動物の会話。
私が勝手に憧れている人に「コンラート・ローレンツ」という人がいる。
動物の「刷り込み」という現象をご存知だろうか。
子供が生まれてきて最初に見たものを自分の親だと思う現象のことで、
少しずつ覚えていくのではなく、まさにこの世界に生まれてきたその瞬間に見たものを、
そうだと記憶することから、「刷り込み」と呼ばれているんだって。
コンラート・ローレンツはそれを最初に見つけたことで有名な人。
1973年には、「個体的および社会的行動様式の組織化と誘発に関する研究 」で
ノーベル賞もとっているそうだ。
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また、この人はいわゆる、動物行動学とよばれる分野の研究者で、
その先駆けとも呼ばれる、すばらしい研究成果をたくさん残している人なのだけど、
私が憧れているのは、そういったこととは、少しだけ、別の話。
私が心を奪われたのは、コンラート氏のある逸話を聞いたからなんだ。
というのも、この人は動物と会話することができた、といわれているんだ。
ペットの飼い主であれば、誰でも、
「私はこの子のことなら、なんでも言ってることがわかるの!一心同体なのっ!」
なんて言ったりするものだけど、コンラート氏の場合は会話は
そういった、なんとなく通じ合う、といったものじゃなくて、
本当の会話だった、と言われている。
元々、彼の刷り込み現象の発見は、
家で飼っていたハイイロガンの子供が生まれてきた際に、
実際に自分のことを、親だと勘違いするのを
目の当たりしたことが、きっかけだったそうなんだけど、
その、自分のことを親だと勘違いしたハイイロガンと暮らしていくうちに、
ガンの鳴き声が、しっかりと言葉になっていることに、気づいたのだという。
ハイイロガンの子供は、親の姿を見えないと、いつも同じ言葉で鳴いた。
まず自分の場所を「ビッ、ビッ」と鳴いて教え、相手の場所を「今どこにいるの?」と訊いてくる。
コンラート氏が自分の場所を鳴いて教え、「寂しくないよ」と鳴く。
子供たちはそれを聞くと、安心してやってきて親を見つけ、着いてきたんだって。
うーん、なんか、かわいいなぁ。
でも、コンラート氏が反対に、それに何も答えないでいると、
ハイイロガンたちの子供たちは一斉に、「寂しいよ、不安だよ」と
悲しんで鳴き始めるのだとか。
ただ、そんなコンラート・ローレンツだけど、
あまりに動物に密着した生活環境から生まれた研究経過であったことから、
多少、動物たちを擬人化しすぎていて、正当性に欠けている、
なんて批判も現在ではあるんだそうだ。
へーえ、そんなものかなぁ。
でも、実際の気持なんて分かりもしないのに、
無理やり人間と同じような服をペットに着せて満足している飼い主などと比べれば、
「自分たちが動物たち側のたって、まず考えること」こそを、
何よりも大切にしたコンラートという人は、
私には、とても素敵に思えるんだけどなあ。