笑いながら死んだ男。 | 初心者同志

笑いながら死んだ男。

【 笑ながら死んだ男 】

著 デイヴィッド・ハンドラー 1992年発刊

一切語られることのなかったコンビ解散の秘密に苦しむ、男と女たちの物語。


主人公スチュアート・ホーグは、自身のデビュー作で

いくつもの文学賞を受賞し、一躍、文壇の寵児となった小説家。

本格派女優で売れっ子のメリリー・ナッシュと結婚し、

あらゆる雑誌の表紙を飾り、多くの人たちから羨望と

尊敬の眼差しを浴びていた。


ただ、それも一時のことだった。


いつまでたっても二作目を書き上げられず、

追い詰められ、酒に逃げるようになった彼は、

やがてメリリーとも離婚。

収入も一切なくなり、今はすきま風の入る

古い部屋に住み、しかも家賃はすでに

三ヶ月を滞めている。


そんな彼の元に、出版社から、

有名人のゴーストライターをしないか、という話がやってくる。


有名人の名前は、ソニー・デイ。


かつて、ホーグが子供のころ、あるいは当時の

全米の子供たちであれば誰もが、大好きだった、

全米で最も有名なコメディアン。

人気、実力共に№1の喜劇俳優。


ただ、今は完全にどこからもホサれている。

映画にも、テレビにもほとんど出る機会はない。

テレビ番組は出ても、すぐ打ち切りになる。

自身で主演し、製作した映画は退屈で、すべて失敗した。


そのソニー・デイが本を出す上で、

一つだけある条件に同意したのだ。

それは、コンビ解散の真相を語る、というものだった。

ソニー・デイにはデビュー当時から

一緒に仕事をする相棒がいた。

彼らは当時、常に二人で映画、テレビに出つづけていた。

しかしあるとき、相棒のゲイブ・ナイトとソニー・デイは、

大勢の人間が見守る中で、お互い血だらけになるような

派手な喧嘩をし、その翌日、二人は解散した。


喧嘩をした理由は不明。

いまだに語り草となっている、

誰一人知らないその事件の真相が、初めて明らかになる。


しかし、現実にその瞬間が訪れようとしたとき、

ソニー・デイは突然、それを語ることを否定し、

そして、一つの殺人事件が、真相を闇に葬っていく。


果たして、人気コンビの過去の解散に、

一体、どんな謎が秘められているのだろうか・・・・・・。



作家スチュアート・ホーギーがゴーストライターとして、

数々の有名人の元を訪れることになる、

ホーギーシリーズの第一作目、

「笑いながら死んだ男」は、こうして始まります。


かつてはメディアのすべてを独占していたものの、

今は完全に、人気の凋落したコメディアン。


世間の同情を買い、話題を集めることで、

もう一度復帰しようと画策する芸能人。


自伝の出版で、とっておきの秘密の暴露。


いずれも、ふと、日本を振り返れば、

誰かに置き換えることも、容易にできそうな、

私たちに取っても、なじみのある話ばかり。


それだけに、アメリカの芸能事情なんて詳しくない、

という人でも、きっとこの物語の中には

違和感なく入っていけるでしょう。


反対に、アメリカ文化に詳しい人であれば、

より深く楽しむこともできます。


作中、ソニー・デイが、ホーグの取材をうけ、

自分の過去として語る部分では、

四十年代、五十年代の絢爛たるアメリカの

ショービジネス界の裏側が、虚実混在で描かれ、

たとえば、実在する当時の映画会社、テレビ番組なども

ふんだんに登場するのです。


あの、バクシー・シーゲル。

ケーリー・グラント。

ジャック・ワーナー。

リッツ・ブラザーズ。


といった有名人までが、実名でソニーの口から

当時自分が関わっていた人間たちとして、

当然のように語られていきます。


その描写たるや、読んでいるうちに、

自然とソニー・デイという男が、本当に実在していたかのように

思えてくるほど!


無名だった一人の男が、やがてその才能に目をつけられ、

華やかな芸能界を謳歌し、支配し、

しかしやがて見放され、それでもすがりつき、

苦悩していく様子を、とてもリアルに感情移入して

いけるでしょう。


しかし真の主役は、もちろんホーギー。

ホーギーは言います。


ゴーストライターの仕事とは、

有名人が、実は、辛い真実を避けたり、

弁解したりしているだけだ、とわかっていても、

いかにも、すべて率直に語っているかのような文章に

仕上げることだ。


それが分かっているからこそ、それを拒み、

できる限り、真実の言葉を引き出そうとする彼は、

やがて、一人の過去の大物、ソニー・デイの真実に

誰よりも迫っていくことになるのです。


彼が、誰よりも苦しみ、誰からも隠したかった事実とは、

一体、なんだったのでしょうか。


それは、解散の真相と共に、ソニー・デイが語る

自らの過去の中に隠されていました。


Furui sakuhindayo

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