まず、松竹氏の行った、出版したり、会見を開いて対外的に大々的にやる方法は良くなかったと思います。手順としては離党してからすべきだったでしょう。

 

ただ、除名という処分には納得がいきません。理由としては大きく2つあります。

 

まず、除名という最高の処分の理由をとった説明が十分でないことです。
過去の規約の運用例を見れば、強制わいせつや、数年間パワハラをした人でも除名どころか除籍にもなっていません。処分の基準はどうなっているのでしょうか。
 

そもそもとして、規約11条と49条が不明瞭な規定です。49条だと規律違反としての除籍はありませんが、11条だと規律違反で除籍があるように読めます。


11条の過去の運用事例としては、党外の出版物で、党を批判したり、北朝鮮問題で党とは異なる見解を公表した元平壌特派員の萩原さんの件がありますが、除名処分にはなっていません。

萩原遼氏を除籍 (jcp.or.jp)

除名と除籍はどのような差異があるのか疑問です。
また、なぜ今回、資格の停止という措置もあり得たところ、いきなり除名という最高の処分をとったのでしょうか?松竹氏のこれまでの著作やブログに対して警告は一切なかったのでしょうか。それについて触れられていないのが、問題を大きくしているひとつの要因と考えています。

2つめに、分派の定義が不明瞭である点です。
私は規約上、分派の定義が非常に曖昧であるとの問題を以前から感じていました。
「分派、派閥」について、何が該当するのかは例示列挙すらされていない認識です。

禁止規範にも関わらず、その対象が何かが示されていないのは、上級機関による恣意的な運用が可能との疑念を生みます

草加市議団の件で党員14名が連名で再調査請求を出したところ、「特定の見解を持った人たちが支部の範囲を超えて連名で意見書や質問書を作ることは、分派につながるものとして認めていません」との文書回答が返されました。
もっと前だと思いますが、かつての党合宿では連絡先を交換することもNGだったと聞いています(意味がわかりません)。
一方で、支部や地域を超えて一緒に党機関へ意見等をおこなった結果、意見が認められたという事例も存在すると聞いています。

なぜ今回、鈴木氏に本の出版を急ぐことを働きかけたことが分派にあたるのでしょうか。松竹氏と鈴木氏は内容的には一切相談をしていないとのことです。分派というのは「恒常的なつながり」という語感がありますが、喫茶店で1時間ばかり話した程度で認められるものなのでしょうか。

また、『党攻撃とかく乱の宣言』についてですが、除名処分を「不服」として党大会に「再審査」を求めるとし、それを実行するために、党内に自らの同調者をつのることを宣言していることについて、「党内に松竹氏に同調する分派をつくるという攻撃とかく乱」などと書かれています。
松竹氏の主張に同調するか否かと、除名処分撤回を求めるか否かは別の問題です。除名撤回を求める党員は松竹氏に同調する分派と認定されるのでしょうか。「党内に自らの同調者をつのると言い放つ」と決めつけるのでは、党内での除名撤回を求める声を委縮させかねません。
少なくとも、白紙委任同然の解釈権を上級機関が握っている現状は党内議論の委縮を招き、よろしくないものと考えています。来年の党大会での規約の見直しを求めます。


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仮に今回、除名処分が正しいとしても、今回、言葉選びが最悪です。

党幹部のTwitterや声明で、しきりに「攻撃」という言葉が用いられています。
この意味としては、「党の根幹に関わるところに対する異論を党外で、しかも出版とか会見を開いて大々的に行ったことが問題」と言いたいのだと私は理解しています。繰り返しますが「党外で」というところが重要です

しかし、「攻撃」などという、一人歩きしやすい強烈な一言でもって表現しています。切り取られて解釈される隙を自らつくっていて、少しでも理解を得ようという発想が感じられません。「やっぱり共産党って怖い」というセルフネガキャンとしてしか作用していないのが現状です。

松竹氏は、党内での透明性の高い対話を実現する一環として党首公選を求めました。私は党首公選にどちらかといえば否定的ですが、本に記された問題意識の諸点を、はなから全否定で受け止める読者は少数だと思っています。非党員の有権者ならなおさらでしょう。そうした内外の声に、「党外から訴える手段はおかしいが、提起の内容は議論の対象として否定しない」という姿勢を示すべきだったと思います。

 

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最後に補足として書きますが、埼玉の東部南地区委員会は草加市議団の問題の際、「党規約は、会議の場以外の意見は認めていない」と述べています。
共産党は元草加市委員長への障がい者差別を謝罪すべき - 草加市議・佐藤のりかず公式ブログ (goo.ne.jp)
今回私は中央委員会に対して意見と質問のメールを送ったのですが、この解釈によれば、そのメールも規約違反ということになり、5条の解釈としてあり得ないものです。

やはり、規約の運用が不明瞭、恣意的という疑念が生じるので、東部南地区委員会には中央委員会としてはどのような指導をされたのか?という点についても問い合わせを行いました。