20代前半の頃に、独身だと言って言い寄って来た男性がいた。

 

私はその男性のことを好きになり、付き合った。

 

何度も違う男性と恋に落ちておきながら何を言っているのかと、皆そう思うかもしれない。

 

だが私はその都度、命さえ惜しくないと思うほどの本気の恋をしていたし、

 

相手を愛していた。

 

付き合って1ヶ月が経った頃に相手がこんなことを言って来た。

 

「ハルちゃん。ハルちゃんは今までの女とは違う。もう付き合いきれん。」

 

「どういうことですか」

 

「ごめん」

 

「え、待って、どういうことですか」

 

「今までの女と違うんよ」

 

「・・・・・。なに・・・もう・・・」

 

彼の顔を見上げると惜しげもなく涙をボロボロと流している。

 

何があったのか?

 

「どうしたんですか。」

 

「俺、結婚しとんよ。子供も一人おる。今から嫁に離婚するように言いに行ってくる。待っとって。ここで待っとって」

 

「え。」

 

「すぐ戻るけん」

 

「なんで今なの?え・・・無理です。わたし、気付きませんでした。ごめんなさい。」

 

彼は狂ったように自宅に戻ろうとしている。

 

私は全身全霊で彼が車に乗り込むのを止めた。

 

「ここに愛がいっぱいあるけどもう無理です。翳りのない場所で堂々といきたいんです。そういう生き方がしたいんです」

 

そう言いながら自分の胸に手を当てて彼に言った。

 

大の大人がこんなにも泣くのかというほどに、彼はボロッボロ泣いていた。

 

彼がくしゃくしゃな顔をして泣いてくれたおかげで、

 

私の気持ちもスーーーっと引いていくのを感じた。(苦笑・・・w


かなり冷静になれた。


 

「ごめんなさい。」

 

 

 

 

いい勉強になった。

 

ほんとはぎゃふんぐらい言わせたかった。

 

私が心に受けたのと同じくらい痛い思いをしてから別れてやればよかった。

 

そんなことも思った。

 

 

でも、ほんのいっときでも私は彼のことを愛していた。

 

それからは、

 

彼のついた嘘がバレないように、少しの間、職場の人間に嘘をついたりもした。

 

 

 

連絡先も消した。

 

1ヶ月もしないうちに、彼から現金書留が届いた。

 

多額の現金が入っていた。

 

銀行勤めをしていて大金は見慣れていたが、いざ自分の住所に大金が送られて来られると

 

こんなにも驚くものなのかというほどに、驚いた。

 

もちろんいただけないお金なので、一筆を加えて相手先に送り返した。

 

 

現金と一緒に一枚のレポート用紙が無造作に折りたたまれて入っていた。

 

「僕は今までやましい嘘しかついたことがなかったけど、誰かを守るための嘘をつくハルちゃんを見て

 

心を入れ替えようと思いました。これは僕と妻からの謝罪の気持ちです。今まで大変申し訳ありませんでした」

 

と書かれてあった。

 

 

 

 

 

 

何を今さら。

 

私はただ私が生きたいように生きるただそれだけのこと。

 

脛の傷を隠しながら生きるのは嫌。

 

脛に傷があっても、その傷を堂々と晒しながら生きていきたい。

 

これからもきっとずっとそういう生き方をしていく。

 

いつも真正面から向かっていくから

 

全身ズタボロである。

 

でも不思議と

 

傷は癒えてくる。

 

 

 

 

ヒロシと結婚した今も、

 

まるで落ち武者の如く矢を浴びてボロボロだろうw

 

それが不思議と、どうってことなくなっていく。

 

人はこれを「麻痺」と呼んだり「成長」と呼んだりするのである。