【夢で逢えたら】レビュー [2] 。
【第002回】
1989年.4月29日放送
構成作家:廣岡豊・和泉光晴・藤沢めぐみ・清水東
〝〝時間となかよしになりたい!〟〟
【夢で逢えたら】の放送が始まった89年という年は、番組の人気と共に、
ダウンタウン、ウッチャンナンチャンという2組のお笑いコンビが自分たちの
レギュラー番組を、続々と増やしていくことになる時期とも重なっている。
それぞれに自分たちの冠番組を持ち、共に【笑っていいとも!】のレギュラー
にも選ばれるなど、どんどんと多忙になっていくきっかけとなった年である。
当然、プライベートな時間もなかなかとれなかったようで、後に当時のこと
を語る際は、必ずといっていいほど、スタジオを往復するだけで終わってし
まう日々のことや、休みがほとんどなかった、辛かった、などということが
本人たちの口からもよく語られることになった。
そんな彼らが『時間と仲良しになりたい!』と、切実な本音とも思えるよう
なテーマで披露していくショートコントは、本人たちの心象を反映しているか
のように、非常にストレートで直接的なメッセージが込められたものばかり
が集められる。
✤【時給2000円】は、最近はじめたバイトが「たったの時給2000円なの」
と友人(清水)に不満をぶつける、世間知らずな女子大生(野沢)のコント。
なにそれ、辞めちゃえばいいじゃない!と、友人の女子大生も、同調して
憤るが、そうアドバイスされた本人も本人で、
「そうなの、仕送りも毎月30万円だし・・・・・・」
それを聞いた友人は、
「あなたって・・・・・・、意外と苦学生ね」
【あと10分】は、目覚ましを止めて「あと10分だけ・・・」と、2度寝をする
のが何よりも好きな夫(南原)が、起きる3時間も前に時計を鳴るように
セットして、何度も鳴らせては、セットし直し、「あと10分だけ・・・」と眠るが、
それにすべて付き合わなければいけない妻(野沢)が、目覚ましを止める
たびにキレて「うるさくて眠れないでしょ!」と怒ると、夫もそのたびに、
「あと、2時間50分も楽しめるだろっ!」
「あと、2時間40分も楽しめるだろっ!」
「あと、2時間30分も楽しめるだろっ!」
と、どんどん腹立たしげに、どんどん早口にやり返していく。
どこまでやり続けるかは本人たちに完全に任されているらしい、この応酬
は、しかし辞めどきが一向に見つからず、気がつくと、2人ともどう噛まず
に自分のセリフを言い切るかのチャレンジになりつつも、どこまでもつづく。
✤さらにコントは、まだバスが来ていないのか、それともすでに行った後な
のかわからず、ついつい何度も心配で時刻表見てしまう人の前を横切り
ながら、俳人の松本が再び俳句とともに皮肉る、【バス停にて・・・】、
遅れてきた彼女(野沢)が「待った?」と訊くと、彼氏(内村)が「今、来た
ところなんだよ」、それを聞いて、「えー、私、時間にルーズな人、嫌い」と
無情な感想を口にする【待ち合わせ】とつづき、関東ローカル放送時代に
人気を得た、あの人気コントがついに全国に初披露される。
【買い物のコツ】とタイトルがつけられたこのコントは、当時でもすでに懐か
しい、ちゃぶ台が1つ置かれただけの小さな居間が舞台。
腹を空かせて帰ってくるだろう父ちゃんのために、夕食を用意して静かに
待っていた息子(内村)。
今日は父ちゃん(浜田)の好物、冷奴も用意して自信満々だったが、帰宅
してきた父ちゃんは喜んでくれたのは最初だけで、席につくなりいつもより
多すぎるおかずに、途端に不審げな表情に。
お金を使いすぎじゃないか、と問い質すが、実は閉店間際のスーパーが、
商品を売りつくすために毎日値引きしていることを発見した息子は、今日
の商品はすべて閉店直前の6時50分頃に店にいって購入してきたもの
ばかりであることを告白。
だから、お金はかかってないよ、と胸を張るのだが、しかし、そんな彼の
決められている門限は6時。
「おのれ、6時回ってから家出て行くんかっ、ボケッ!」
と、今回もやっぱり激越した父に、でも、とうちゃんの為に・・・と、もっとも
な弁解を試みるも当然、逆効果。
「じゃかしい、ガタガタぬかすなっ!こらっ!」
「オマエ、罰として晩ゴハン抜きゾッ!」
ついに最後には馬乗りにまでなって、首まで絞められながら、
「餓死さらせっ!」
と、せっかく用意した冷奴まで投げつけられる始末。
健気な息子の気持が伝わる日は、いつか来るのだろうか。
✤
コーナー開始早々、「こないだは、みんなコケましたからね」と、松本が
自虐的にコメントせずにはいられないくらい、先行き不透明なスタートと
なってしまった、音楽コーナー【バッハスタジオのある町】。
そんな不安な雰囲気が払拭できていない中、今週のゲストとしてやって
きた布施明は、登場してきたと思ったらセット裏に置いてあったらしい、
大道具さんの工作道具を持ってきてみたり、とつぜん自分の雑談をはじ
めてみたり、自信満々によくわからない駄洒落を言ってみたりと、かなり
の暴走気味で、メンバーもさすがに戸惑いを隠せない。
そんな彼の代表曲〔そっと おやすみ〕で今回はバラードに挑戦すること
になるが、歌い終わったあとに本人からアドバイスされる上手く歌うため
のコツは、毎回少しずつ違うためにまったく参考にならず。
しかし、どうやら今回のゲストには遠慮がいらないらしい、と分かってき
たメンバーは、ついに浜田を先頭にして、容赦ないツッコミをノリノリで
いれだして、最後には大スターの首まで締めだすなど、結果的に第1回
に比べると、かなりワキあいあいな雰囲気に包まれたのだった。
【熱血宅配ボーイ南原二郎 トラブルファイル】も、第1回に引き続き、
まだまだコーナーとして形になりきれていない印象が窺える。
彼らはコーヒーの宅配が仕事になっているだけに、物語の重要な事件
も、必ずその配達先で起きることになるのだが、実は、心臓が悪くて、
仕事の効率が一向に上がらないムラさん(内村)、みんなにちゃんと目
をかけている優しい店長(清水)、電話がコールする時間の電気代さえ
惜しむ金儲け主義の社長(浜田)、その社長に何かと苦言される役回り
になる新人店員の野沢、そして真面目すぎる故にそんな個性的なキャラ
クターたちの中で、もっとも浮いた存在へと押しやられている、主役の
南原と、実は店内で展開されるシットコムのほうが、ずっとテンポがよく
て面白いという矛盾をはらんでいる。
結果、どうしても配達にいったとたんに物語はテンポが失われるという
弱点をさらすのだが、番組も出演者も黙ってそれを享受するつもりは
なく、このシットコムの進化はまさにこれから始まることになる。
エンディングトークでは、ゲストとしてやってきて、好き放題に暴れて帰
っていった布施明についての話題に集中。
「テレビで見ていた頃を思うと、あんなにドツいたりできるとは・・・・・・」と、
野沢がメンバーの思いを代弁するように語り、みんなもうなずく。
話題が今回のテーマ、『時間と仲良しになりたい』に移ると、そんな貴重
な時間を無駄につかっていたメンバーが1人いる、と清水が暴露。収録
中にセットのベッドで眠っていた南原を、早速メンバー総出で批判する。
こういうときの結束力は見事なもので、スタッフもしっかりと撮影していた
その場面をそこに挟みこみ、出演者とスタッフの番組作りに対する意図
が、決っしてが揺らいでいないことを証明している。
最後、浜田の「今日はこのへんで、さようならー!」は、番組最後の挨拶
として決め言葉になるのだが、カメラがひいて全員を写すショットになり、
そのまま終わろうとするとした間際、松本がひとこと、
「見ないヤツは、死刑なのだっ」
とアニメのキャラクターのセリフを、第1回に続いてポツリと言ったことで、
このひとことコーナーが今後もずっと定例化していくことになろうとは、
このときはまだ、松本自身も気づいていない。

