*2011年3月13日アメンバー記事として初出、同27日全体公開。
「パリ20区 僕たちのクラス」
Entre Les Murs
非常に感想の書きにくい映画だ(;´▽`A``
いや、素晴らしい映画である事は間違いないのだけど。
どの立場で見るかによって、この映画の感想は変わって来るだろうと思う。
記事を書くにあたって、やぱし中立を保つべきかと考えたのだけれど、
それではごく一般的な感想と何も変わらず、私が書く意味がないような気がするのでやめた。
まずこの映画、職員の雰囲気が実にいい。
本音をぶつけ合っても決していがみ合ったり根に持ったりすることはなく、仲間でいられるのが素晴らしい。
きっと、自分達の本当の目的が、個人攻撃ではなく、教育にあるんだって事にブレがないからなんだろう。
だからこそ、新任1年目の教師のキレっぷりを大きく包んだり、
強制送還されそうになる生徒の親のためにみんなで募金を集めようとしたりできるんだ。
公平な態度を崩さずに、あらためる部分を指摘しつつも担任を庇おうとする校長も凄い。
この学校がどれ程教師にとってストレスフルな場所かが、十二分に解っているからなんだろう。
正直言うと、この映画を「素晴らしい」とか「凄い」とか言うのが当たっているのかどうかが解らない。
いや、映画として見ればこの上なく素晴らしいのだけど、この現状を見てただ素晴らしいとだけ賛辞を送って
それで済むのかどうか。
これは、作りものでない、まさに今起こっている教育現場の問題をまるのまま映し込んだ作品。
日本だって例外じゃない。映画に出てくる生徒の態度はまさに現実のコピー。
え?あんなに移民もいないし、言葉に苦労する父兄もいないだろうって?
そりゃ10年前まではね。でも今は違う。
それが高校でさえ違うんだもの、この映画の題材となった中学だったら尚更よ。
だからこの映画を、素晴らしいから見るという視点じゃなくて、もっと別のところから眺めてみて欲しいと思う。
よく、先生になるならこの本を、とか、先生が希望ならこの映画を、とか書いてあるマニュアルがあるけど、
悉くそういうものに反発を覚えてきた。
多分そんなレジスタントな人間だからこそ、人に「面白いヤツ」だと思って貰えてきたんだろう。
その、悉く反発した私が勧める映画はたった2作。
ひとつは「いまを生きる」。
あちこちで絶賛されている作品だけれど、こちとら甘っちょろい視点で言っているのではない。
この映画は、
生徒にとって理想的な教師は時に生徒の犠牲にならなければならない時がある事をきちんと教えてくれる。
ここで犠牲になるという事は、つまりは職を追われるという事。
今の時代、最も理想的な教師は教師にはなれない、という矛盾した真理をざっくりと突いている。
もう一つは言わずもがな、今回のパリ20区。
教師は理想的になんかならなくていい。もっと醜く、もっと人間臭くていいんだとこちらの背中を押してくる。
映画の主人公・フランソワ先生のやり方がすべて正しいとは決して思えないのだが、
それこそが本来の人間のあるべき姿だろうと思う。
汚くて、時に身を庇い、時に悪態をつき、そうしてまた明日はやって来る。
いまを生きるのキャプテンが20世紀の教師の姿なら、フランソワ先生はまさに、21世紀の教師の姿だ。
常勤の友人たちは、真面目な人ほど、「いつも辞めたいと思ってる」と話す。
だけど、それでも、私達は今日も教室に向かう。
それは果たして情熱なのか、惰性なのか。
私達にも解らないままだ。

