面接の極意。 | 初心者同志

面接の極意。

まだ、どこで働こうか決めかねていたときのこと。


いくつかの面接を受けながら、

求人をしている会社を渡り歩いていた私は、

その中の一つで、とても歓迎されて迎えられたことがあったんだ。


出てきたのはその会社の社長で、

通されたのは明らかに、

特別な来賓を入れるための豪華な客間。


ソファなんて、フカフカなんだよ。

うーん、私なんかが座っていいのかなあ。


面接は終始和やかに進んで、なぜかテーブルには、

ケーキとジュースまで用意されていた。

ただ面接に来ただけの私には、

明らかに過ぎた歓迎ぶり。


ただ、どうしてここまで歓迎されるのかについては、

当時の私にはどうしてもわからなかった。


そのとき、私はその仕事の経験者だった。

募集では経験者のみには絞っていなかったので、

もしかしたら、そのことが原因だったのかな、と

そのときは思った程度だったんだ。


結果、私はその仕事場で働くことになった。


他にも色々と回ったけれど、そこの仕事場の環境が、

一番自分に向いている、と思えたからだった。


それは、ほんの最初のころは間違っていなかった。


周りの人はみんな親切だし、

相変わらず、なぜか社長は気味が悪いくらい

私に目をかけてくれて、気遣ってまでくれるしさ。


ああ、ここを選んでよかったな、て心から思っていたくらいだった。


でも、それはとんっでもない、間違いだっんだ。


なぜか私には優しい社長は、他の従業員に対しては、

まるで使い古した物でも扱うような態度だった。


手を上げるまではしないけど、少しでもミスをすると、

ひどい言葉で延々と罵倒しつづけるんだ。


偶然、それを見かけた私は、

さすがにあれはやり過ぎだろう、と思ったんだけど、

どうも先輩たちに聞くと、そんなことは日常茶飯事だという。


うーん、だったら社長はどうして私にはあんなに優しいんだ?


と思ったら、その答えは働き始めてからすぐにわかった。


あまりにも独善的で、身勝手で、他人を思いやるろうとしない

社長のせいで、そこでは従業員がみんなすぐに辞めてしまって、

ものすごい人手不足になっていたのだ。


最初のころは、それでも人件費がかからないから、と

社長は傍観していたらしいのだけど、

さすがにあまりに人が減りすぎて、

仕事がまったく、進まなくなってしまったらしい。


それで、慌てて求人を始めた、ということだったようだ。


つまり、私はそんなところにホイホイとやってきて

うっかり罠につかまってしまった、

一匹のかわいそうな蝶だったというわけ。


うーむ、それで社長のあの笑顔の訳もやっと理解できたぞ。


きっと、私は何も知らないで精肉工場にやってきた

養殖の豚のように見られていたんだろうなあ。


結論からいうと、私はそこに暫らくいたあと、

辞めなければ、いけなくなってしまった。


あれだけ私に笑顔で優しくしてくれていた社長が、

私のことを邪険に扱い始めたのだ。


それもそのはず。

辞められたら困る、というので

私にだけは徹底的に甘かったのを利用して、

私は社長の自分勝手なやり方を、ことあるごとに

批判しつづけていたのだ。


最初のころは大人しく聞いてくれていた社長も、

我慢できたのは、本当に最初だけだった。


それから私はその社長とつかみ合いの喧嘩になって、

そこを辞めることになったのだった。


それ以来、私は面接にいくと、相手の笑顔を見る度に、

一体その裏にこの人はなにを隠しているんだろう、

と考えてしまって、とても苦労したことを、ここに書いておこう。


そして、もし、これから面接をする予定のある人。


他の人の笑顔は信じても、

社長自ら面接に出てきたりした場合は、

その笑顔にだけは、絶対騙されてはいけないぞっ!