20代の頃に恋人と旅行した先のフランスにて。
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いかにも!
というようなまるでお伽噺にでも出て来そうなほどのおしゃれなフランスのカフェ。
ときどき、フランスのカフェとして描かれている油絵そのもののような。
あのころのシャンゼリゼ通りはスリこそ多かったが、テロの心配などは全くしていない時代だった。
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彼がお手洗いに立っている間に、斜め前の席に5~6才の男の子を連れた女性、フランス人(であろう)が座った。
男の子は手に風船を持っている。
顔からおぼれ落ちそうなほどの大きな瞳。なんて可愛いんだろう。
ママが男の子の耳元で何かコソコソっと耳打ちしている。
すると男の子が私のほうへ向かって歩いて来る。
「マドモアゼル」だけは聞き取れたが他は分からなかった。
が、自分が持っていた風船を私に差し出してきた。
なんと風船を私にくれると言うのだ。
チラっとお母様の方を見るとニッコリと私に微笑みかけてくれた。
男の子が戻って行こうとするので、咄嗟に
「Merci beaucoup」
と言って赤い風船を手にした。
男の子はママの元に戻り、ママとハイタッチをして、ママは「よく出来たね」と言わんばかりに男の子の頭を撫でていた。
フランス男児の女性の扱いというのは、
こんな幼少期から始まっているのか・・・
と感心したのを覚えている。
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「その風船どうしたの?」
お手洗いから戻って来た彼が言うので
「見知らぬ男の子にもらっちゃった」
と言うと、驚いている。
「あの子よ」
と、5~6才の男の方を見て目配せをすると、彼は笑った。
「可愛いな。」
と。
サンジェルマンのそのカフェで、彼とクリームブリュレを食べた。
それからパリのダニエルパリに宿泊した。
どこかアジアのテイストが織り交ぜられたインテリアに、壁紙のなんとおしゃれなこと。
サービスも申し分ないほどのものだった。