ビキナーズラック。
子供のころ、両親に連れて行かれて、初めてやったボウリングは、
とても退屈なスポーツに思えた。
ボールは重いし、やっと投げたと思ったら、
両脇にはただの意地悪みたいに深いミゾがあって、
ボールはすぐにゴトンッと落ちちゃうしさ。
人が投げている間は、ずっと待ってなくちゃいけないし。
やっと、自分の番が来たと思って、急いで投げたら、
ボールはまた、ミゾへとゴトン。
ああっ、こんなのただの我慢大会じゃないかあ!
大抵は途中で飽きちゃって、最後まで遊ぶことはほとんどなかった。
で、それから数年後。
あるとき、親しい友人たちと話していて、ボウリングにでも行こうか、
ということになった。
正直、私は子供のころにいい思い出がなかったし、
それ以降も、ほとんど近づいていなかったばかりか、
完全に興味をなくしていたので、
ちょっとためらったのだけど、
一人だけ、ワガママを言う訳にもいかないもんなあ。
で、行くことにした。
凄く久しぶりにやってきたボウリング場は、
ほとんど何も変わっていなくて、ビックリしてしまった。
その場所だけ、時間がまったく流れていないのかな?
と真剣に思ってしまったくらい。
そんなだから、私が両親に連れてこられて
やっていたころの記憶も、見事にそのまま思い出すことができて、
なんだか、始める前からすでに疲労感でいっぱいに
なってしまったのだった。
ただ、いざ始めてみると、そんな思いは一気に
吹き飛んじゃった。
というのも、私の投げた球、投げた球が、
ことごとくストライク、もしくはスペアをとっていくんだ。
うーん、ボウリングって面白いじゃないかっ!
なぜだか分からないけど、あんなに苦手だったボールの
重さも全然気にならないし、投げたボールは見事に
すべてピンに向かって吸い込まれるように転がっていく。
ああ、ビキナーズラックて、本当にあるんだなあ。
ま、ほとんど初心者も同然、と言っていた私を連れてきた
友人たちは、どんな酷いプレーをするのかと
楽しみにしていたみたいで、
にもかかわらず、自分たちよりずっといいスコアを出すので、
途中からは、かなり呆れてたみたいだけどさ・・・・・・。
結果、すべてのフレームでストライクとスペアを出した私は、
その中でダントツの優勝。
いやー、私てボウリングの才能があるんだなあっ!
と、最高の気分で、ボウリング場をあとにしたのだった。
それから、数ヶ月した、ある日のこと。
ふと、友人たちがボウリングにいく予定を話していて、
私も一緒に連れて行ってもらうことにした。
以前、一緒にいった友人たちとは、また違う友人だった
んだけど、あのときの楽しさが忘れられなかったのだ。
で、もう、始まる前から、私はその友人たちに、
「実は、ほとんどやったことがないんだけど、私は結構、
ボウリングうまいんだよー、わっはっは」
なんて、自信満々に言いふらしたりして、
落ち着かないし、早く投げたくて仕方ないっ。
なんだけど、いざ始めてみると、投げたボールは
ことごとく、両脇のミゾに、見事なまでに均等に
ガタン、ガタンッと落ちていく。
あれ・・・・・・。
結局、最後までそれは変わらなくて、倒しても、一本とか二本。
当然、スコアは散々なことに。
帰り道、友人たちは、私の背中をポンポンと叩いて、
「・・・・・・まあ、誰だって見栄をはりたくなることがあるさ」
わーん、違うんだよっ!本当に得意だったんだよーっ!
それ以来、またボウリングのことが嫌いになってしまったのだった・・・・・・。