未経験新卒エンジニアを隣で半年見てきて、新人エンジニアの指導方針と、コミュニケーションの大切さについて思うところがあったので、今回はこの話を書こうと思います。

 

昨年7月、私の職場に新卒の方が1人配属されてきました。その方は完全に未経験で、なんとコピー、貼り付けという基本的なショートカットキーさえ覚束ないというレベルでした。

 

その新人の方には、新卒入社3年目の方が教育担当としてつくことになりました。具体的には日常の業務に対するフォロー・助言をし、月間単位での成長計画をいっしょに考える役割です。

 

新卒の方には、とあるバイナリファイル作成ツールの設計と製造、単体試験がタスクとして任されることになりました。私としては、率直に言って、未経験新卒入社の人にとっては難易度が高いタスクであると感じました。

 

私自身が苦労しまくったからこそ、未経験入社での1年目というのは非常に大変だと思っています。未経験の人のわからないという気持ちはめちゃくちゃわかるつもりです。

 

で、ここからが問題なのですが、教育担当の方のサポート・教育方針は、「先回りして教えることはせず、徹底的に悩んでもらう。自分で考えてもらう」というものでした。

 

「あれこれ口出しはしない方針で進めたいと思っています。シディアス卿さんもあまり教えすぎないようにして頂きたく、ご協力をお願いしたいです。」ということで私も頼まれました。質問が来たときにだけ応える形にしてほしいと。そしてその時にダイレクトな解を教えないということです。

 

当然、スケジュール遅延も目に見えているのですが、遅延すること前提で、敢えて全投げしてみるということなんですね。ホウレンソウをしっかりさせるという狙いです。

 

その教育担当の方の、成長してほしいという思いはすごくわかります。

しかし、それを差し引いても、私はその指導方針には賛成できませんでした。

 

なぜかというと、新卒未経験ではわからないことだらけだからです。2つあるかなと思いました。

 

まず、知識や技術がないために、何がわからないかがわからないのです。

新卒の方は私の隣の席だったのですが、何を悩んでいるのかだいたい察しはつきました。

 

新卒に限らない一般論として、わからないことが同時に3つくらいまでの絡み具合であれば、分解して対応できると思うのですが、4つ以上になってくると、なかなか分解が難しくなってくると思います。器用な人や優秀な人は苦も無くできるでしょうけど、多くの人はそんなにたくさんのことをさばけないと思います。

 

ふたつ目に、仕事の進め方の型ができていません。質問の仕方、報告の仕方、進捗管理の仕方をどうするのか、という点でも頭を悩ませることになります。何をどう言えばいいのか、どうタスクを進めればいいか、というのは絶対的な解が難しいからこそ、永遠のテーマだと思いますね。

 

この2つをすべて本人に任せてみる、というのは、無茶ぶりではないか、と私は強く感じました。

 

自分の頭で考えて、自走できるようになってほしいという狙いはよくわかるのですが、考えることが多くなりすぎて、処理できるキャパ範囲を超えることにならないか?というのが私の心配な点でした。

 

私であれば、いきなりすべて委ねるのではなく、もう少し段階的な方法をとったと思います。少なくとも技術的なことに関しては、最初は先に答えを教えてしまう方が成長速度は速いと考えており、時が経過するに連れて少しずつ自走できるように調整していくスタイルをとりたいです。この考えは今でも変わりません。申し訳ないのですが、教育担当の方の技術レベルが高く、質問されたときにわかりやすい回答を返せていればまあまだ良かったのですが、そうではなかったことも引っかかった一因です。技術的な質問に対して不明瞭な回答をすることで、理解をこんがらがせていると感じる局面が何度もありました。

 

ということで、内心、特に技術面について口出ししたい気持ちはあったのですが、基本的には質問されたときにのみ、セーブ気味に答えるようにしていました。まあ、さすがにこれは口出しした方がいいだろうと感じたときは線を超えるようにしましたけどね。

 

まあ暫くは予想通り、技術面でかなり戸惑っている様子でしたし、進捗でも案の定遅れが発生し、「どのような対応をした方が良かったと思う?」という指導をされることになりました(そんな問い詰める感じではないのでそこは大丈夫です)。

 

しかし数か月経過し、私の懸念は全体としては杞憂になったようです。

その新卒の方は、わからないことがありながらも、概ね積極的に質問されていましたし、仕事の進め方についても先輩に細かく指摘を受けつつ、それをうまく吸収してきたと思います。

 

隣の席で、明らかに成長しているのを実感し、それは少し予想外でした。私の1年目には、こんなふうにはできなかった、と思います。

 

当時の私と何が違ったのか?を考えると、それは明らかで、「質問をしたかどうか?」です。

 

ITエンジニアの業務では、わからない問題の発生は日常茶飯事です。その時に、私のように、質問することを躊躇ってしまう人がいます。私の場合は、本当は質問したいのだけど、近くの席でキーボードをずっとカタカタしている様子を見ると、作業を邪魔してしまうかなと思い、質問せずに自分でなんとかしよう、というパターンが多かったです。完全に悪い意味で人を気遣って損をしていました。悪気がないからこそ余計にたちが悪いですね。考え方が根本的に間違っていました。当然、そういう状況であることも共有できておらず、進捗も最悪で、辛酸を舐めました。

 

質問を躊躇うというのは、他の記事でも書いていますが、性格の面が強く表れるところですが、今回の新卒の方は、そこのコミュニケーション力が高かった、ということだと思います(それプラス、自分にとって足りない材料は何かを特定する力もあったかもしれません。)

 

エンジニアの技量をはかるとき、技術力や知識があるかどうかというのは最重要の要素ではありません。わからないことがあるときに、周りと適切にコミュニケーションをとって対応していける力の方が重要なのです。知識は勉強すれば身につくものであり、技術力は高くなくてもコミュニケーションをうまく取れればなんとかなる場合が多いです。

 

新卒で「できる人」というのは、このコミュニケーションを円滑に進めていける人か、もしくは入社前から高い技術力を持っていて自己解決力が高い人、のどちらかでしょう。

 

この新卒の方の話を聞いてみたところ、就活の面接で「たくさん質問しても大丈夫ですか?」と質問していたそうです。いやあ、凄いなと思いました。まあ、私のレベルが低いのだとは思いますが。

 

ということでまとめると、指導方針としては、それでも私は段階的に進めていきたいし、技術については先回りの方が良いとの考えは変わりません。

 

と同時に、コミュニケーションの大切さを改めて実感したということになります。