大辻隆弘氏の歌集『水廊』(1989年刊)より。


春、三鷹下連雀のまどひかな 我(あ)をみちびきし繊(ほそ)き雨傘 大辻隆弘



結句〈繊き雨傘〉は頼り無さげな感じがよく伝わってくる措辞。〈まどひ〉は地理感のない土地で道に迷ってしまった戸惑いのことだろうか。〈春、三鷹下連雀の〉からはなんとなく下連雀周辺に暮らした太宰治のことが思い浮かぶがどうなのだろう。太宰治ファンの作中主体が春の雨そぼ降る三鷹下連雀を訪ねたところ道に迷ってしまった光景と、とりあえず読んでみる。