祭りの逃走劇。
祭りの楽しみといえば、やっぱり夜店。
そういえば小さいころは、夜になったら
外に出ることは、絶対に許されなかったなあ。
そんな中でも、祭りのある日だけは特別で、
友人たちと一緒に、特別に出たお小遣いを持って、
夜店の並んでいるところまで走ったのが懐かしい。
夜店といえば、
並んでいるお店の中には、全く同じものを売っているところがあるけれど、
あれって、喧嘩になったりしないんだろうか。
だってさ、ワタアメや金魚すくいに明確な差をつけるのって、
難しいと思うんだよ。
ということは、ひたすら客の奪い合いになってしまって、
同じものを商売にしている夜店は、
きっと不利なんじゃないかなあ。
小さいころ、一緒に夜店を見に行った友人たちと、
りんご飴を買おう、ということになったことがあった。
ただ、そのりんご飴の夜店が全部で三件もあって、
どこのお店で買うか、が議論になった。
たかがりんご飴、といっても、
限られた自分のお小遣いを使って買うのだから、
私たちは真剣そのもの。
大勢の人たちが行き交う路上で足を止め、
私たちは真剣に話しはじめたのだった。
その内容はといえば、
最初は、向こうのりんご飴のほうが美味しそうだったよ、
なんていう、とても自然なものだったりしたのだけど、
次第に、子供らしい悪ノリがはじまってさ・・・・・・、
こっちの看板はちょっと薄汚れてる。
あっちの看板には可愛いりんご飴の絵が書いてある。
作っている人がこっちはおじさん。向こうは若い人。
こっちの屋台は今にも壊れそう。
と、ただの悪口合戦に。
道路の奥のほうで話していた私たちだったんだけど、
気がつくと、いつのまにか声が大きくなっていたみたいで、
友人の一人が突然、おびえた顔をして
「あっ」
と言って視線を彷徨わせたのを見た私たちは、
その視線の先をたどってみると、
なんと、さっきまでりんご飴を作っていたおじさんが、
仕事を放棄してこっちに向かって来ようとしているじゃないかっ!
少しでも逃げるのが遅れていたら、
本当に捕まっていたかもしれない、
という、際どい距離を、辛くも人ごみに紛れて
逃げ切ったものの、
数分に渡って、本気で追いかけられた私たちは、
調子に乗りすぎた自分たちの行為を、
心から反省したのだった。
もちろん、そのあと、そのおじさんがやっていたお店から
遠く離れたところにあったもう一つの夜店で
りんご飴をみんなで改めて買ったのは
言うまでもないけどさ。
祭りには、こんな楽しさもあるのか、とちょっと思った私たちは、
その翌日、多少話に尾ひれをつけて
クラスのみんなにそのときのことを話し、
しばらく注目の的となりつづけたのだった。
