the wings of the dove : DVD 051714 | **コティの在庫部屋**

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許したっつーか、勧めた。

   



「鳩の翼」
The Wings of the Dove

原作は、すっかりお気に入り作家となったヘンリー・ジェイムズの長編小説。長さのため未読だがw
特典映像で研究家が言っているように「フロイト並みの洞察力」を持ったジェイムズの腕が冴え渡り、
二流作家なら間違いなくお涙頂戴節になるところが、ビシッとバシッと締まった作品になっている。
本日ややネタばれで行きますが、どうかご容赦下さいまし。

アメリカという未熟だが良心を持つものの象徴となったミリーではなく、因習的な悪意に苛まれつつも
自らその悪意の渦中に落ちずには居られなかった、恐らくイギリスを象徴するケイトを主人公に据え、
彼女を最後まで描き切った事こそ、この作品を稀有にしているのではないかと思う。
ジェイムズってこの構図他でも使ってるけど、人物描写が素晴らしいのでまたかよって感じがしない。

ヘレナボナム史上これ以上ないほどの美しさ。オスカーノミニーの演技力。
これはまさに、ヘレナボナムのための映画といってもいい程天晴に決まった作品でもある。
小柄だが迫力があり、芝居に幅もある。私はこの映画が世に出た90年代後期彼女が大好きだった。


これ、今回のキャスト写真。ほら、可愛いでしょう?右の女性。小悪魔っぽくて素敵。
アリスを演じる事さえ出来た筈の彼女が、後に、ハートの女王を演じる事になろうとは。
ああ運命って皮肉w

強いブルーと黒のドレスは、ケイトの人生をも表していよう。どこまでも澄んではいるが、それは暗い。
強く澄み切った気持ちで恋人を愛してはいるが、金に翻弄される人生に彼女は辟易している。
拝金主義に飲み込まれているこの時代、ケイトだけがもがいても決して突破口などないのだ。

金なんかなくても愛があればなんて生っちょろい事を言っている場合ではない。生きて行くためには。
金がないがために父が堕落し、そのために母を亡くし、そのために叔母の配下に置かれたケイトには
その事が嫌という程解っている。

美しく純粋なアメリカ生まれのお嬢様、ミリーと近づきになった時には、ケイトもまだ純粋だ。
羨ましかったり妬んだりする気持ちもないことはなかったろうが、憎むには余りにもミリーは素直過ぎた。
だからこそ恐らくケイトも魅かれた。無論ミリーも頭のいいケイトに魅力を感じる。
一見何のわだかまりもなさそうな二人の友情に、悲しいかな、ケイトの恋人マートンが絡んで来る。

んで、ここでミリーが病に冒されていると来れば、昨今の涙腺刺激系邦画に慣れ切った人であれば、
さあここでハンカチを用意しましょうと言わんばかりに興奮を覚えるのだろうが(おかしな話だが)、
冒頭に申し上げたように、ヘンリー・ジェイムズともあろうものがそんな安っぽいもの書く訳がない。

ミリーが自分の恋人マートンに恋をしていると知ったケイトは恐らく同情と友情から2人を近付かせる。
が、2人が本当の恋人同士のように睦まじくしている姿を見て、ケイトは瞬時に「黒ケイト」に変わる。
愛する男を取られたくない気持ちと、ミリーを利用するという計画が、恋人達の運命を狂わせる。
これはねえ、見ないと解んないというか、見てから驚いて、存分に唸って欲しいところ。

嘘=lieという単語が随所に出て来る。
ミリーとマートンの姿を見たケイトが嫉妬に駆られ、その後一晩マートンと過ごし、翌朝のシーン。
それまでマートンとの関係を隠し通してきたケイトの気持ちに気付いたミリー、「嘘はつかないで。」
Don't lie to me.という、何の変哲もない文章なのだが、lieには「寝る」の意味もあるのであり、
そうなると「彼と寝ないで」というメッセージにも繋がる事になる。ここでケイトがI don't lie.と言えば
「寝てないわ」と返事をしたとも取れるのであり、この辺が英語の絶妙なダブルミーニングなところ。
昔、ダンの論文を書いていた頃、こんな事ばっかしやっていたのでつい思い出してやってしまったw

人生が余りに辛過ぎたため金に目の眩んだケイトだったが、恋人を奪われる事を不安に思い、
仮にそうなっても自業自得だという事も忘れ、瀕死のミリーに対し辛辣な仕打ちを仕掛ける。
それでもミリーはマートンに言う。「愛しているの。あなた達2人を」これで落ちない男はいまい。

ミリーが亡くなり、ケイトと交わりながらマートンは言う。
僕らが一緒になる事が彼女の望みだ。金なんかなくても、僕といてくれ。
あの時の、騎○位になったケイトの複雑極まりない顔!役者魂炸裂。

しかし女ってのはこういう時弱いもんで、嫌だとは言わないんだよね。ある意味ケイトは腹を括るんだ。
ところがベッドでの凪の時、マートンは「ミリーを愛した事などないよ」と言っておきながら、ケイトに
「彼女が生きている時も?」と問われると、返事しないでやんの。
男って狡いよなあ。
自分だけいいカッコしいかよ。

お前だってあの計画の、片棒担いだようなもんなんだぜ。確かにケイトのが罪は重いにせよ。
でも、ミリーを傷つけたのは同じでしょうに、あんたもケイトも。

ミリーがマートンに、You're a beautiful liar.(優しい嘘つきさんね)という場面があるのだが、
私は、実は一番罪深いのはマートンじゃないかと思っている。結局二人の女を泣かせたんだから。
なんつー見方は偏っているんでしょうかねw

いやあ、言うまでもなく傑作でした。イアン・ソフトリー監督は、これを撮っただけでも価値あるよ。
ケイトの叔母にシャーロット・ランプリング様、堕落父にマイケル・ガンボン氏と脇もめっちゃ豪華。
クラシカルな音楽もいいし、何より衣装がどれも素敵。一見の価値ありですよ、奥さん。

一石二鳥だと思ったの。
あなたも私も幸せになれる。
あなたを踏み台にして。

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