玄関でダウンジャケットを羽織り、外に出る。

 

肌を刺すような冷たい空気を思い切り吸い込むと室内との温度差に少し咳き込んだ。

 

改めて空気を吸うと、冬の匂いがした。

 

今年初めて感じた冬の匂い。

 

今年は冬の匂いがするのが遅いね・・・

 

とボソっと二女に言うと、二女は

 

「あ、サラも分かるよ!なんかね、寒い匂いだよね!」

 

という。

 

この子はちゃんと感性が磨かれている・・・と感心する。

 

今日まで部活動があった長女のお迎え時間まで、二女と近所のパン屋さんを目指す。

 

二女とは保育園に行くまでの3年間を、二人で毎日歩いて登園した。

 

その思い出の道を、今でも私と歩きたいと言う。

 

そして見慣れた道を行きながらよくカワセミを見つけたものだった。

 

カワセミとは綺麗な川にしかいないと言われている水辺に生息する小鳥だ。

 

鮮やかなブルーと鋭利なくちばし。

 

飛ぶスピードはそれはそれは速く、すぐに見失う。

 

翼をはためかせて飛ぶ姿は、一瞬で目と心を奪われる。

 

二女も初めてそれを見たとき、無言でその場に立ち尽くしていた。

 

感動していたのだろう。

 

 

そして

 

本日は12月29日だ。

 

一年があっという間である。

 

実は今年の6月の時点ですでに「え・・・もう半年が過ぎたのか・・・」と思っていた。

 

そこからの半年はさらに早く感じた。

 

大掃除に取り掛からなければ、年末だということを忘れてしまいそうなほどだ。

 

明日も、夫は仕事である。

 

雨ならば休むと言っている。

 

いつもの毎日である。

 

***

 

長く短い人生を、私は歩いている。

 

今のところ迷子にはなっていない。

 

一時期、自分探しの旅に出ると言って迷子になっていた時期があった・w・;

 

ろくなもんじゃないw

 

今年も徐々に友人からメールが届く。

 

“あけおめ!”←え?早くね?

 

そして、夢を見た彩ちゃんが私が紹介した病院で不妊治療を受けることを決めたというメールも届いた。

 

彼女のご主人からも電話があった。

 

ほんのあいさつ程度の会話を交わしたが、礼儀正しいしっかりとした方という印象だった。

 

年が明けたらまずは病院に出向くという。

 

軽々しく頑張れとは言えなかったが、

 

応援していると伝えた。

 

親友の美晴からは、下の子がインフルエンザにかかったという報告とともに、

 

“いつまでもご縁のあるハルへ、これからも家族ともどもよろしくね”

 

とメールが届いた。

 

恭子からは何の連絡もないな・・・と思っていたが、

 

実のところ、

 

“男断ちをする”という連絡だけもらっている。

 

おいおいw何があったんだw

 

と思いながらも、恭子らしいな・・・無理はしないでおくれよ・・・

 

と返事をしてある。

 

みんな、それぞれ思い思いの道の上にいる。

 

道しるべもない道の途中だ。

 

わたしもまた、同じく長く短い人生の道の途中だ。

 

今日は部活を終えて家にいた長女がやたら甘えてくる。

 

「ママ、長生きしてよ?」

 

と唐突に言ってくる。

 

「なんで?なんかあった?」

 

と聞くと、

 

「別に何もないんだけど、なんかママって短命そうな気がするじゃん。今日お迎えに来てくれた時、部の何人かもママのことそんな風に言ったから」

 

という。

 

失敬な##

 

「ママは100まで生きるよ!エマの赤ちゃん抱かなくちゃいけないからね!」

 

と話した。

 

エマが不安そうな目をしているので、

 

夕方に15分ほどエマと外を歩いた。

 

自販機で温かい飲み物を買って、それで手を温めながら歩いたが、温かいというより熱すぎてまともに持っていられない缶コーヒーだったw

 

あっち、あっつい、あっついね~!!

 

と言いながらコロコロと笑う長女の横顔がとても綺麗だった。

 

スっと通った鼻に、きゅっと結ばれた唇。

 

笑うと口角が可愛らしく上がる。

 

この子たちのためにも、ずっと元気でいなくちゃな。

 

強くそう思った。

 

まるでミストの様な雨が、眠る草草や冬眠する新芽へと優しく降り注いている。

 

風に吹かれ舞う霧雨は、私と長女の頬もしたたかに濡らした。

 

「寒いね」

 

そう言って首をすくめながらまた、家まで歩いた。

 

今年もちゃんと冬の匂いがする土手道を。