Theater, 2008: le scaphandre et le papillon | **コティの在庫部屋**

**コティの在庫部屋**

映画+音楽+本+雑貨+ご飯+お酒+「おべんきう」=私。


**コティの在庫帳**


「潜水服は蝶の夢を見る」

le Scaphandre et le Papillon


イケメンで、チョイ悪で、時代を身に纏った様な一流雑誌の編集長だった男が
突然重度の脳梗塞で倒れ、後遺症で全身麻痺になってしまう。
ロックト・イン・シンドロームと言い、頭はくっきりしているのに、身体が動かない。
動くのは唯一、左目の瞼だけ。
こんな残酷な事があるのか。

絶望の底でシニカルになりつつも、美人の言語療法士の編み出した方法で、
彼はアルファベットを左目の瞬きで伝える方法に次第に慣れ、
元々文筆家でもあった彼は、20万回の瞬きによって、1冊の本を書き上げる。

って書くと凄い美談に聞こえるかも知れないけど、この映画、そんなんじゃないよ。
もっと泥臭くて、もっと人間臭くて、気持ちが抉られるシーンが幾つもあった。

彼は、身体は1ミリも動かないんだけど、心は全く普通な訳です。
だから、彼の視線となるカメラワークの行き先は、オンナの太腿だったり胸元だったり。
メチャクチャそれが、リアル。笑える程。
こうなる前はブイブイいわしてた雑誌ELLEの編集長ですから、泣かした女は数知れず。
美人の言語療法士を見て、ああ、どうして俺は今こんななんだろうと思う。
呆れる程、ドコまでも男。

それから、詳しく書かないけど、男としてこいつ、どうしようもないなと思わせる場面もある。
もちろん、こういう身体になってからの出来事。これは笑えない。女なら。
でも、それが逆にリアル。
身障者って言葉は、そこにはない。ただの、女泣かせの、普通の男。
どうしようもないのに、愛すべき男。

さすがだよ、監督ジュリアン・シュナーベル。
伊達にゴールデン・グローブ賞監督賞取ってないね、この映画。
オスカーは逃したんだけど、これは賞に値する作品だと思うよ。
この人の撮った「バスキア」は、Toroが出てるからDVDが擦り切れる位見たんだけど、
この作品も凄く良かった。
実在の人物描くのがウマいね、ホント。

主人公ジャン・ドミニク・ボビー(ジャン・ドゥー)を演じたマチュー・アマルリックは
「ミュンヘン」にも出ていたフランス人俳優。実はこういう顔、私、好みなんだよね^^;
爬虫類系の、口がちょっと大きいタイプ。
内縁の妻役のエマニュエル・セニエも素晴らしかった。難しい役どころだった思う。
また、シュナーベル監督の特徴である、音楽の素晴らしさ。
今回は、U2、ベルベット・アンダーグラウンドなどと一緒に勿論トム・ウェイツも起用。
上記のサニエの参加したバンドの、「Don't Kiss Me Goodbye」を歌う、
ウルトラ・オレンジ&エマニュエル、この曲よくってさあ、iTunesで買っちゃった(笑)。



丁度、携帯に朝メールをくれた子達と一緒に読むものが、忍足亜紀子さんのお話で、
彼女は「聾」の立場から女優さんをされてて、でもその事を特別だと思われたくなくて、
という感じの話題だから、ちょっと話してみようかなあって思う。
特に男子なら、ジャン・ドゥーの♂の部分って、絶対共感できると思うし。
でもなあ、メールくれた子は私の手を離れて、お若い方のパートへ行くのよね。
私の手元にくる息子達は、私のこういう話を聞いてくれるだろうかね。。。(-。-;)




人間って、どうなっても、ドコまでも、人間なんだなあって。
それは凄い事に思えるけど、案外、普通の事なのかなあって。


原作本を読みたくなる映画です。