アルバイトの豪華特典。 | 初心者同志

アルバイトの豪華特典。

料理屋でアルバイトしていたときには、

賞味期限が迫っている食材や、

料理の余りといったものを、捨てるくらいだったら、と

貰って帰ることがよくあった。

たとえば服屋でアルバイトすることがあっても、

「これ、売れ残りだから貰って帰っていいよ」

なんて、言われたことないもんなあ。

まさに料理屋だからこその出来事で、

なんていいアルバイトなんだろう!と、何度も思ったのだった。

というのが、昨日の話。


もう一つ、料理屋でアルバイトしていたころに

嬉しかったのが、仕事の合間で出される料理。

賄い料理、と呼ばれるものだ。

これは、働いている従業員のために作られる料理のことで、

大抵の場合、作るのはそのお店で働いている、

まだ見習い途中の料理人たちだ。

使われる食材も、もちろんそのお店で使われているもの。

だから、出来てくるものは、驚くほど質の高い

料理だったりするんだよ。

一度、高級料亭といってもいいお店でアルバイトして

いたときなんて、ただのお味噌汁なのに、

一口飲んだだけで、本当に泣きそうになっちゃった。

味が全然違うんだ。


お味噌が違うのか、ダシが違うのか。

きっと、両方なんだろうなあ。


美味しいものを食べて幸せになることはよくあるけど、

美味しいものを食べて驚く、というのは、なかなか

ないことじゃないだろうか。


もちろん、ご飯もびっくりするくらい美味しいし、

お漬物も信じられないくらい美味しかった。


考えてみれば、それらは普通にお客さんに出されているものと

同じものだから、当然といえば、当然なんだ。


私はただのアルバイトで、

お金を払うわけでもないのに、


こんな美味しいものを食べてしまっていいのかな?


なんて、そのときはよく思ったのだけど、

実は、それは少し、気が早い考えだったことを、

そのあと、私は知る事になったのだった。


というのも、秋も近くなったある日のこと。


その日の仕事をすべて終えて、時間は夜。

お店を閉め、片付けをしていると、いつものように

夕食の賄いが準備され始めたんだけど、

なんだか少し、様子がいつもと違うんだ。


聞いてみると、


「今日はちょっと、特別なんだよ」


と、その日、賄いの担当だった料理人。


うーん、よく見回してみると、なんだか他の料理人や、

従業員たちまでが、心なしか、ちょっと嬉しそうにしている。


なにがあるんだろう、と思っていると、

既に閉店し、客のいなくなったお店のテーブルに、

ドン、ドン、ドンと並べられた卓上コンロたち。


中には、真っ赤に燃えた炭がいっぱい入っているぞ。


それに続いて出てきたのは、

子供が目一杯に手を広げたくらいありそうな大皿。

で、その上に載っているものに、私は思わず

目が釘付けになってしまった。


というのも、そこにはなんと、山のように盛られた松茸が!!!


うっ、本物だ・・・・・・。


その料亭では、メニューは毎月新しいものに

変えられていたのだけど、

その中でも季節の変わり目となる月は、

特に、旬のものを使った、その季節ならではの

料理にすべて一新されるために、

試作と試食会というものが、お店の中で行われるのだ。


で、秋といえば松茸。


これからの季節、メニューには、松茸料理が

たくさん載るから、ということで、

その日はなんと、松茸の試食会が行われる日だった、というわけ。


もちろん、試作された松茸料理はどんどん出てくるし、

皿の上に山のよう盛られた松茸は、コンロの上で次々と焼かれて、

私たちのお腹に消えていく。


私はそれまで、松茸なんて一度も食べたことがなかった。

そして、あんなにお腹一杯に松茸を食べることも、

きっとこの先ないだろうなあ、と思う。


その食事会が終わったあとは、もうあまりに食べすぎて、

しばらく何も食べたくないな、て思ったくらいだもん。


なんて贅沢な食べすぎなんだろう。


それにしても、料亭で働く人たちは、

みんな、いつもあんなにいい思いをしているんだろうか。


うーん、うらやましいなあ・・・・・・。


あのときのお店の人たちのキラキラした目が、

私は今も忘れられない。