5本のあたり。
【昨日からのつづき】。
ずっと、当たりが出ないと噂されていたアイス。
でも、もしかしたら、なんて思いつつ食べていくと、
本当に出てきた『あたり』の文字。
うわあああ、当たった!
しかも、よく見ると、一本じゃない、『あたり・5本』と書いてあるっ!!
今でも、私はその瞬間の気持、食べていた周囲の景色、
そのときの空の天気までハッキリと思い出せる。
それくらいの、衝撃だった。
もちろん、私はすぐさま、そのアイスを買ったお店に急いだ。
自転車を走らせながら、そのときの私が考えていたのは、
「あのお店に、まだ、5本も同じアイスがあるだろうか?」
(なんといっても、5本の当たりだ!)
「もらうのはいいけど、5本も持ってかえって、冷蔵庫に全部入るだろうか?」
(私の家の冷蔵庫はそんなに大きくなかった。ああ、心配だ!)
「そして何よりも、お店のおばちゃんは、これを本物と信じてくれるだろうか?」
(だって、当たりなんてゼッタイ出ないと言われていたアイスだ!しかも5本だ!)
もう少しでアイスを買ったお店!と、いうところで、私は
遊びに行こうとしていた友人たちに出会った。
ここで生来の、人に自慢したくて仕方ない衝動が、私の中にむくむくと。
やっぱり、こんな機会は二度とないだろうし、
当たりが出ない、といわれていたアイスを
当てたわけだし(しかも5本だ!)。
そこで友人を呼び止めた私は、持っていたアイスの棒を差し出して、
みんなにおもいっきり、ここぞとばかりに自慢した。
もちろん、友人たちは大騒然で、大騒ぎ。
うーん、気分いいなあ、わっはっは。
ひとしきり私の自慢がおわったあと、友人たちは、
「これからみんなでサッカーにいくんだけど、一緒に行こう」
と私を誘ってくれた。
正直にいうと、アイスのことが気になって、そのときは遊ぶどころ
じゃなかったんだけど、一度アイスを交換してもらうと、
今度はそれを家に持って帰らないと溶けてしまうから、そうなると、
みんなとは遊べなくなってしまう。
ま、アイスは家に帰るときに交換してもらえばいいか。
そもそも、アイスの交換に期限があるわけじゃないんだし、
急ぐわけじゃないもんなあ、と、その時は考えた。
それで私は、みんなとそのままサッカーに。
日か沈むまで遊んで、みんなと別れたあと、
さて、それでは、アイスの交換に行こうかなあ、と
『あたり』と書いたあったアイスの棒を入れていた、ズボンのポケットを
探ってみると・・・・・・。
ん?
あれ?
おかしいな。
手を入れているのに、ポケットからはなんの感触も伝わってこない。
たしか、ここに入れたハズなのになあ。
別の場所だったかな、と他のポケットも探ってみたけれど、
・・・・・・ない!
ええ!うそっ!?
きっと、どこかで落としたんだ!
とは思ったけれど、あたりはすでに暗くなり始めていて、
地面を探すのも一苦労。
それでも必死に、友人たちとサッカーしていた広場や、
他にも行っただろう場所を全て見て回ったんだけど、
うーん、やっぱりない!
わーん、私のアイス5本分っ!!!
けっきょく、その間にも日はどんどん沈んでいき、やがて完全に
真っ暗な夜の時間になってしまい、私は諦めて、家に帰ったのだった。
あのときの私のアイスの当たり棒は、結局どうなったのか。
ゴミとして、誰かに拾われて、当然のように処分されたのか。
それとも、運のいい誰かが、当たっているのに気づいて、交換してもらったのか。
今も、ときどき思い出して空想するのだけど、答えはでない。