そのぐ犯少年(というか女の子)の審判です。


母親が出頭してくれました。




調査官の調査票によれば、少年の問題行動は、万引と夜遊びであり、その夜遊びの延長が家出と異性交遊でした。


夜遊びが盛り場でナンパされに行くやつで、うまくいけばそれから数日家に帰らないでそのまま遊んでるという…そういう生活だったわけですな。

万引は、それとは全く別の場面で、学校の帰りとかに、やってたようです。


ただ…



裁 「君の万引は、コンビニのチョコレートとかお菓子とか、そういうのを取ってたのかな?」


少 「…はい」


裁 「ずいぶんやっすいねー!」


少 「 … 」


裁 「それから、夜遊びしてたみたいだけど」


少 「 … 」


裁 「ナンパされに行くんですか?」


少 「…はい」



こういうタイプの事件では、まず少年の言葉を引き出すために、

どうしてそんなことをしていたのか、根掘り葉掘り聞くことにしていたのですが、今回はその辺調査官の調査で一応の心証を得ているので飛ばします。


その代わり…



裁 「では、お母さんにもお話を伺います。」


母 「はい」


裁 「お子さんが夜遊びしたり万引きするのは、どういったところに原因があるからなのか、母親としてのお考えがあれば聞かせてください。」


母 「それは…ん~」


裁 「 … 」


母 「中学になってから、この子がお付き合いする友達が変わったんです。それから、親の言うことも聞かなくなって…」




子どもの環境が変わったことを最初に挙げる親御さんは非常に多いです。


それ自体は、間違っているわけではないんでしょうけど…




裁 「友達のせいであると?」




ちょっと意地悪な聞き方です。でも、もう、こちらとしては、もっていきたい話題があって、わざとこう聞いているわけです。




母 「いいえ…」


裁 「そうすると、ほかに?」


母 「う~ん…」




そうそう…ほら…お子さんが変わった時期を考えると…









母 「そうだ、先輩ですね。先輩との付き合いがとても多かったんです。」





ええ~っ!!   Σ(~∀~||;)




そうきましたか…





裁 「あのう…離婚されたのは平成○年でしたね?」


母 「あ、はい」


裁 「今後のこととか、お子さんと話し合ったことはありますか?」


母 「今後のこと? ああ…そうですね。夏休み中の晩ご飯が…」


裁 「いや、あの、そういうことじゃなくて、家族の今後のことです。」


母 「 … 」


裁 「お子さんが家族のこれからについて、どう考えているかわかりますか?」


母 「…子どもは子どもですから…」


裁 「あのう…両親が離婚して、その後にいまの生活が続いて…そのことについてお子さんはどう感じているんでしょうかねぇ?」


母 「 … 」


裁 「たとえば…お子さんはいまのお母さんとの生活に納得がいっているんでしょうか?」


母 「納得? それは納得しています」





最後の所だけ即答でした。


隣の少年の表情をみると…無表情です。





さらに立ち入った話を聞きたいからと言って、少年を別室に移し、母親から詳しい話を聞きました。


母親は、



自分に今交際相手がいるのは事実である。


自分が夜に帰宅しないことがあるのも事実だが、昼に着替えを取りに帰ったりするので、まったく家を空けていたわけではない。


子どもは、この交際相手とも会っており、3人で一緒に食事したりして関係はとても良好である。


子どもの夜遊びや万引は、やっぱり先輩や友達に引きずられているのだと思う。



という話をしました。






事前の調査官とのカンファレンスでは、


この母親は、離婚したことによって完全に人生をリセットした気になっている


という話になっていました。


そうかもしれない…いろいろ夫との間のトラブルがあって、ようやく離婚によってそれが解決されて…自分の身の回りのこと全部がもとどおりにリセットされたと感じるモノなのかもしれない…子どもにとっても当然生活がリセットされているはずで、自分の生き方に中学生の子どもが疑問をもつはずがない…と思っているのかも???


この心証は、審判で確信になりました。


どうして確信になったかって…その少年だけでなく、わたしも、その母親と話していてむかっ腹が立ったからです!







母親は、自分の問題性を指摘されるのを無意識的に避けてしまうのです。


目の前に突きつけられても、いかに深刻なことか、実感できない。






裁 「どうして、お子さんを別室に待機させて、こうしてお母さんとお話しさせてもらっているのか、わかりませんか?」


母 「ええ…わかりません。」






母親は、自分にとって素晴らしい恋人が居て、離婚前より今の生活の方がずっといいと思っています。


中学生の娘が夜遊びしても…家出しても…それは、友達や先輩といった娘の生活要因の問題であって、自分の生活は、離婚前よりもずっとよくなっている。




実は(というほどじゃないですが)、少年事件を起こした少年のうち離婚家庭の少年はとても多いです。


本当に多いですよ。


離婚イコール子どもの非行ってわけじゃないですが…


実際に会って思ったのは、


離婚で人生リセット気分のスイッチが入っちゃう人、多いんだなぁ!!!


ということでした。









さて、どーしよーと言っていた調査官…


審判直前に出した調査票の意見欄には「在宅試験観察」の意見が書いてありました。







やるじゃないか…


あなたのその「悩み」が、少年にとっての資源になることもある。