信じてしまった本の知識。 | 初心者同志

信じてしまった本の知識。

ずっと以前、私は何かの本で、


「風邪をひいているときにお風呂に入るのは、

決して悪いことではない」


と、書かれているのを読んだことがあった。


それによると、眠る前に適度に体を温めておくことは、

風邪をひいている際には、いい効果を生み出すため、

普段よりも少し温めのお湯に、短い時間であれば、

ぜひ入るべきだ、とまで書かれていた。


ふーん、そういうものなのかなあ、というくらいで、

それを読んだ当時は、あまり深く気にしなかった私。


あるとき、仕事を終えて帰宅すると、

うーん、なんだか、体がものすごく重い。

頭も、ガンガンと鐘が鳴っているような感じだし、

これはもしかして、風邪かなぁ。


普段であれば、絶対に仕事を休めない身なので、

体調のことを考えて、すぐにでも寝ることを

考えていたかも知れないけれど、

そのときは、明日がちょうどお休みの日。

それに汗もかいているし、できたらやっぱり、お風呂に入りたいなあ。


そんなとき、ふと、私は、昔読んだ本のことを

思い出しちゃったのだ。


そういえば、風邪をひいたときにお風呂に入るのって、

実は、いい効果を生むんだったぞ。


それで、昔読んだ本の記憶を頼りに、

少し温いお湯で満たした風呂に入り、その日はぐっすりと眠ったのだった。


そして翌朝、目を覚ました私は、起き上がろうとして、驚いた。

起き上がれない!


な、なんだよ、なにが起きてるの?


頭では、なんとか起きようと思っているんだけど、

体がまったくついてこないんだ。

脳から出ていった命令が、途中で道を見失って、

手足に届く前に遭難してしまったみたいなのだ。


しかも、何もしていないというのに、全身からは

噴き出すように汗がドンドンと出てくるし、

ああ、なんだか頭までボー・・としてきた。


うっ、これってやばいぞ。


と、その頃には、さすがに私も気づいたものの、

かといって、体はやっぱり、まったく動かないっ!


しばらくすると、頭の中は、まるで霧がかかってきたみたいに

不明瞭になって、何も考えられなくなってしまった。

そして、どんどんと遠のいていく意識の中で、

自分の体が、ベッドにズブズブと飲み込まれていくような

思いになりながら、私はまた、眠ってしまったのだった。


その日は結局、ベッドからまったく動けずに、

その翌日、ボウリングの玉を10個くらい

体につけられているような気分で病院に行くと、

医者からは一言、


「インフルエンザですね」


と言われた。

しかも、よく検査してもらうと、


「一番大変なときはもう、越えてますね。治りはじめてますよ」


と言われた。


うーん、先生の話を聞いてみると、

どうやら私は、すでに数日前にはインフルエンザにかかっていて、

その症状が一番強く出るときに、お風呂に入って

しまったみたいだ。


最初にインフルエンザにかかったときの症状から見て、

それほど重いものではなかったハズなのに、

昨日の私の体調だけが、命に関わっていたかも

しれないくらい深刻な状態だったのは、

医者にとっても、不思議だったみたい。


「その日の前日に、なにか変なことをしませんでしたか?」


と訊かれ、当然のことながら私は、

心当たりはありません、と最後まで言い通したのだった・・・・・・。


ああ、もう二度と、本で読んだにわか仕込みの知識を

活用したりしないぞ、と心に誓いながら・・・・・・。