私の担当地区は「平穏」という
言葉に縁遠い。
馬車馬のように走り回り回り。
もはや何をしてるか分からなくなる。

そんなある朝、
私の体は動かなくなった。

痛ぇ!!!痛すぎる!!!

立っても座っても激痛。
これは…


GIKKURI
GOSHI

生活の全てを司るこのお方を
私は、ぎっくり様と名付けることにした。

「係長あの……」
机の調書を指差した。
「腰が痛くて…
提出していただいてもよろしいでしょうか」
「あぁ!ごめんね。」
50代の係長に調書を運んでもらうように頼む日が来るとは…。

私は知らなかった。
満員電車はサバイバル。
エレベーターや手すりは命綱だ。

我先に座ろうとする人や
ギュウギュウを避けようと動く人が体にぶつかるもんなら、
意識が飛びかける痛み。

私は考えた。
この戦場を超えて
蒲田へ行くために。

手の平を腰に当ててみよう!

手首から肘までリーチ分
人との衝突を回避できるはずだ!

っが、しかし。
すり抜けようとされて
横から激突される羽目に。

いっっってぇ……

目の前の看板がにじむ。

知らなかった。
皆がスマホしか見てないってことは、誰かの恐怖になることを。

ギックリ様は教えてくれた。
スマホに踊らせれてたら
大事な事を見落とすのだと。

人混みに流されてたら
自分のペースも忘れちゃうこと。

痛くないように歩くには
ずっと体と対話を要するし
ゆっくり歩いてみると
イライラ仕事してることに
気付かされた。
誰かに助けてもらう
有り難さも。
知らなかったことばかり。
この一週間。
頭と心の大掃除を早めに
済ませた感じ。

ギックリ様、ありがとう。

でも、
もう二度と
もう二度と
ほんとに
マジで
来なくていいですからね。