【夢で逢えたら】全放送完全レビュー。①
今から19年前、【夢で逢えたら】、というお笑い番組が存在した。
ダウンタウン、ウッチャンナンチャン、野沢直子、清水ミチコ、という
レギュラーメンバー6名によって、土曜日の夜11時30分から放送されていた、
30分間のコント番組である。
この【夢で逢えたら】は、当時の番組をまったく知らない人でも、なんとなく
名前くらいは聞いたことがある、という程度には知られている番組であるかも知れない。
たとえば、放送当時に、決して真剣に見ていたわけではない人でも、何故か
「あれは面白い番組だったね」と、口を揃えるようにして語られることも多い。
ネット上ではよく、”伝説的なコント番組”、なんて呼ばれることもあるようだ。
そこには、あのダウンタウン、ウッチャンナンチャンという2組のお笑いコンビが、
一緒になってやっていた、もう2度と実現することがないような番組だから、
という意味合いがあるのかも知れないし、過去1度もビデオ化やDVD化などが
されていないことも、そんな、”伝説”と呼ばれることに、拍車をかけているのかも知れない。
確かに、過去に放送されていた、名だたるお笑い番組が、次々とDVD化
されるようになっている現在の状況を思うと、なぜ、【夢で逢えたら】だけが、
と思うのも理解できる。
しかし、当時の番組の出演者であるウッチャンナンチャンの内村光良は、
やはり、当時の構成作家の一人でもあった、高須光聖との対談の中で、
「夢で逢えたらは、再放送もDVD化も、このまましないほうがいいと思う」
と語っている。
その言葉の真意として、「そのほうが、伝説感が残るから」、と
自ら少し茶化すようにして語っているが、この何気ない言葉には、じつは
もう少し深い意味が込められているようにも思える。
それについて語る前に、まず、この、【夢で逢えたら】という番組が、
いったいどんな番組であったのか、ということから簡単に説明してみたい。
たとえば、【夢で逢えたら】第1回の視聴率は16.8%だったという。
これは、深夜番組の1回目の視聴率としては、異例中の異例といえる数字だった。
放送当初、まだ開始から半年と経っていないときに読者プレゼントを実施
したところ、6万通という膨大な量のハガキが送られてきたことがあったり、
番組内で出演者たちが演奏した曲をそのまま収録したCDがヒットしたり、
番組本であるキャラクターブックが想像以上の売れ行きをした為に一時、
一部の本屋さんからは完全に姿を消したりしたこともあった。
番組後半は、視聴率がずっと20%を前後していて、当時ゴールデンタイムに
放送されていたあらゆるバラエティ番組と肩を並べるほどの人気を得てもいた。
出演者たちは、のちにこの番組のことを訊かれると、口を揃えるように、
「出演者の6人が奇跡的なバランスだった」
と、よく語っている。
台本を読んだ時点で、言葉で確認しあわなくても、このコントは誰が前に出て、
誰が後ろにひくのか、ということは、みんな最初からわかっていた、と言い、
番組後期は、カメラリハーサルを一切やることなく本番に入っていたという。
理由は、このメンバーでやる限り、もう必要なかったから。
これらのことから、【夢で逢えたら】という番組は、わずか30分の深夜番組
であったにも関わらず、放送当時から非常に高い人気と、注目度を集め、
また、それに違わない内容と、完成度も保ち続けていた番組だった、という
ことが言えるかも知れない。
しかし、当時番組の新人ADを務めており、後にダウンタウンの
【ごっつええ感じ】の立ち上げから携わったり、【笑う犬の生活】のディレクターを
務めるなどした小松純也は、あるインタビューの中で【夢で逢えたら】に
対して、こんなことを語っている。
「決して、放送された全部が面白いコントとは思わなかった」
そして、続けて、こうも言っている。
ただ、出演者がだんだん馴染んでくると、愛が生まれてくる。
愛をもって見ていると、番組は面白くなっていく。
視聴者はその愛をもって、みんなこの番組を見ていた。
つまりこれは、【夢で逢えたら】がただ面白いコントを放送していただけの
番組ではなかった、と言っているように思える。
では、ここで語られている、”番組への愛”とは、なんだったのだろうか。
これには、当時の時代背景を知る必要があるようだ。
【夢で逢えたら】全放送完全レビュー。② につづく。
