そういえば関東ローカル ③
【第001回】
1998年.10月14日放送
構成作家:廣岡豊・和泉光晴
〝〝 もうはじめてなんてコワくない! 〟〟
モノクロ映像の中、画面の手前に映し出されているバラの花だけが赤い
色をつけているという、ちょっと狙いすぎなオープニングから、ユーミンの
〔守ってあげたい〕を真顔で歌いつつ、スタジオの中心でピアノを演奏して
いる清水ミチコの周りに、ゆっくりと集まってくるメンバーたち。
そこからは、これからコント番組が始まるのだ、という兆しは何ひとつ感じ
られず、笑顔ひとつない出演者たちの表情に、見ているこちらが不安と
焦燥に苛まれる。
✤
まるでCG合成をするために、ブルースクリーンを前にして撮影をしている
のかと思うくらい、どこまでも殺風景なスタジオで、ベッドを1つだけ置いて
病室、ベンチを1つだけ置いて公園と、ほんとうに最低限といえる小道具
のみで、その場の状況を説明しながら、次々と披露されていくコント。
〝舌づかいの怪しい看護婦〟〝彼女と最後までいきたくて、恋愛の
マニュアル本を参考にする青年〟と深夜らしい、怪しいネタがつづき、
なんて低予算、なんて地味な番組なんだろう、と思っていると、小さな
テーブルの上にスタンドライトが1つだけが置かれた、コントでは定番とも
いえる状況で、スーツ姿の松本と、学生服姿の内村が向きあって登場する。
✤「隠しとおせるモンじゃないだろおっ!」
「おふくろさんが心配してるぞ」
とスゴむ松本に、ついに堪えきれず泣きだす内村。
「そうか、喋る気になったか」
とノートを開き、
「で、どこなんだ」
と訪ねたのは、じつは、第1志望の学校名。
第1志望は望みが高すぎて可能性は薄いが、第2志望には無難なところ
を選択していた学生の内村。
「その手があったか」
と、温和な指導者の顔で納得してみせて終わるかと思えたこのコントは、
松本がそこからアドリブを発揮して、さらに第3志望を訪ね、思わず返答
につまって笑ってしまう内村に、
「笑顔が戻ったじゃないか」
と突っ込む松本で締められる。
✤
それでもまだまだ、脚本どおり、予定調和らしいコントがつづく中、オール
キャストで披露された連続シットコムの第1回、【バックステージの人々】で
松本がまだまだ控えめながら、明らかにアドリブなボケを絶妙な間で披露
しはじめると、それに感化されたように、他のメンバーもアドリブで応じだし、
世界観を広げていく。
コントはテレビ局の狭い楽屋内のみを舞台にしながら、歌謡界の大御所(松本)、
意外と生意気なその付き人(南原)、無知な新人アイドル(野沢)、腰の低い
そのマネージャー(浜田)、やる気のないAD(内村)、ベテラン女優(清水)が、
それぞれに、第1回から強い個性とキャラクター性を発揮。
ついに見守っていたスタッフからも笑い声を漏れだして、無名の新人たち
は、ようやく力強く、新しいお笑い番組の世界へと漕ぎだした。
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【第002回】
1988年10月21日放送
構成作家:廣岡豊・和泉光晴
〝〝 たまにはグルメのこと まじめに考えてみよう! 〟〟
相変わらず、出演者の戸惑いが、画面を通してストレートに伝わってくる
ような、全員でマジメに歌いながらの番組オープニング。
今回のテーマはグルメ、ということで、曲もユーミンの〔チャイニーズ・スープ〕。
しかし、ピアノ前に集まって、早速はじめられたかと思ったオープニングトーク
は、相変わらず赤の他人同士が話しているみたいによそよそしく、浜田は自分
より年上の清水を当然のように、「清水さん」、と敬語で呼んでいるような始末。
その清水が、年上のお姉さんふうに番組の進行役を務めるという、かなり無理
がある役割設定も、視聴者の不安をさそう効果しか与えない。
✤
当時は2本録りで、まだ全員が顔合わせしたばかりの第1回と、じつは状況
が変わっていないのだ、と思えばそれも仕方ない、と納得してしまいそうに
なるが、これがコントとなると、すでに変化の兆しは見えはじめている。
これといって目を見張るような設定も、注目すべき中身もないコントばかり
なのに、ひとたびメンバーたちがアドリブをはじめると、最初に用意されて
いた予定調和は一瞬にして吹き飛んで、予想できない展開を見せはじめる。
✤【究極のグルメ野郎】では、お腹をすかして行き倒れている内村に、なにか
食べるものを用意してあげようとする浜田だが、内村が高級な食材ばかり
を指定するので、呆れた浜田が見捨てて立ち去っていく、というだけの単純
なショートコント。
しかし、内村が始まってすぐの長ゼリフに失敗をつづけると、浜田もついに
堪えきれず笑いだして、たて続けにNGに。
ようやく、よどみなく一気に言い切った内村は最後、空腹のために意識を
失っていく演技のあと、辞世の句でも残すように、「言えてよかった・・・・・・」
と、正直な気持ちを吐露する。
番組スタッフも心得たもので、最初のNGシーンも含めてこのコントを放送
することで、内村の最後の言葉を生かすと共に、ほとんど初めて顔をあわ
せたばかりの出演者たちがすでに結束し始めている様子を披露してみせた。
✤【バックステージの人々】の第2回では松本が、1番重要な自分の最後のオチ
のセリフを完全に忘れるという大失態をするも、周りのメンバーたちが一斉に
ツッコミながら誘導し、松本も、「そうか、あのページやな!」と尊大な大御所
のキャラクターを貫き、自分に非などない、と言わんばかりでいる為に、さら
にメンバーからつっこまれることになる。
しかし、そんなアドリブの応酬が繰り広げられる状況にあっても、お互いに
自分たちのキャラクターを忘れることなく、むしろ生かそうとするメンバーたち
の気迫は、コントに今までにない勢いを与え、スタジオ内はこれまでにない
大きな笑いに包まれていく。


