残業が続くと
帰り道が一緒になる人が出てくる。彼女もそんな一人だった。

(あれ?話が合うな。)

立ち話が長引いて
花見に行って驚いた。

彼女は、私がお世話になった東京都の奨学金の担当部署にいたという。

大学生の私にとって、なくてはならない資金源だった。

「本当にお世話になりました」

そう伝えたら肩が軽くなった気がした。泣きそうになった。
完済したのもつい最近のこと。

すると、彼女もまた似た道を
歩いてきたと言う。
しかも、住んでた場所や勤務地が近かったことも分かった。

私たちは同じ道を歩きながら
独りでうつむいたり、前を向いてただろう。もしかしたら、すれ違ってたかもしれない。なのに、このタイミングでこんな話をすることになるなんて。

別れも人なら
出逢いも人だ。

偶然なんて、きっとない。