ウォーズでゴキゲン中飛車に対して指されるのは超速二枚銀が最も多く、次いで一直線穴熊が多い印象である。超速二枚銀は積極的に攻めることができること、一直線穴熊は堅さ重視の構えとして人気を二分している。

 

一直線穴熊に対しては、私は初期の頃は相穴熊にしていたが、今は鈴木九段著『中飛車の基本』に影響を受け、美濃囲いから△45歩と四間にスイッチする指し方を採ることが殆ど。

 

他には今泉健司著『今泉の勝てる中飛車』で紹介されている、78銀~75歩~56飛~86飛の軽快な指し方もある(参考図)が、これはまだ一度も試したことがない。

 

(参考図)

 

しかし、△45歩型一本槍なのにポイントをしっかり押さえられているわけでもなく、本譜は大作戦負けをしたので、いい機会として振り返る。

 

(1図)

 

まずは1図まで、美濃~△45歩の方針と決まっていれば振り飛車側はあまり変化の余地がないところ。

 

28手目△45歩に対し、先手は▲26飛と浮いてきた。これには△44角、▲36飛、△32飛と、△42飛の途中下車をせずに済むため、先手が損をしている。△45歩~△42飛の形をつくられて初めて浮くのが良い思う。

 

▲26飛以下、△44角、▲36飛、△32飛、▲59銀と進んだ(2図)。

 

(2図)

 

結論としては、ここで△35歩、▲26飛、△36歩と仕掛けるのが良かった。

 

以下、▲同飛、△同飛、▲同歩、△27飛、▲43飛、△42金、▲23飛成、△33桂、▲21竜、△25桂(3図)は当然後手よし。

 

(3図)

 

したがって△36歩に対しては▲27飛と引く一手だが、△34飛、▲68銀、△33桂(4図)としておけば、後手の態勢が良い。

 

(4図)

 

本譜は、2図以下、△52金左、▲68銀、△64歩(疑問手)と進めた。金銀が連結し、この交換は居飛車がかなり得をしている。(5図)

 

私は仕掛けのタイミング伺って様子を見る(攻めより自陣に手を入れる)傾向が強いのだが、それで機を逸してしまうことがよくある。

 

(5図)

 

ここで▲56歩がこの戦型における居飛車の常套手段。この手は当然警戒しており、次に△54銀とあがる予定だったので、嫌なタイミングで来たなというところ。ここでもやはり△35歩から△36歩と攻めるのが良いが、先ほどより先手の条件はよくなっている。

 

△54銀は▲26飛と軽く受けてきた場合には価値が低く、不要であるように思われる。先手に陣形整備の暇を与えて▲56歩、△同歩、▲同飛、△55歩、▲26飛とされると、先手だけ一歩を手にできる。当たりが強くなっているので逆にマイナスかもしれない。

 

△54銀の価値が高いのは、例えば▲36歩~▲37銀~▲48飛としてきた時に45の位を支える場合である。

 

本譜は5図で△35歩、▲26飛に、△54銀と指し、これが悪手。僅か40手目で悪手とは話にならない。▲55歩、△同角、▲56飛と角を質駒にされると、次の▲55飛、△同銀、▲65歩がきつい。主張点をあっさりと失うことになってしまった。

 

(もっとも▲55歩には、遅ればせながらそこでも△36歩とすれば、悪いながらまだマシだった。)

 

【まとめ】

・一直線穴熊からの飛車浮きに対しては、陣形差が大きいと見たら、恐れず仕掛けるのが良い。

 

△54銀は▲26飛と軽く受けてきた場合には価値が低く、不要であるように思われる。先手に陣形整備の暇を与えて▲56歩、△同歩、▲同飛、△55歩、▲26飛とされると、先手だけ一歩を手にできて得になっていない。