【夢で逢えたら】レビュー [4] 。
【第004回】
1989年.5月13日放送
構成作家:廣岡豊・和泉光晴・藤沢めぐみ・清水東
〝〝ヒミツ教えて?〟〟
深夜に始まった新人芸人たちによるコント番組、という体裁を持ちながら、
いざフタを開けてみると、そのオープニングをサザンオールスターズが
飾り、海外からアートディレクターを呼びよせて華々しいトークセットが
用意されるなど、新しさと、豪華さに満ちた番組だった、全国放送時の
【夢で逢えたら】。
そんな中で、唯一何も変わらないままだったのが、ショートコントに使わ
れるセット。
頑なに大掛かりなセットを使おうとせず、わずかな小道具と、ほぼ真っ
白なスタジオ背景のみで演出され、披露されていく番組のショートコント
群は、短いものであれば僅か5秒にも満たないものから、長くても約1分
程度というものばかりだった。
これは、まだまだスタジオコントがバラエティの第一線にあるような時代
の当時であっても、他の番組ではほとんど類を見ることができない、
まったく新しいコント番組としてのスタイルである。
あくまでもシンプルに、そして実直にショートコントばかりを製作し、発表
しつづけるという、革新的ともいえた当時のこの番組のスタイルは、まだ
第4回というこの放送の時点でも、すでに充分、完成されているといって
いい域にある。
今週最初のコント【ねぇ・・・】は、まさにそんなこの番組を象徴するような、
〝超〟がつくような、ショートコント。
セットは、公園に置いてあるようなベンチが1つ、あるのみ。
そこに野沢と内村のカップルが座っている。
なにか、深刻な秘密を打ち明けるかのような覚悟を決めた表情の野沢。
「・・・ねぇ、誰にも喋らないって、約束してくれる?」
内村は即座に、「やだ」
【夢で逢えたら】には、シチュエーションやセリフで笑わせる以外にも、
ほんの一瞬の表情の芝居、セリフの間のみなどで笑いを生み出す
コントも数多く存在している。
そんな中でも野沢は迫害されて傷ついたり、追い込まれたりしていく
ような人物を演じることが多く、いわゆる〝イジられ役〟とよく呼ばれ
るようなポジションで、数多く、絶妙な存在感と間合いを生み出してい
くことになる。
【ひさしぶり!!】も、まさにそんな野沢の魅力が発揮されたコント。
道を歩いている最中、久しぶりに再会した友人(清水)と会話になり、
今なにしているの?と、当たり障りのない会話がはじまるが、
「テレビ局で働いてるの」と、明朗に答える野沢の顔は、何故か動揺の
表情に満ちている。
実はテレビ局の〝食堂〟で働いているのだけど、ついに最後までその
ことを言えなかった野沢は、去っていく友人の背中を見送ったあと、
自分ひとりの反省会に突入する。
【秘密にしてね】は、周囲に隠れて付き合っている、野沢と南原。
誰にも言うなよ、と南原はクギをさし、絶対言わないと答える野沢だった
が、偶然通りかかった知り合いの清水に、内緒にしてよ、絶対誰にも言
わないでよ、と言いつつも、思わず自然とほころぶ顔のまま、すべて話
してしまう。
「誰にも言わないでよー?」
【内緒にしてよ】は、番組では珍しい、飲み屋らしい雰囲気のセットで
展開されるコント。
前の会社の同僚(南原)と偶然、食事中に再会した浜田。
現在の会社の状況を訪ねるも、内緒にしてくれよ、と言いつつ小声で
教えてくれたのは、以前の会社の名前も知らない人たちの、
「とっておきの秘密」
絶対に秘密にしてくれ、と強く念を押しながらそのまま去っていく南原を
見送る浜田だったが、一緒に飲んでいた今の同僚(内村)には思わず
「悪いなあ・・・・・・」と苦笑い。
【あいにくですが】は、これまでに数々の名門ホテルを訪ねていたあの
浴衣兄弟が、ついにホテル以外の場所に訪れることになるという、
新たな展開を迎えることになったコント。
その第1回の舞台として選ばれたのは、なんと国会。
偶然そこを通りかかった議員秘書(内村)に、
「国会、見学さしたれや」と、兄貴(松本)。
「今は予算委員会の真っ最中ですので・・・・・・」と丁寧に中には入れない
ことを説明する秘書だが、「大阪から車飛ばしてきたんや」と、引き下が
らない兄貴と弟分(浜田)。
ついには色紙をとり出し、「竹下さんにサインもらってきてくれ」
「マッチャン頑張れ、て書いてもろうてきてくれ」
しまいには、「金バッヂ貸してくれ」
わざわざその為に浴衣に穴を開けてきたんや、と兄貴。
丁重な対応をしていた秘書がいつものように爆発する時は、もう近い。
さらにコントは、男(南原)がシャワーを浴びに行ったスキにカバンを開け、
手帳を探しだして、そこに自分の電話番号が男の名前で書いてあるのを
確認し、満足げな表情で
「不倫してるんだなあ・・・」と女(清水)が呟く【アドレス帳】を挟んで、
再び【ねぇ・・・】と、同じタイトルのコントが始まる。
今度はベンチに座るのは、やはり思いつめた表情の野沢と、浜田。
「・・・ねぇ、誰にも喋らないって、約束してくれる?」
浜田は冷たく、「なんで?」
✤【バッハスタジオのある町】の今週のゲストは佐野量子。
登場早々、初対面の人はこの中にはいない、とメンバーの顔を見回して
おきながら、なぜか松本をマッさん、南原をウッチャンと呼び、スタジオに
動揺のどよめきを巻き起こす。
そして始まったのは、たしかここは音楽のコーナーであったはずなのに、
何故かゲストとのテーマトーク。
全員が席につき、どこまでものんびりとした佐野量子に、最近怒ったこと
は?と聞いてみるが、返ってきたのは、
「実は家に泥棒が入られて・・・・・」という、衝撃の告白。
予想外の答えに騒然となるメンバーたちだが、何を盗られたの?という
更なる質問には、「冬休みの宿題、ぜんぶ」と、さらなる騒然となる解答。
珍回答を続出させるゲストのおかげで、このコーナーとしてはこれまで
の中で最も盛り上がった回となるが、ライブハウスという設定と、みんな
で真剣に音楽に挑戦する、というこのコーナーのそもそもの趣旨は、
すでに意味がなくなりつつある。
連続シットコムドラマ【熱血宅配ボーイ南原二郎 トラブルファイル】は、
今週で第4回目。
無断欠勤でバイトに来ていないムラさんを、心配して家まで見に行こう
とする南原だが、そこに偶然やってきた社長(浜田)が、行く必要はおま
へん、と、それを引き止める。
でも、年も年ですから、何かあったら新聞とかに出ちゃうかも知れません
よ、という南原の心配にも、
「よろしおまんな、それでうちの会社の名前が出たら、宣伝費うきまんがな」
と、恐ろしいまでの独善主義。
まったく期待されていないムラさん、真面目すぎる新人の姿が逆に新鮮
な南原、どこまでも傲然な社長と、個性の生きたやりとりを見ていると、
舞台がそのあとすぐに、今回の事件が起きる現場、違法ギャンブル場へ
と移ってしまうやはり惜しく思える。
結局、無断欠勤は違法ギャンブルに熱中していたのが原因なムラさん。
勝てない腹いせに暴れだす客(浜田)とのトラブルに巻き込まれて危うくなっ
ている所を、いつものように偶然コーヒーを配達にやってきた南原によって
助けられ、物語はあっさりと終結する。
✤エンディングトークでは、毎回、それぞれが様々な衣装を着てこのコーナー
に望んでいるメンバーなのだが、どうやらその中で、内村だけは毎回自分
の衣装に不満がある様子。
毎回、1人1人にテーマが決まっているという衣装、今週は、
南原がニューヨークのエリートサラリーマン。
浜田がプロデューサー。
野沢はアップタウンガール(山の手のお嬢様) 。
松本がスタイリスト。
清水がキャリアウーマン
で、内村が、なぜか考古学者。
1人だけおかしい、という、もっともな主張をする内村が、実は1番着たい
という衣装が、松本の服。
前回松本が着ていたピンクの衣装も着たかった、という内村は、収録の
裏側でもしきりに周りにそれを漏らしていたようで、メンバーもさすがに
少々、呆れ気味。
恒例となった番組の終了時の松本のコメントは、
「来週も見ないと死刑なーのだ!」
と、同じコメントに3度目となる挑戦を勢いよくするのだが、見事なまでに
先週と同様、まったく反応がなく、思わず笑ってしまうメンバーの中でも、
ひとしきり大きく笑っている野沢が耐えられない、というようにポツリと、
「ああ、もうだめなんだ・・・」と、印象的に呟く声だけがスタジオに響いた。

