昔から非常に多く指されている図の局面(▲65歩が最終手)。

居飛車党、四間党であればほぼ全員、一度は指したことがあると思う。

 

 

10分切れ負けであれば、四間党ならここまでの消費時間は90秒以内であることが望ましい。

が、ここからの分岐は棋書によってまちまちであり、しっかり押さえている人となるといきなり減少するはず。私自身もその一人なので、ここで改めて変化を整理したい。

 

ここでの後手の選択肢は概ね次の4つ。

①△73桂

②△54歩

③△77歩成

④△67歩

 

この記事では、①△73桂の変化を掘り下げる。

 

①△73桂は、△65飛を見ており、私が四間をもって指されたことが最も多い印象である。

 

以下、▲45歩と攻める。

 

 

△同歩なら、▲44歩、△53金、▲62飛成、△46歩、▲同金、△65飛、▲同竜、△同桂、▲45桂となり、これは先手やや優勢(600点)。堅い穴熊と言えども▲44歩が先手で入る展開は避けるべきである。

 

 

したがって、△45同歩に替えて△54歩と応接する。以下、▲44銀、△同金、▲同歩。

 

 

『鈴木大介の将棋 四間飛車編』では、次に▲25桂や▲53歩が厳しく、先手優勢としてここで打ち切られているが、そのようなことはなく、互角であり難解な勝負である。

 

ここで△46歩4筋の歩が切れるとこの叩きが発生することを常に意識すべきである。

 

先手は金を引くようだと、△47銀と露骨に打ち込まれ、金を入手してからの△56金を狙われる。そのため▲46同金だが、空いたところに△48歩。▲同金では、△65飛から飛車交換になった後、△69飛が激痛になるため、▲39金とかわす一択となる。

 

 

以下、△65飛、▲同飛、△同桂、▲61飛、△69飛、▲75角。

 

 

ここで、①△89飛成には、▲43金もしくは▲65飛成が有力。

▲43金の狙いを消される意味で、②△44角の方が心理的には嫌である。攻めの方針がパッとはわかりづらく、振り飛車の方が間違えやすい局面になっている印象を受けるが、▲43歩と叩く。

 

 

△同銀が自然だが、そこで▲45金!!が水匠推奨の手で、ただでさえ心もとない自陣がさらに薄くなるので驚き。

 

以下、人間としては△88角成と指して、馬を自陣に利かせようとする応手が多いはずであるが、▲44歩、△同銀に、▲54金とすりこむことで、後手の馬の守備力を半減させつつ、43の地点を狙うのがなるほどの発想。

 

 

桂頭が薄くなるのでなかなか心理的に選びづらいが、△35歩には▲43金打でスピード勝ちが望める。△42銀にはもちろん▲43歩だ。リスクを恐れて無難な手ばかり指していては勝利は掴めない。常にギリギリの戦いとなることを意識したい。

 

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【補足】

△73桂に対し、▲45歩に替えて▲25桂、△24角、▲44銀、△同金、▲同角はどうか?

結論から言うと、▲45歩には劣る。

 

以下、△48歩、▲39金に、△58銀と絡まれる。

 

 

ここで応手は

▲48金引、▲48金上、▲15金などあり複雑だが、先手-300点ほどと居飛車の方が指しやすい。

 

蛇足だが、私はこの局面に限らず、▲25桂を心理的についやってしまいがちな傾向にある。

しかし、△24角とあがられると、46の地点に利いてくる分、先手玉の安全度は基本的に低下する。

 

33のダイアゴナルの場合、角を成られて△33馬と引き付けられることもある。しかしそれよりも24のダイアゴナルから攻められるケースの方が経験的に出現頻度は高く、かつ厳しいので警戒すべきだ。

 

今回は以上である。次回は△54歩の変化を検討する。