいけないんだ・・・
あの時、強くそう思った。
あの時、病室で美晴が撮ってくれた私たち家族の写真には、
私たち家族を横切る七色の光の筋が写っていた。
今もその写真は実家に飾られている。
病室は窓際だったがカーテンは閉まっていた。
不思議なこともあるものね、と皆で話したのを覚えている。
私の帰る場所はここなのだ、
強くそう思った。
私が20歳の頃の話。