長いトンネルを抜けた私は、やっと出口に辿り着いたと、辺りを見渡した。

 

眩しすぎて目がくらんでいた。

 

その光に目が慣れて、やっと辺りの様子が分かって来た。

 

決して行ったことのある場所、見たことがある場所ではないが、

 

一言で表現するのであれば途轍もなく懐かしい場所だった。

 

新緑の緑色の草原、名の分かる花や名も知らぬ花がそこかしこに咲いている。

 

眩しさの正体は太陽なのか?

 

目が眩むほどの眩しさであるにも関わらず、イヤな感じは全くしない。

 

寧ろその温かさ、その居心地の良さ、その懐かしさから胸がいっぱいになる思いでいるのだ。

 

温かい。

 

まだ幼い頃によく転んで帰宅した際に、母親が優しく私を抱きしめてくれたあの時の温もりのような

 

そんな温かさなのだ。

 

気持ちがいい・・・私はずっとそこに居たいとさえ思った。

 

その場所に、白い服を纏った女性とも男性とも分からない人がおり、

 

その人の隣に大きなスクリーンのようなものがある。

 

そこには私がうつっている。

 

見ると、走馬灯のように私の人生が映し出されているのだ。

 





高校生の頃、生徒がいつも通っていた個人商店であるパン屋さんの前にあるベンチに、

 

私の名前が彫刻刀か何かで彫られていたことがあった。

 

それも、「死ね」という言葉を添えて。

 

それを見つけた友人が御丁寧にも私にそれを知らせてくれたのだ。

 

「ハル、これ・・・」

 

フルネームで彫られた自分の名前の下に死ねとあった。

 

心臓に包丁が突き刺さったような感覚に陥ったが、その友人の前ですぐに気持ちを整えて笑った。

 

「ははwよくあるいたずらみたいなもんよね。もうw誰がこんなことするんだろうねぇ?w」

 

と、痛くも痒くもないふりをした。

 

誰がやったのか、だいたい検討はついていた。何故か私を毛嫌いしていた女子が数人いた。

 

その数人の女子が、なぜ私を毛嫌いしていたのか・・・。

 

その理由がそのスクリーンに映し出されていたのだ。

 

私は驚いてハっと息を飲んだ。

 

理由は・・・

 

その女子が好きだった世界史の男性教師がどういうわけか私にだけ優しく、

 

何を差し置いても私と関わりたがっていたのを、私も悪く思わず、またまんざらでもなく仲良くしていた。

 

高校生の頃の話だ。

 

私はその女子たちがその先生に好意があるのを知っていてその先生と仲良くしてしまっていた。

 

私に悪気はなかった。

 

それ以上の関係になるはずがないと思っていたからだ。


そして私同様、その女子達も同じくらいの気持ちだろうと思っていた。


しかし、その女子のなかの一人は本気でその先生と交際がしたいと思っていたらしい。

 

それがスクリーンに映し出されて、その女子数人が口々に言っている。

 

「ハルちゃんってうちらが先生に気があるの知っててわざと仲良くしてるよね、絶対そうだよね」

 

と。

 

そうか・・・

 

そんな風に思わせてしまってたんだ・・・

 

だから死ねって書かれてしまったのか・・・

 

走馬灯を一つひとつ見ている。


それ以外のストーリーもいくつか見た。


どのくらい経っただろう。

 

そしてスクリーンは何も映らなくなった。