娘二人は私の実家にお泊りをしている。

 

うちにはいない。

 

じじばばの家に泊まることを無条件で喜ぶ娘たち。

 

じじばばは孫を目に入れても痛くない程に可愛がってくれている。

 

その愛はずっと娘たちも感じ取っているのだろう。

 

さて。

 

自宅に戻り、玄関前に立つとセンサーライトがパっと光を灯す。

 

凍える手に力を入れて鍵を開ける。

 

「ただいま~」

 

・・・シ~~~~~~ン・・・

 

ん。

 

そうだよね、誰もいないんだった。

 

夫は夜間点検に行き不在だ。

 

だったら二次会も行けたんじゃw

 

というのは冗談で。

 

同窓会は滞りなく予定通りに進んだ。

 

皆元気そうだった。

 

一人、妊婦さんがいて皆驚いていた。

 

想定外の妊娠だったんだけど嬉しいよと言っていた。

 

そんな彼女を見て誰かがボソっと言った。

 

「うちレスだからそういうことはないやw」

 

と。

 

レス多いなぁ・・・

 

子供産むとそうなってしまうのか・・・。

 

********

 

行きに、

 

待ち合わせ場所で友人を待った。

 

いつもよりもちゃんとお化粧もして、普段履かない靴をはき、髪の毛もいつもなら一つに結い上げているが

 

今日は片側におろしている。

 

「よっ!」

 

肩をポンと叩かれふとそちらを見ると同級生のタツタツだった。

 

相変わらずデカいな・・・ラグビー選手なのかと見間違うほどだ。

 

仕事終わりに来たと言い、スーツのままだ。

 

肩を叩かれた時に首元に不意に触れた質のいいスーツのザラついた感触が、

 

なんだか懐かしく思えた。

 

そんなことはどうでもいい。

 

「太ったね~!でも元気そう、元気だった?」

 

と言うと

 

「おうおう、元気元気。そっちは?」

 

と定型文のようなやりとりを終える頃に女子の友人も落ち合った。

 

3人でタクシーで向かうことにしていた。

 

既に話に花が咲いていた。

 

皆元気そうで何よりだった。

 

近況の報告をする場面になると、私はいつも躊躇う。

 

どこから話せば良いかい?・w・;

 

と。

 

死別して、再婚して、自営業してる。

 

たったこれだけで分かりやすく伝わるのだが、こんな場で死別したとか別に言わなくてもいいことだろうし。

 

「16も年上の旦那と自営業してるよ~」

 

と言うと、もちろん友人らは物凄い勢いで食いついてくる。w

 

「∑(°口°๑) え!マジ!!??」

 

と。

 

「うん。ほんとだよ。まぁそこそこ仲良くやってるよ!」

 

と言うと、

 

「これ今日1ぐらいの話題になるんじゃない?」

 

と言われw

 

「まぁそうね、あのハルがね」

 

とタツタツも言う。

 

“あのハル”ってどのハルだよww


**

 

会場に着いた。

 

タクシーを降りると雲を突くようなビル群から吹き降ろす、氷のような風。

 

目を開けていられないほどの寒気さえ、なぜか五月の夜風のように甘かった。

 

中には誰が来てるだろうかと胸が躍る。

 

中に入ると既にたくさんの人が来ており、私たちに気付いた数人が名前を呼ぶ。

 

「おっ!!ハルだ!ハル~!!おぉ~!」

 

私たちの学年はとにかく皆分け隔てなく仲が良かった。

 

幹事が挨拶を済ませると皆、ランダムに食べ物を取りに行き、ランダムに会話が飛び交う。

 

私は4人の女子にいつの間にか囲まれていた。

 

皆、高校の頃ぶりだ。

 

つまり、24年ぶりに会う。

 

ふっくらした子もいれば、変わらない子もいる。

 

様々だったが、皆、一様にして元気そうである。

 

私はそれに安堵した。まるで、当時の担任が抱くのであろう感情が湧きあがってきた。

 

矢継ぎ早に私に質問が飛んでくる。

 

大皿に盛った食事をまともに口に運ぶ間もないほどに、質問攻めだ。

 

「ハルって今16も年上の旦那さんと会社やってるんでしょ?さっき聞いたよ!」

 

という発言から一気に質問攻めにあっているww

 

何年か前に一度駅で会った時にはトムハンクスみたいな彼氏連れてえらい目立ってたのに、

 

何がどうなってそうなったのかとw

 

「私が聞きたいわ( ˙▿˙ ; )」

 

と言うと酷くウケた。

 

今日は多くの笑いをさらえそうだぞ・・・

 

などと思いながらいろいろな人と会話をした。

 

そして色々な人の会話を聞いた。

 

皆41歳。

 

既に姑の介護に当たっている人。はたまた、夫が不倫中である人。逆に自分自身に愛人が存在している人。

 

様々だ。

 

気が滅入りそうになるほどの色情の入り混じった話も飛び交っていた。

 

幹事が

 

「いろいろな人と会話を楽しんでくださいね。席替えもしてください」

 

と言うと、幹事の言葉をきっかけに、席の移動をし始める。

 

隣の席に本気で誰なのか分からない男性が来た。

 

細面の顔立ちに一重の切れ長の目。

 

中肉中背の体躯。

 

「ハルちゃん、久しぶり!」

 

「あ、久しぶり」

 

配られた名札を見ると“佐々木”と書かれてある。

 

佐々木・・・佐々木・・・・

 

えΣ(‘ω’ノ)ノ あの佐々木?wびっくりした。

 

冴えない陰キャラの佐々木君が、爽やか風を纏っていかにも幸せそうなオーラを醸し出しているではないか。

 

「え、何が起こったの?」←すごい失礼w

 

「それすごい失礼じゃない?w」←確かに。

 

「ごめんごめん、思わず本音が・・・w印象変わったね~。」

 

などと話しているうちに、周囲に男が2~3人集まって来た。

 

仕事の話になった。

 

私も自営業ということもあり、どちらかと言えば今は男性目線での仕事の話がしたかった。

 

仕事の話は思いのほか盛り上がり、

 

熱く語る佐々木は夢と目標を見つけたらしく、アメリカで自分の力を試したいのだと言っていた。

 

「次に会うときには、もう1段階も2段階も上にいてよね。応援するよ」

 

と言っておいた。

 

まだ独身なのだというから驚いた。

 

お手洗いに行こうと廊下に出た瞬間、あまりの静寂に驚いた。

 

分厚い絨毯にヒールの踵が埋まった。

 

ふぅ・・・

 

と一つ大きく息を吐いてトイレに向かおうとした瞬間、

 

「今日は二次会来ないんだって?用事でもあるの?」

 

と、見れば白石君がいる。

 

少し酔っているように見える。

 

彼は私が高校生3年の頃にほんの2~3ヶ月だけ恋人だった人である。

 

「うん。別に用事はないんだけど明日も朝早いしね」

 

と言うと、

 

「ねぇ、もっと上の階に行ってみない?」

 

という。

 

「いや、中で美晴も待ってるし」

 

と言うと、

 

「まぁ無理にとは言わないけど。出来るだけ地上から離れてる方がいいと思って」

 

と言う。

 

「何?」

 

と言うとどうやら綺麗な夜景を見たかったようだ。

 

「ここは22階。」

 

とだけ白石が言った。

 

突き当りの窓の方を見れば、夜景が広がっている。

 

眼下には高速道路の灯が見える。

 

行きかう車のランプがとても綺麗だった。

 

クリスマスのイルミネーションも手伝って、賑やかに華やかに街の景色を彩っていた。

 

空調装置の音だけが虚しく響いている廊下には、会場内の賑やかな会話や笑い声が微かに聞こえていた。

 

「良かったらまた会ったり話したりしない?そっちに迷惑は掛けないし」

 

と言う。

 

これはナンダロウカ・w・;

 

「時間が止まればいいのに」

 

はぁ?

 

何コイツw

 

私も四方八方で飛び交う色情に巻かれてしまったのだろうか?

 

いや、巻かれてなどないw

 

「そういう気ないから。」

 

「いやいや、変なつもりはないよ!」

 

などと話しているところに戻るのが遅くなった私を心配して美晴が来た。

 

神のタイミング!!!

 

「ハル、どしたの?白石君も。もぉ・・・戻ってくるの遅いからトイレで倒れてるのかと思ったよ」

 

と美晴は笑う。

 

美晴は白石を見た瞬間に、私がどんなことを言われていたかを察したようだ。

 

助け船があったおかげで、私はまた賑やかな、様々な色情の飛び交う場内に戻れた。

 

戻れたが、ここは私の居場所ではなさそうだなと、軽く苦笑いをした。

 

美晴も同じことを思ったようだ。

 

友人たちとの会話は楽しかった。

 

一次会は無事に終了し、私は自宅へ帰ると皆に告げて挨拶をした。