最初に結婚したとき、私は25歳だった。

 

周囲の友人らの中でもわりと早いほうだった。

 

何故、死別をしたのか。

 

それは、今は亡き夫が自死したからであった。

 

交際前に、重度の鬱病を患っていたことがあったらしい。夫の遺体が夫の実家に運ばれてきたときに義母から聞いた。

 

教えておいてほしかった。

 

たられば論になるが、もし知っていたなら、あのタイミングで掛けた言葉ももっと違ったものだっただろう。

 

あの時のあなたの発言に対する何気ない話の返答も、もっと気の利いた言葉だっただろう。

 

ずっとそう思っていたが、こんなことを思うのはもうやめた。やめると決めて随分と時が経った。

 

私と交際しているときには、鬱病は治っていたと聞いている。

 

治っていたのだろう。

 

鬱を患っている人という印象は全くなかった。

 

それにしても重度の鬱病を克服するなんて、すごいなと、亡くなった後に思ったが、そうではなかった。

 

鬱病と引き換えに、ギャンブルにハマっていたのだ。

 

興味深い論文があった。

 

鬱病は、何かに依存すると改善するというのだ。逆のケースもあるようだが・・・。

 

まさに夫がそうだったのだろう。

 

見た目も好青年で真面目な夫だったが、私を傷つけたくなくて、自分自身も逃げてしまっていて、

 

言うことが出来なかったのだろう。

 

ひょんなことで前夫の借金は発覚した。

 

借金とは言ってもたかだか70万だ。

 

当時の二人にとっては高額だが、これからの長い人生と70万を頭に浮かべたとき、

 

共に返済していく以外の選択がどこにあろうか。

 

おかえり!と抱き着いたときに洋服のポケットに硬い感触があったので、何の気なしにそれを抜き取ると消費者金融のカードだった。

 

まさかこんな所でお金を借りるようなことをする人とは思いもせず、

 

まず、そういう人だったのか?という部分に驚きを隠せない。

 

冷静に話を聞くと、残業帰りにスロットをしていたという。

 

可哀想に。

 

何も言わさないような妻でごめんなさい。

 

何も言えないようにさせた妻でごめんなさい。

 

当時の夫にしがみついて、私はそう言いながら泣いた。

 

「誰が何といっても悪いのははるじゃない」

 

夫はしきりにそう言った。

 

随分と呑気な嫁をしていた。

 

夫は妻としての在り方を猛省する私を見てもう二度としないと誓った。

 

だが、ギャンブル依存症とは、自分の意志に反して、制御できない部分があるらしい。

 

薬物と同じだ。

 

治療が必要なのである。

 

若かった私はそういうことも知らなかった。

 

結局、前夫はスロットをやめることが出来ず、

 

再び、今度は別の消費者金融で10万を借りていた。

 

合計で80万。

 

たった80万で死を選んだのだ。

 

私が前夫に対してこの上なく怒りの感情があるとすれば、

 

あなたの命はたった80万なのか?という点だけである。