川遊び。 | 初心者同志

川遊び。

私にとって、「水泳」といえば、

それはプールでも、海でもなく、川でするものだった。


私がまだ小さかった頃、実家の目の前には川があった。

けっこう大きな川で、歩いて三分もすれば、水の中に入れるくらい、近かったんだ。


川の水は、そのまま、手ですくって飲めちゃうくらい綺麗な水で、

流れも、とても緩やかところだった。


泳いだあとは、そのまま濡れた格好で帰っても、

誰も文句を言う人なんていないから、

着替えをもっていく必要さえ、なかったしさ。


もちろん、泳ぐのにお金だってかからない!


うーん、いいこと尽くしっ!


で、当然、今の子供たちだって、そうして楽しんでるんだろうなあ、と思ったら、

これが、どうやら、そうじゃないらしい。


なんでも、最近では危険だから、という理由で、

子供たちの川の遊泳は、全面的に禁止されているんだってさ!


子供だけだと、川には、近づくことさえ許されないらしい。


へーえ、つまんないの。


だって、せっかくの綺麗な川なのにさっ。


ただ、危険というのは、確かにその通りかも知れない。


私が初めて川で泳いだときの記憶は、幼稚園のころだと思うけど、

それから、中学生くらいまでは、本当によく泳ぎにいっていた。


でも、それくらい川遊びをしてきた私でも、

川という場所にたいして、恐ろしい、という思いが、

一度だって消えたことがない。


というのも、水の流れるプールや、海なんかとも違う、

川には、川にしかない、危険がたくさんあるからなんだ。


たとえば、川は水の深さが一定じゃない。


子供でも立てもような深さが、延々と続いているかと思ったら、

とつぜん、車をもかんたんに飲み込んでしまうような、

深い穴が開いていたりする。


流れについても、同じことがいえる。


ゆるやかなところと、急流なところ、というのは、

収拾のつかなくなったオセロの勝負みたいに、川のあちこちにあって、

ほとんど流れのないような場所を、泳いでいたと思ったら、

とつぜん、すごい勢いの激しい急流に変わって、身体ごと流される、

なんてことは、よくあることだ。


しかも、それらは、水の中に入って初めて分かるコトばかりで、

上から見てみるだけじゃ、ぜったいにわからない。


ここは浅いから、ここは流れがゆっくりだから、と上から見て判断して、

いざ、泳いでみると、まったく違っていた、というのが

自然の川の場合は普通のことなんだ。


しかも、しかも、その下にはコヅゴツとした自然の石がたくさん転がっていて、

その石にはみんな藻が生えているから、ツルツルすべって

足元だって危険なんだよ。


それで転んで、慌ててしまって溺れかけた友人だって何人もいた。


だから、川で泳ぐことに、どれだけ慣れていた当時の私でも、

川で泳げればどこでもいい、なんてことは決してなくて、

いつも決まった川の決まった場所でのみ、泳ぐようにしていたんだ。


自分の知らない場所で泳ぐということは、

川の場合は、それぐらい危険なことだったんだ。


でも、逆にいえば、そんな川の特徴を知り尽くしてしまえば、

これほど楽しい場所もない、ってことなんだけどなあ。


子供は危険だから泳いじゃだめ、なんていうのは、

だから、私はやっぱりおかしい、と思うんだ。


だって、川のことを知らなければ、危険なのは子供も大人も同じだもん。


むしろ、泳ぎに自信がある大人のほうが、

川なんかに入ると、油断していて事故にあったりしやすいんじゃないだろうか。


そんことを思いながら、実家のすぐ前の川を、

久しぶりに見に行ってみた私。


あれ・・・・・・、川がない。


いや、あることはあるんだけど、おかしいなあ。

こんな形だっけ。


で、聞いて見ると、昨年の大雨で堤防が決壊しかけて、

その修復の工事が行われた際、補強をかねてコンクリートで堤防を

固めてしまったらしい・・・・・・。


あんなに素敵な景色だった川の周辺が、

ほとんど灰色のコンクリートで埋め尽くされてしまっていたんだ


うーん、時間て残酷だなあ。


でも、こんな景色を作ることになった原因て、結局なんだったんだろう。


大雨?

それとも、人の意志?


ふと、もう、この川で泳ぐことはないのかなあ、と思ったら、

なんだかとても寂しい気持ちになってしまったのだった。