私は夫の事が大嫌いだった。

 

そもそも死別した私は長女を私独りで育てる覚悟をしていたし腹を括っていた。

 

それが・・・

 

近所のおばさんに紹介されたヒロシに会ったところ・・・

 

会ったその日に結婚を申し込まれた。

 

面食らった私は、遠回しにお断りしたつもりだった。

 

「御存知の通り私には子供もいますし・・・。子供が一番ですから・・・。」

 

そんなことを言ったと思う。

 

するとヒロシは

 

「じゃあ次は子供ちゃんも一緒に会いましょう」

 

と言った。

 

長女エマは父親を亡くしてからというもの、近所のおじさまやうちの弟、そしてじぃじが父親代わりとして

 

それはそれは皆様から可愛がってもらったこともあり、おじさんに対する警戒心は薄かった。

 

ヒロシに会ったエマは、何の警戒心もなく、ヒロシのお膝の上にコトンと座った。

 

当時エマ6歳だった。(小学校入学前って6歳だったかな)

 

お家に戻る車の中でエマが「ママ、あのおじちゃんの手いっぱい汚れてたね。いっぱい働くじぃじの手と一緒!」

 

と言った。ハッキリと覚えている。

 

些細なエマの一言に、私は泣いた。

 

どの部分にどう感動したのかは、よく分からない。

 

それと・・・ヒロシは私と初めて会ったとき、死別の件に少し触れて来た。

 

身上書を簡単に交換してあったことから、お互いの最低情報はお互いに知っていた。

 

「結婚していた相手の方、亡くなったんでしょう?」

 

「あ・・・はい。」

 

「それから独りで?」

 

「はい」

 

「それは・・・・それはあのぉ・・・・つらかったでしょう・・・」

 

声が大きい。恥ずかしいからもっと小さい声で話して欲しい・・・

 

そんな気持ちとは裏腹に、こんなにもド直球で私の死別に触れてきた人が初めてだったこともあり、

 

思わず泣きそうになったこともあったのだった。

 

すっかり忘れかけていた。

 

エマの一言は私の心の中にずっと深く残っていた。

 

「エマ・・・あのおじさんのことどう思う?」

 

「ハゲてたね。あとは、いい人だと思う」

 

「あははwハゲてるんじゃなくて髪の毛が短いだけなんだよ、あれは。そっか。分かった。」

 

私はヒロシとの再婚を決断し兼ねていた。

 

16歳の歳の差。

 

高校時代の美晴ではない友人に相談をしてみたところ、

 

「え~!何とも言い難いけど、私としてはハルがまた早くに別れて泣く姿を見たくないから、うんとは言えない」

 

と言われた。

 

友人が私を思ってくれる気持ちに感謝しつつ、そうだよな、と思った。

 

美晴に相談をした。

 

「エマちゃんはなんて言ってるの?エマちゃんが嫌じゃなくてハルも嫌じゃないんならいいんじゃない?やっぱりね、子供育てるうえでパパの存在って大きいなって私は思うのよ」

 

と、美晴は言った。

 

パパの存在は大きい←この言葉の意味がその時の私にはまだ理解出来てはいなかったが、

 

そうなんだ・・・・と思った。

 

結局、私は決め兼ねて母親の前で子供のように泣いてしまった。

 

母はそんな私を見て、

 

「やだぁ・・・ハルが泣いたらママまで涙出てくるじゃないの」

 

と言って母も泣いていた。

 

子供のためとか、そんな子供に託けて再婚するのは嫌だった。

 

私は私自身のために再婚を決断した。

 

正直なところ、経済的な心配もしなくていいだろうと、そういうことも考えた。

 

それからの私はまさに修行の日々。

 

身体も心もよく酷使したと思う。

 

不用意にエマを傷つけてしまったこともあった。

 

でもエマはいつもパパを悪く言うことはなかったし、私のことを大好きだと言ってくれていた。

 

エマなりに、私たちに気を遣っていたのかもしれない。

 

そして。

 

いつの間にか私は夫の事が大嫌いになっていた。