Broken Worlds Receiver





日々満ち足りず、それでも日々は事足りている。
自分の部屋が何畳かなんて考えたことはなかったけれど、棚をふたつと2人掛けのソファ、白い円卓、シングルのベッドを置いても物足りないくらいには間が在った。本を読むには些か暗く、温度は一定だが何故か毛布が恋しくなる、そんな部屋。僕の1日は此処で構成され、そして波打ち際に寄せられやがて朽ちる。鳥籠、だなんて月並みでロマンチックな喩えは好まないし使いたくはないけれど、そんなものだ。
淡白に鳴る時計の針の音が言い様も無くあさましく、曖昧な意識が更に錯絡とする朝は狂ったように毎日同じ時間にきっかりと訪れる。学校は?とドアの向こうで声がする。行かない、と答えながら寝間着として使っていたガーゼのシャツを脱いだ。朝だから、動かなくてはならない。クロゼットからざっくりと編まれたニットのオフタートルと細身のレザーパンツを取り出し着替える。朝の意地悪な雰囲気の侭に投げやりに選んでもそれはそれで良かったのだが、生憎、僕は酉年生まれだ。着るものには執着して仕舞う。手早く身に付け、クリスチャンでもないのに黒く塗りつぶしたロザリオを頸に掛けると、母親が出て行ったことを確認してリビングに降りた。
鬼百合の飾られたダイニングキッチンで水をグラスに注ぎ、カウンターテーブル上の籠に山を成している林檎を手に取る。開け放した窓から舞い込む風が、レースのカーテンを寒そうになぶっている。外は寒そうだ。でも外気がひんやりと膚刺す様を想像すると、無性に散歩に出掛けたくなった。自分の部屋にあるものより大きな革のソファに腰掛け、林檎を齧りながら徒然にテレビの電源を付けてみれば天気予報のアナウンサーが此の地域の梅雨入りを告げている。彼女の纏う薄いベージュのセットアップが気に入らなくて直ぐに消した。
「どうした、ヴェニコ」
リモコンを置いて林檎の咀嚼に専念していると、不意に飼い猫であるロシアンブルーのヴェニコが膝の上に乗って来た。白と黒でつくられた部屋に、グレイッシュな深い青がえもいわれずに映えて美しい雌だ。だが名前は「紅子」、我ながら嫌がらせとしか思えない。ヴェニコは短く3度同じ調子で鳴いて、甘えた調子で擦り寄ってくる。エクリュのトップスに彼女の体毛が付くのが嫌で抱き上げて床に下ろすと、いよいよその訴えは五月蝿い迄になった。
「うるさい。ヴェニコ、僕は煩い女が嫌いなんだ」
「にゃ、ん、ん?」
「…なんで君は何時も疑問形で喋るんだよ」
「う、う、う?」
「ご、は、ん?」
「にゃ、う、う?」
「…母さんから貰わなかったのか」
「んー」
嘘だ。こいつは強請るのが病的に巧い。もしかしたら其れは全ての猫に共通なのかも知れないが、残念ながら僕は他の飼い猫を余り目にしたことは無かった。齧り掛けの林檎を適当にテーブルに放ると、カウンターテーブル下の彼女の食卓に箱からキャットフードを注いでやる。勿論量は少なめにして。
「太るなよ。デブは嫌いだから」
人となりがきついことは自覚している。其の為欠席がちな学校でも孤立している…と云うよりは浮いていた。それなりに頭の良い学校、教室には秀才のグループ、運動の出来るやかましいグループ、オタクのグループ、地味なグループ…と云った具合に綺麗に派閥が出来ていて、其の何れにも属さない僕は或る意味調和を乱す迷惑な存在なのだ。別に慈善でもないが、だったら気ままに休んだ方が双方の為である。体質的に学校、と云うものがどうも合わない。
ソファに戻り残りの林檎を齧り尽くすと、グラスを空けて片付けをした。キッチンには充分過ぎる程に道具が揃っているが、食べ物のにおいはしない。見せ掛けの居住空間、別に寂しくない。開いていた窓を閉めると、ヴェニコが餌を頬張る小気味良い音を背に廊下に出た。シューズクロゼットからオールレザーのブーツを取り出し履いて、姿見を通す。母親譲りの黒髪はもう腰の辺り迄伸びていて、後ろ姿なんてきっと母親そっくりだ。男らしくない、だとかそんなことを気にするつもりはないが、特に伸ばしている意味もなかった。
玄関の扉を開くと、空は何処か感傷めいた灰色で、電線の黒が一番合う色合いだった。予想通りに肌寒いが上着を羽織りに戻るのが億劫で、そのまま足を歩ませる。カーテンの様に風に煽られた髪が肩の部分だけ開いたニットにくすぐったく、乱れた髪を後ろに流して仕舞うといよいよ世界が自分のものになった。何も考えない、ぼんやりと歩いて世界に自分だけと云う架空の状況を作り出すのだ。人間は居ない、でも鴉や野良猫は居てもいいし、信号や踏切は何食わぬ顔で動く。自分だけ生き残って仕舞ったかのような孤独感とばつの悪さと、酷い解放感。喧騒なんて聞こえない。此処はフィクションだ。
始めは、携帯音楽プレイヤーを供にしていたものだが、或る日偶然充電切れの状態だったので仕方無しに耳栓無しで歩いてみたのだが、此れが思いもがけず良かった。反って孤独感が増すのだ。橋をひとつ渡り、通っている学校の前を通り過ぎ、夜に賑わうアルコールの匂いのする界隈を抜ける。途中自販機でペットボトルのアイスティーを買い、肩に下げていた旧いレザーのドクターズバッグに放り込み、再び歩き出した。もう通学通勤の気配は無い。もう暫く歩けば、案の定ヒールブーツの足が痛んだので、近くに見えた図書館に入った。こんなことなら借りていた本を持って来れば良かったとどうにもならない後悔をしつつも消毒用のアルコールスプレーを手に馴染ませて書架に足を踏み入れる。
開館したばかりで、しかも平日なのに意外にも人が多い。自分だけの世界でも一応は姿は見えているので、内心落胆しつつも何時も読んでいる作家の欄の前にしゃがみ込む。運良く新刊を見付け、それともう1冊読み返したいタイトルを棚から抜いた。もう1人好きな作家の頭文字の棚に移動するが、こちらは新刊も読み返す気もなかった。閲覧コーナーのソファも大きな長机もまばらに埋まっている。此処で読むのを諦めて空色のカードを取り出すとカウンターに向かった。
カードはお持ちですか。はい。3冊お手元に有りますね、期限は未だですがお早めにご返却下さい。はい。2冊で宜しいですか。はい。来月の朔日迄のご利用になります、有り難う御座いました。はい。
スキャンを終えた本を鞄に放り込んで、図書館を後にする。そろそろセルフで借りられるような機械を導入すれば良いのに。此の最新機器溢れる時代は嫌いだが、機械そのものは淡白で好きだ。アイスティーをひとくち飲んで、時計を見ると午後10時過ぎ。未だ早いが、帰路で時間を潰そう。来た道と違う道を選び、歩き出した。何処もかしこも、市の持ち物である施設や歩道脇には躑躅が植えられており、其の目に痛い桃色が自然界には有り得ないような、人工的な感じがしてなんだか好ましい。狭く入り組んだ路地を感覚的に進むと、30分程で橋の前。来た橋とは違うが、辿り着く場所は同じだ。渡って、傍に有る大きな公園に入った。
遊具は少なく、広大な芝生の彼方此方に点在している屋根付きのテーブルと長椅子の休憩スペースの方が多い。春は花壇にチューリップが咲いているが、もう春でもないので赤茶けた土が露出しているだけ。無意味に広い駐車場を挟んだ向こう側にはドッグランがあり、それらを囲うようにしてランニングコースが整えられていた。土手には水の事故を未然に防ぐようにと警告する看板が物寂しく立っている。此処には其れ程人の姿は無い。屋根をひとつ選んで色褪せた木の長椅子に腰掛けて、読み返したい方の本とペットボトルを取り出した。たいぶ温くなったアイスティーと呼べるのか解らないような代物に口を付け、頁をはぐる。数行読んだところで突如テーブルの対岸に、にゅ、っと音を立てそうに現れたのは、ノアの箱船に乗ったとされる優美な犬の顔だった。
「…アフガンハウンド?」
長く柔らかそう毛は灰かぶりのセピア。大きな眼には芳醇な涙をたたえたオニキス。利発そうな鼻梁は人間よりも美形で、犬は其の長細い顔をテーブルに乗せるとじっ、とこちらを見詰めて来る。
「えーと…何か用ですか」
犬に話掛けても無駄なことくらいは解っているが、内心かなり驚いたので心臓を落ち着ける意味合いでもあった。ドッグランから逃げて来たのだろう、リードは付いていない。雄か雌か、そんなことを考えながら睨めっこをしていると、軽快な足音が近付いて来るのが解ったので何事かと首を横に捻ると、こちらへ駆けて来た男が屋根の日陰に入り止まった。
「…ごめん、こいつ、俺の犬…」
息を切らせた男は同じ歳頃だろうか、長身で眼鏡を掛けている。深いブラウンの髪とアンバーアイは日本人の其れとは掛け離れており、顔立ちもはっきりとしていているが西洋とも東洋とも云い難い。同じ混血だろうか、とぼんやり思っていると男は何故か隣に腰掛けて来た。
「…これなに」
「…温くなったアイスティー」
男が指すのは先程取り出したペットボトル。
「ちょっとくれないか?だいぶ走った、から…」
「飲み掛けで良ければ全部あげるよ」
男は礼を言うと一気にペットボトルを空ける。半ば呆気に取られていると、彼は手持ちのハンドタオルで汗を拭い、面白そうにこちらを見て来るアフガンハウンドを睨み付けた。
「こら信濃!なんでお前はいっつも俺から逃げるんだよ!そんなに俺が嫌か」
信濃、と呼ばれた犬は反省した様子もなく、反って元気に返事をする。男は口惜しそうに項垂れると、そのまま脱力したようにテーブルに突っ伏した。犬が椅子の上に座り楽しそうに尻尾を振る様子から、此の男が完全に目上として扱われていないことが窺える。
「信濃…長野?林檎?」
「…空母。じーさんが好きなんだ。因みに雌…ってあんた男か」
男は顔だけこちらに向けると、僕の顔をじっ、と見上げて来た。先程の信濃と同じである。男が指すのは、此の顔と髪に些かの不自然さをもたらす声だろう。男にしては高いが、明らかに女の其れではない。不意に男は上体を起こすと、顔を覗き込んで来た。眼鏡からして視力が良くないのは解るが、近過ぎやしないだろうか。
「でもあんたの顔…どっかで…確か女だったような」
「…もしかして所謂ゴシックロリータファッションで大きなベースケースを背負って闊歩している痩せた女の子じゃない?」
「おお、そうだったな」
「…其れ、双子の姉」
姉(と意識したことは無いが)は此の街では浮くで有ろう服を好む。ゴシック好きな自分が言えたことでは無いが、寧ろ其れ以外の服を着ている彼女を目にしたことは無い。彼女もまた学校に行かないことが多いのでふらふらとしていれば直ぐに解る。明確なポリシーを持っていることは好ましいが自分以上に性格がきつく厄介なので教師ですらネグレクト。今日は学校に行ったようなのだが気が向いた云々よりは単位の問題だろう。
「やけにベースの巧い女だと思って覚えてたんだ…双子か。へえ、やっぱそっくりなんだな」
「ライヴ、みたの?」
「対バンでな…あんたはなんかやってねーの?」
「…昔ベースやってたけど、双子でベースってどうにもなんないから、」
やめた。は省略。思えば彼女のベースが格好良かったから真似のように始めた程度、どちらにせよ長続きしなかっただろう。男は勿体無い、と呟くと椅子に座り直して改まったように背筋を伸ばすと空気を口内に孕むようにして笑った。
「俺、ケイ。難しい方のかおるって書いてケイな。あんたは?」
「玻璃」
「ハリ?ニードルか?」
「ガラスの玻璃。因みに姉は翠銅」
「スイドウ?水の道?」
「鉱石だよ。翡翠のみどりに金属の銅」
「ふーん、変わってんな」
「ものずきなんだ」
そう、モノが好き。父親は理科少年だったらしく、しきりに鉱物や虫、薬品漬けの屍骸の標本や年期ものプレパラートだとかビーカー、硝子ペンや硝子匣の類いを無意味に蒐集する癖があった。最近はなんとかネーム、だとか子供の気持ちを考えろ、だとか言われるが、僕も彼女も自分の名前が気に入っている。きっと父親譲りで無意識に無機質を好むのだろう。
こうして自分だけの世界、をぶち壊しにされた訳だけれど、余り悪い気はしなかった。男、馨は何かの呪文の様に僕の名前を何度も唱えながら眼鏡を外すと、レンズ部分を羽織っていたパーカーの袖で乱暴に拭う。其の精悍な顔立ちは大型の猟犬のようで、きっと鼻が利くんだろうな、なんて思う。
「玻璃、お前幾つ?」
あんた、からお前、になった。
「17。今年18になる予定」
「お、同い年じゃん。何処通ってんの?」
僕は此の市では有名な進学校の名を告げた。
「へー…アタマいいんだな」
そして馨は僕が苦手に思っている、制服の着崩し方が不良としか言い様の無い男子校の名を、ぞんざいに口にすると、僕の顔を見て恥かしそうに頭を掻く。短い髪が冷えた風にそよぐと、濃いブラウンが僕の好きな紅茶へと色を変えた。
「今日、学校は?」
「…学校、好きじゃないから。君は?」
「君じゃなくて馨。俺は寝坊したからもういいやって」
第一印象からそう思っていたが、結構気が強いらしい。不良だ、なんて口に出したらお互い様だろ、と返された。暫く他愛も無い話をした後、馨は僕の手元にあった本を何の許可もなく手にすると、頁をぱらぱらと捲った。まるで風にそうされているみたいに綺麗に等間隔に紙がゆるい弧を描く様がなんだか手品を見ているようで、思わず呼吸を止めて仕舞う。そして其の指にオーヴを象ったリングが嵌められているのが目に入ると、一気に好感が湧いて来た。
「これ、面白いのか?」
「僕は好きだけれど…本、読まないの?」
「それなりにはな。でも年齢層が低い本ばかりらしい…って指摘されるまで解んない辺り駄目なんだろうな」
馨は困ったように笑うと、本を閉じて胸の前でひらひらと泳がせる。
「これ、貸してくんね?」
「え、図書館のなんだけど」
「期限いつまで?」
「来月の朔日迄のご利用になります」
先程受付係に言われた言葉をそっくりそのまま声に出すと、馨は一瞬噴き出した。
「その事務的な声、いいね、似合ってる」
「…どうも」
「じゃあ其れ迄に返すよ、玻璃に」
図書館の返却ボックスに入れれば良いのに、なんて言えなかったのは何故だろう。馨は本で凝ってもいないであろう肩を軽く叩くと、立ち上がり日陰でのんびりと眠っていた信濃の首にリードを取り付けた。
「何時ヒマ?」
信濃を立ち上がらせながら、横顔が言う。
「流石に2週間も学校休まないけれど…就職組だから確実に土日は暇」
「じゃあ来週の月曜、休め。体育祭の代休なんだ」
「理不尽」
「俺はマイペースが売りなの!じゃあな、玻璃」
そう言って手を振ると、馨は信濃を伴って駆けて行って仕舞った。残された僕は手を振る為に中途半端に上げた手をゆっくりと下ろすと、空になったペットボトルを見詰めて溜め息を吐く。僕だって慣れない長話に喉が乾いた。帰りに自販機で何か買おう、そう決めて軽くなった其れの口を人指し指と中指で挟んで席を立つ。再び外界をシャットアウトして馨の行った方向とは逆の方角へと歩き出せば、刺すように冷たかった風も午後の色を帯びて幾分かやわらかくなって頬を包んだ。













わたし、今、初めて恐ろしいくらいに本気です。
わたしは一応戸籍上女ですから、ヒト科のメスですから、こう云ったヒステリー紛いの熱の上下は幾度と無く体験して来た訳でして、其の都度やる気を出したり陰鬱に沈んだりして来たのです。恐らく、人並みには。

雪の如き発火で、鬱積して身体がすべて覆われて仕舞う前に冷たい熱に堪えきれず自ら裸の王様だったのですが、あぁ、悟りが見える、かも…なんてね。

今わたしを突き動かすものは、今時の円周率です。ほぼ、3。ほぼ、不快感。
だけれど今、覚えてない小数点第2位以下が見える気がする。

あぁ、また訳の解らないことをほざいているだとか思わないでね、思ってもいいけれどね。

今迄はπだったのよ。もうπを教わって仕舞うと3.云々に戻りたくないでしょ?
でもね、それだとロマンチックじゃないと思った。エレガンスの欠片も無いと思ったのよ。

数式はエレガントでなければならない。と、顔は出て来るけど名前も8割方出てるけどまぁいいや、って感じの人が言った。
わたしなりのエレガントって、小数点以下の整然としたごちゃごちゃなの。

πのときは、妙にストイックだった。イミテーションは好きだけれどね、其れはわたしの嫌いな部類の、なんて言うの、ラメラメしてるキラキラなの。
そんなんじゃあ、本気になれないでしょ?わたしは嫌だわ。

だからね、今、ほぼ3、迄ほつれさせてるのよ。そうしたらね、きっと、小数点以下のきちんと整列したごちゃごちゃが出て来るの。

わたしはそのごちゃごちゃした数字を糸にしてドレスをつくりたい。

夢みがちな少女だって思われるかもしれない。
でも、夢みがち、じゃ駄目になったの。夢みてなきゃいけなくなったの。
もう18になるのよ、わたし。泣きたいけど18になっちゃうの。
なんとなく大人になんてなりたくないよ。

びりびりびーっ、破って引き裂いてきっかりと大人になりたい。
アリスがきっかりと7歳半だったみたいに、きっかり少女だったみたいに、きっかりと大人になりたい。

大人になれてなかった。わたしは、大人になりきれない子供を演じていい気になってるだけのもやもやなモラトリアム人間。

もう少しで、コルセットを紐解いて、引き裂いて、つぎはぎで新しいコルセットを縫える気がするのよ。
わたしはコルセットからの解放は望まない。美しい括れと、革命みたいに広がったスカートの魅せる美しさは、やっぱりわたしの求める美しさだから。
ジーンズ履いて日焼けした、機能的で爽やかな開拓者になんてなりたくない。
神と金の内包された鉱石のような嵐ではっと目覚めさせて余韻で再び眠りたいの。

ストイックに才能なんてない。才能が無い者には、やはり、才能が無い。と、才能が無い者が崇める偶像。
見ていてあさましいのは、嫌だから。

わたしに才能があるかなんてわたしにしか解らないから、今のわたしには解らないから、だから、やれるところまでやるんです。

厭世はそれからするから。
最大限の余生を生きなくては、いけないと、思ったんです。


誰かひとりでいい、はっとさせてなみだを零れさせたいの。

そういう生き方をしたい。

わたし、はっとしてなみだを零したの。まるで果てしなく巨大な建造物を下から見上げたときみたいに、静かに重たく冷たいなにかが蒼窮を割った。

ずっ、とあふれた。
柱が立ったの。

ロマンチックだと、無骨な柱をみて思った。
だから頑張る。わたしの為に。わたしだけのために。



『恋、と書いたら、あと、書けなくなった』
のは、
『僕は、その日のその時の、そのひとの瞳に、くるしい恋をしちゃったのです』
から。
だって、
『人間は恋と革命のために生れて来たのだ』
から。

『どうせほろびるものなら、思い切って華麗にほろびたい』
と思うようになったのは、
『人は、思想だけでは、死ねるものでは無いんですから』
と言うことに気付いたから。

(『』内、太宰治)

わたしは裸足でなんか進まない。何時も華奢なヒール生やしてオブジェクトになる。


でも言っておく、
『小説を読んで襟を正すなんて、狂人の所作である』
と。

此処がルビコンです。




Memoraphilia

melche shutilforc様で予約していたシャポ・ドゥ・パイユが届きました。
ボルドーのおリボンに惹かれて予約しましたがエクリュがベースなので手持ちの服とどう併せるか…それにわたしにはちょっと可愛かったかな。
でもこうやって飾るだけでも良いの。だって可愛いから。

今日は、体育祭だったらしいですね。らしい、なんて言いますが勿論知っていました、が、休むよね。ずるやすみ、のつもりでしたが雨を、低気圧を感じ取ったわたしの頭は朝からとんでもなく痛んでずっと眠っていました。今も痛い。
別に、周りを気にする程子供でも大人でもありません。嫌なだけ。其れ以上の理由なんてない。
高校最後?そうですよね、だったら頑張りたいひとだけ頑張って下さい。此処でわざわざ説得するなんて野暮です。役立たずは切り捨てて気持ち新たに頑張って下さいー、そうとしか思えないわたしは嫌味であると此れでも重々承知しているんです。
だから、わたしのことなんてわたしだけ知っていればいいんです。寂しくなんてないよ。

でも副団長のK氏の応援は見たかったな、なんて。身勝手な後悔。

火事の夢をみたのです。
家がお庭から燃えていって、ああ、危ないな、なんて思いつつわたしは自分の部屋に駆け込んで御洋服を袋に詰め込んで…何れだけ服にしか興味がないんだよ、と起きて呆れました。トルソからプティフールドレスを脱がすのには難儀したわ。あ、猫のちぃちゃんは初めに逃がしました。
火事の夢は…何を意味するのでしたっけ。ひとを殺す夢はこの頃さっぱりみなくなりました。

あと2度寝でK氏と海に行って持って来たお菓子に難癖を付け合う夢をみました。どれだけK氏が好きなんだ。多分、いちばんすきです。ああ、笑えてきた。
海?でも地面はセピア色の煉瓦で扉が在った…

火事も海も似たような意味だった、と、思う。


Dのライヴのチケット、当選しました。
整理番号は受け取ったらわかるのかな、月曜は代休なので図書館ついでにローソンに寄ろう。


前の日記を隠したいと云う思惑有って、此れを書きました。
皆様、お言葉有り難う御座いました。ほんとうに涙ぐむってこういうことね。
お返事は相変わらずのかたつむり便で。


幸福というものは、悲哀の川の底に沈んで、幽かに光っている砂金のようなものではなかろうか。
(太宰治/斜陽)







※暗い上に自分語りの為、苦手な方は見ないで下さい。
苦情は受け付けません。

ちょっと、ほら、あれなんです。生理前だからなのきっと。
ちょっと吐かせて下さい。






家族に恵まれている人が妬ましくて、きちんと両親がいる人が羨ましくて、
そんな自分が一番気持ち悪い。

昔から夫婦喧嘩が絶えなくて、わたしは、自分云々よりも弟が傷付くのが嫌で、早くから家庭を諦めて弟を守るように暮らして来た。
家の壁はポスターやら額縁で隠してあるけれど穴だらけ。わたしの身体も、消えない傷があちらこちら。
でも弟だけは。弟だけはと、弟だけは。

多分、記憶に強く残っている夫婦喧嘩のとき、小さな小さな弟が泣き叫んでいたことが、小さな体で二人の身体に橋を渡すようにしがみついていたことが、頭から離れないからだと思う。
自分云々を考えたことは、考えたら無い。

当然の様に夫婦が会わなくなった。
父がいれば母がいない。母がいれば父がいない。
二人は各々店を持つようになり、とうとうどちらも帰って来なくなった。

私が小学校から帰れば、何時もカウンターにお金が、夕食代が置いてあった。
わたしは食べることに昔から執着していなかったから別にどうでも良かったけれど、弟にコンビニ弁当の類いは食べさせたく無かったから料理を始めた。小学校3年生だったと思う。

初めは料理なんて言えなかった。ご飯は炊けなかったから(先ず家にお米がない)、サトウのごはんだったし、●●の素、みたいな食材と合わせて炒めるだけみたいなのばかりだった。
でも弟は何も言わずに食べてくれたから、もっと栄養のあるものを沢山食べさせようときちんとした料理を作れるようになるために頑張ってみた。

我が家は蛇舌だからか味の感覚は良く解る人間が多いので、一度食べれば直ぐに作れた。だから余り苦労はしなかったと思う。

母は弟の好きな食べ物を驚く程に知らない。でもわたしは知っている。優越感。
弟は野菜が嫌いだから、そこは大変だったかな。一口だけでも食べなさい、って口がすっぱくなるくらいに言った。

別に寂しく無かった。弟がいたし、K氏がいて、男ばかりだったけれど友人もいた。

相変わらずお金を置きにくるばかりだったけれど、母が家に少しいるようになった。

父が失踪した。
お正月だったと思う。
だから未だにお正月は嫌い。

その頃から母が目に見えておかしくなった。愛猫のちぃちゃんを拾ってきたときくらいだったと思う。

物が飛んでくる。物がぶちまけられる。物で殴られる。わたしだけ。
弟には手を出さなかった。わたしだけ。

女のヒステリーというもの。仕方がない。
何時もそう思ってぼんやりとしていた。
弟には見せたく無かったから、わたしは貯めたお小遣いで弟に何時もゲームを買い与えて「2階に言ってな、後で対戦しよう」だなんて言って逃がした。

母子で寝るようになった。母のベッドは広い。弟は仕事から帰ってきた母に抱かれて眠る。
わたしは毎日泣き声を堪えながら、壁に張り付くようにして寝た。
ベッドと壁との僅かな隙間の、独特な匂い。悲しくなるから嫌い。

弟が父に連れて行かれた。
ある日、母親がいない時間…休日の昼だったかに、父が急に帰宅した。
弟は喜んだ。わたしは警戒していた。そして父は「長野(父の実家)に遊びに行こう」と。弟は喜んだ。「猫も連れていこう」と父は言った。おかしいと思ってわたしは咄嗟に父から離れた。
わたしは「ママには言わないの?」と尋ねた。そしたら「もういいんだよ」。

なんでだろう。ママが可哀想になった。
行きたくないと喚いた。そして行くなら行く前にママに電話しろと叫んだ。
此処で行ったら母親がもっとおかしくなる。そう思った。
結局電話はせずにふたりは消えた。
わたしは小学校3年生のときから携帯を持たされていたので、恐る恐る母に電話して其の胸を伝えた。
今でも覚えてる。電話越しの母の絶叫。

またおかしくなった。
霧吹きとかで殴られるくらいならまだあった。プラスチックが、瓶になった。
ビールの、茶色いの。未だにあれが怖い。

わたしが、今でも忘れられないのは、未だにフラッシュバックして固まってしまう記憶は、

母に包丁を向けられて「殺してやる」って言われたこと。
一度じゃない。何度もあった。当時はなんとも思わなかった。母親という生き物は不定期に癇癪を起こし暴れる生き物だから仕方ないんだって。

なんでかな、わたしは何時も「殺せばいいよ」って言ってた。
癇癪が治まると母は決まって泣き崩れる。ほんのちょっとのやり返しのつもりで、わたしは彼女を放って2階に逃げた。

弟は暫くして帰ってきた。「楽しかった」って。それから父は帰ることはなかった。
男はそういう生き物だと諦めた。

母は弟にべったりで、でもわたしは羨ましいなんて思っていなかった。
と思ったのに、
ある日弟と些細なことで喧嘩したとき、何かが爆発した。

何も覚えていない。
気が付いたら、わたしはバットを片手に。弟は床に転がって泣き叫んでいた。
わたしがやった。
恐ろしくて、呆然としていると弟が咄嗟に電話に飛び付いた。
わたしが怒られる。わたしがママに殴られる。

わたしは、弟から受話器を取り上げると、其の小さな頭を壁に殴り付けた。
何度も、何度も。

死ねって何回も言った。

母と同じことをしている自分が、気持ち悪かった。
あぁ、遺伝するんだなって、ぼんやり思っていた。

だからわたしは子供を生まない。
本当にあれは、制御出来ない。

もう2度としない。弟は許してくれた。
だから、弟だけは。


友人の誰にもこういうことは言わなかった。普通の子でいたかった。

受験して、中学に上がって、いよいよわたしの頭はおかしくなった。

刃物を持ち歩き、時々神経質が行き過ぎて爆発する。内側で。

母に男が出来た。安定する。
男と揉めた。暴力。
男が出来た。安定。
男と揉めた。暴力。

繰り返し。

摂食障害になった。
ボーダーだと言われた。
眠れなくなった。
記憶が飛ぶようになった。
学校に行けなくなった。
薬を貰った。
ODをするようになった。
薬を取り上げられた。
きるようになった。

だから、わたしに色々あったとき、それは恋愛のことだけじゃない。

病院に通うようになってから、また母はおかしくなった。わたしがおかしいと罵り、殴り、わたしは黙って泣いた。

ntk氏たちが家に来て、わたしは家事をしなくても良くなった。
人が同居するようになってから、母は母らしく振る舞おうと普通になった。

落ち着いていた。
みるみる体重が落ちた。
楽しかった。

わたしはちょっと可笑しかった。
だから、あんなに元彼にしがみついたんだと思う。きっと遺伝だ。

ntk氏たちが帰ってからはまた色々あった。ヒステリーが再発したり病院を変えたり、止めさせられたり。

今はまた母に男がいるから落ち着いてる。どうかこのまま。


わたしは、恋愛云々のこと以外は、誰にも言えなかった。誰にも言えなかったんだよ。言いたくなかった。
だって仕方ないもん。

今の世の中、珍しくないし。自分特別じゃないし。

リコンとか、カタオヤとか、ボウリョクとか、もう世間からしてみたらフツウだし。

弱音なんて吐いたら気持ち悪いじゃん。

自由で気楽で楽しい。そう周りに言って平気だって装った。
本当はずっと羨ましかった。

両親がいて、ご飯一緒に食べられなくても、両親がいて。
瓶で殴られたことなくて、包丁突き付けられたことなんて無くて。
羨ましい。そう思う自分が嫌だ。嫌だ。言えなかった。

わたしはおかしくない。


わたしは正気だった。
ずっとずっと正気だった。
おかしくなりそうなくらいに正気だった。
何時も、どんなときだってわたしは正気だった。
わたしは正気だ。誰よりも正気だ。



誰にも言えなかったんだ。


Memoraphilia-CA3H0186.jpg


アンドレイのお陰でゴルチェが再び気になり出し、ニューローズが欲しい欲しいと呟き(喚き)ながら母親からゴルチェの財布を(無理矢理)譲り受けました。
母親はゴルチェが好きなんですよね。でも扱いが雑過ぎて可哀想なことになってる。
ので、わたしが。


Dのツアーが決定しましたね!
「鳥籠御殿」…タイトルからしてわたしの心を揺さぶりますね。でも限定シングルって何事?

新潟は8月10日、勿論参戦します。ツネちゃんに会える!同じ空気をいやんあはん。すきよ、つねひとすきよ!!
(最近アンドレイに浮気してるけど)
最後の夏休みですから、目一杯だらけるの。何時ものスタンスは崩さない。
今から何を着て行くか迷います。動きやすさ?そんなのしらない(笑)


そう、そしてバイト即ちお給料が入るので、久々にロリィタ服を買おうと思っているのですが中々…

と葛藤しておりましたら!
Juliette様の絵画プリントが再販しているでは無いですか!欲しい!

ただね…ウエストがね…サイズ1で70センチですってよ。サイズ2とかアンドレイか。素晴らしいなアンドレイ。
今Juliette様はお直し1箇所無料キャンペーン中らしいのですが…そんなことしていたらライヴに間に合わないじゃない!
注文時にお直しをお願い出来ないのかしらん。

でもワンピースだとシンプル過ぎて物足りない…でもスカートだとウエスト部分が気に入らない。ブラウスを入れるのか出すのか…私は入れたい人間なのですが、あの形だとなぁ…制服のスカートを折ってるみたいになりそう…

うーん…受注受付期限の寸前迄考えてみようかしらん。
でもそうしたら順次発送だからライヴに…あぁ。


最近のメアリがメアリらしくなくてうーん…あまりかわいくない…。コサージュ、欲しかったけれどラメ、って書いてあって少し…きらきらは嫌い。
再販に期待しましょうかね。アポロニアが欲しかった…


さて、明日は久々に土曜学校に行って被服室に隠ります。
昨日爪を貫通し深々と、それこそ指が貫通するくらいにミシンで指をぶすってやったのでちょっと怖い…