町へのただ一つの入り口の検問所脇の側溝に夏のある晩、薄汚れた犬が死んでいたことがあった。事実は大きめのぶかぶかな毛糸靴下を履いて就寝中のメゲネル検問所長のもとにすぐに伝えられたが、酒精で脂ぎった不夜城のごときお歴々の集う町の裁判所は案の定その犬が町に入ろうとしていたのか町から出ようとしていたのかを朝までおいてはおかれぬ大問題とし、検問所長に事実を直ちに判事の前で詳細に説明せよと出頭命令を下したので、犬の第一発見者たる検問所三等係官オータサブローはその夜のうちに寝室兼書斎代わりの家の物置から検問所に呼び出され、検問所の木製扉に自転車を立て掛けた。