事故。 | 初心者同志

事故。

よく、事故に遭った人が、

衝突の瞬間、自分の周りがスローモーションになったように感じた

という人がいるけど、あれってホントなんだよ。


私も同じ経験がしたことがあるんだ。

だから間違いない。


私の場合は深夜に近い時間に自転車に乗って走っていたときだった。

そのとき乗っていたのは、競輪選手が乗るような自転車で、

ロードバイクと呼ばれているヤツ。


プロ仕様ではないんだけど、それでも普通にちょっと頑張って漕ぐだけで、

道路上ならば簡単に40キロくらいのスピードが出る。

そのときも、それくらいは出していたかもしれない。


よく知った道だったので、きっと油断していたんだと思う。

交差点が見えてきて、私は信号を確認して、そのまま行けると判断して

一気に直進した。


でも、信号は私が思っていたより少し早く変わり始め、

停止していた車が動きはじめちゃったんだ。


あ、ダメだ、と思ったときは、もう遅かった。

こっちは加速しはじめたときだったし、交差点にすでに進入していた。

自転車とはいえ、スピードはほとんどバイクなみ、というか、それ以上。

でも、ブレーキは普通の自転車についているのと同じブレーキだから、

急には止まれないんだよぉ。


たとえるなら、これってほとんど、よく地方のニュースにみる、

トラックから逃げ出して道路を暴走する牛を、

虫とり用アミで、捕まえようとしているようなもの。


ほとんど役立たず。


発進をはじめた車がすぐ目の前に迫ってくるのを確認して、

私はブレーキをかけることを、あっさり断念。


そのときだった。

時間が水の中に潜っているときの様に、ゆっくりと感じられたんだ。


向かってきている車の運転席で、口を大きく開けるドライバーの顔がはっきりと見えた。

すぐこの後に来るだろう衝撃を予測して、私は姿勢を低くして、

自転車にしがみついた。

そして、ダメだ、もう終わりだ、全部終わりだ、と考えたのを覚えている。


実は、もっともっと、時間があった。

あった気がする。

でも、何をしていいのか、何をしたらよかったのか、考える余裕なんなかったんだ。

ただ、終わりだ、終わりだ、と考えてた。


で、衝突。


あれほど強烈にしがみついていたのに、そのとたんに、

私の体は一瞬にしてすっ飛んで、ぶつかった車のボンネットに叩きつけられた。

そのままフロントガラスに当たり、跳ね返されて、道路にドサリ。


今でも忘れられない、あのときの瞬間。

ああいうときって、ホントどうしたらいいんだろう。


地面に落ちて、ようやく止まった私の体。

だったんだけど・・・・・・。


それで、すぐに気づいてしまったんだ。

さっきまで、人や車が慌しく動いていたその交差点が、

今やまるで水をうったように、恐ろしいほどの沈黙!


うっ、ぜったい注目を浴びてる。


というのも、そのとき私の体は、どうやら奇跡的にほぼ無傷。

痛かったのは道路に落下した時の衝撃くらいで、あとはほとんど痛みもない。


でも、明らかに一身に注目を浴びているのを感じて

立ち上がりたくても、立ち上がれなかったんだよお・・・・・・。


衝突した車の運転手が、慌てて降りてきて私を立たせてくれたとき、

どうやらあの少年、無事だったらしいぞ、とわかって、

その交差点内で一斉に起きた盛大な拍手のことを、

私はこの先もゼッタイに忘れないだろう。


ああ、ホント!夜でよかったっ!

だってさ、周りが暗くなかったら、顔どころか耳まで真っ赤になっていたのが、

あの場にいた人全員に知られてたと思う。


色々な意味で、もう二度とこんなことが起きないよう、

気をつけよう、と考えさせられた出来事だった。