友達。 | 初心者同志

友達。

その日、かかってきた一本の電話のことを、私はこの先も、

絶対に忘れないと思う。


それは数日後に成人式の日を控えていた、ある日。

私はそのとき20歳だった。


電話は小学校の同級生で、卒業後もよく会っていた友達だったけど、

その声を聞いたのは久しぶりだった。


電話の先から友達が伝えてきたのは、やはり小学校のときに同じクラスだった

私やその友人とも仲のよかった友達が、死んだ、という、とても現実離れした言葉だった。


そのときまで、私は自分が生きる時間というのは、自分で決められるのだ、と思っていた。

自分で生きたいと思っている限り、その自分は生き続けられるのだ、と思っていた。

私には、まだ死ぬ理由がない。

生きているのが楽しいとか、死ぬのが怖いとかじゃない。

自分が、死ぬ理由がないんだ。

だから、私は生き続けているのだと思っていた。


それがすべて間違いだということを、私はそのときに学んだ。

私の友達は20歳で、成人式を迎えていなかった。

まだ、もっとずっと生きつづけられる長い時間が、そのあとにもあるハズだった。


ちくしょう、なんでなんだ!


それから、私は自分の死ぬときのことを考えるようになった。

どんなに、死ぬ理由が自分になくても、

どんなに、もっと生きたいと願っても、

人には選べないタイミングで、予想もつかないときに、

死は、やって来る。


悔しい!

永遠に生きたいわけじゃない。

ただ、いつ来るかわからない瞬間に怯えて生きるんじゃなく、

普通に毎日を生きたいだけなんだ。


その友達は、私と同じ年に生まれ、同じ時間を生きていた。

でも、友達の時間は途切れ、私の時間は今も続いている。

この差ってなんなんだ?


まだ20年しか生きていないかった当時の私には、わからなかった。

ただ、かかってきた電話をつかんだまま、言葉を返すのも忘れて、

ずっと考えるばかりだった。


こんなこと、誰にも相談できない。


だって、生きることも死ぬことも、人に代わってもらうことなんて出来ないんだ。

何かの本を読んでも、偉い人の言葉をきいても、だめだ。

一人で考えるしかない。


そう思えたから、今でも私は自分でそのことについて考えている。


はたして、人はいつ来るか分からないモノに、ただ怯えていかなければ

いけない生き物なんだろうか。


あれから数年がたった今、

一人で考えに考えて、私はこう思っている。


死は、結果だろうか。


確かに、人はいつか死んでしまう。

そのあとには、転生を繰り返してまた別の人生を生きるのだとか、

天国や地獄のような世界があるだとか、人はいうけど、

そんなことに興味なんてない!


人が死ぬってことは、この世界で生きてきた時間が終わるってことだ。

もう生きていけないってことだ。

だったら、死は生きてきたことの結果、ということなんだろうか。


そうじゃないと思いたい。


確かにどんなことであっても、自分のしたことには、必ず結果がついてくる。

結果とは、避けられないもので、目をそらさず、受け入れて、

そのあとも背負っていかなくちゃ、いけないものだ。

死も同じなのか?


そうなのかも知れないけど、私はこう思いたい。


私たちは生きるている限り、なにかの目的がいつも、ある。

例えばその日一日、「ただ、楽して過ごしたいなぁ」と思うだけでも、

それも一応、楽をしたい、という目的だ。


私たちが生き続けるということは、目的を作り続ける、ということなんだ。

すぐにできてしまいそうな簡単なものから、

とても叶えられないような壮大な目的まで、

私たちは生きている間、ずっと目的を生み出しつづけている。


そして、目的は死なない。

人は死んでも、目的が死ぬことはない。


人が一番最初に、空を飛びたいと思ったのはいつの事だったんだろう。

宇宙に行きたいと思ったのは?

それを最初に思った人間は、実際にそれが実現した時には、もう、

生きてはいなかったはずだ。


でも、誰かが思わなければ、

誰かが目的となるものを作りだし、進みはじめなければ、

実現することも、ずっと、なかった。


もし、私たちが目的を作り、それに向かって努力をつづけ、

しかも、その目的が多くの人たちの賛同を得られたならば、

最初にそれを生み出した人間が死んでしまったとしても、

目的は生きつづけるんだ。


そのとき初めて、死は、ただの生きてきた結果、というものから解放されるんじゃないだろうか。



目的が失われず、そのあともその意志を受け継ぐ人がいたなら、

誰かが、いつか自分の意志を受け継いでくれるはずだと信じ、

実際にそれを疑うことなく託せる、信頼すべき人がいるのであれば、

生きたいと願いながらそれが叶わなかった人も、それを受け継いでいく人も、


すべて、永久に生きつづける、一つの命だ。



だから、私は思うんだ。

私もそのときが来たら、誰かに託せるなにかを持ちたい!


目的と、それを受け継いでくれる仲間。


今の私には足りないものばかりだけど、いつか、その両方を

ちゃんと自分のものにしたい!


簡単なことじゃないのは、わかっている。

だからこそ、心の底から真剣に、そう思っているんだ。