冷たい別れ。
子供のころは、よく、
「お年寄りには、優しくしてあげましょう」
と言われた。
満席になっているバスや電車の車内で、
お年寄りに席を譲る、子供のイラストを、
よく見たように思う。
昨日書いた、
「都会は恐ろしいところです」
というのと同じ。
どうして子供のころに学んだこと、というのは、
忘れられないのだろう。
朝の早い時間、自転車で私が走っていると、
道端に倒れているお年寄りの男性を見つけた。
どうやら、自転車に乗っていて、バランスを崩したのか、
転んだようだった。
その日は、既に止んでいたものの、激しい雨が降ったあとで、
路面のあちこちには、まだ大きな水溜りがたくさん残っていて、
道路も濡れたままの状態。
私は自転車を降りて、その人のところに近づいた。
その男性は、かなり激しく転んだみたいで、
ひどい怪我をしている様子はなかったものの、
全身は泥水で濡れ、しばらく立てずにいた。
それで、私はまず、自転車を起こし、
「大丈夫ですか?」
と声をかけた。
のだけど、老人はなぜか、無言。
うーむ・・・・・・。
声が小さかったから、聞こえなかったのかなあ?
とはいえ、同じ言葉を二度も繰り返すのはためらわれて、
とにかく手を貸そうと伸ばしたんだけど、
その人は、私の方を見ようとさえしなかった。
それどころか、時間をかけながら、
一人でなんとか立ち上がると、そのまま自転車に乗って、
私なんて最初からいなかったみたいに、
そのまま走り去っていってしまったのだった。
私は、自分でも知らず知らず、何か失礼なことを
してしまったんだろうか、とも思ったのだけど、心当たりはない。
で、もしかて、その人にしてみれば、
「まだまだ、若い人間の助けになんかならんっ!」
というようなプライドがあって、それを態度にして
表しただけなのかも知れないなぁ、と思ったのだった。
とはいえ、もしそうなら、はっきりそうと言ってもらえたら
嬉しかったな。
私は心配して声をかけたんだし、手だって伸ばしてるんだもん。
男性が去っていったあと、一人寂しく手を差し出している
自分が、とても悲しく思えてしまった。
うーん、学校で先生のことを「お母さん」と間違えて
呼んじゃうくらいの恥ずかしさだなあ。
私がなにか誤ったのかどうかもわからないし。
ああ、もう、何も言わないから、余計に気になるじゃないかーっ!
お年寄りには優しく!
これからは高齢者社会です!
確かに、そんな言葉をよく聞くけど、
でも、高齢者が私たちに優しくない場合はどうするんだろう!?
なんだか、ちょっと考えてしまったのだった。