今日…と言いますか、もう日付も変わるので昨日でも良いのですが、5者面談、をして来ました。
進路。就職組はもうそろそろ決めないといけないので。
まぁ、余り理解しては貰えなかった…と言いますか、ファッションに関心の無い人間って嫌。通じない。
ので、諦めました。話すのは。
別に、在学中に決めなくたって良いのだもの。先急いでないから。その内死ぬから。
やれるところまでやってから泣く。それで、良いんじゃないかな。
此処迄前向きになれたことが奇跡のようなものなので、良いんです。

でもまさか担任に迄「女の子の独り暮らしは心配だから出来れば…」って言われるとは思わなんだ。
え、今迄ずっと弟とふたりぐらし状態でしたけど何か?

病院の先生に母親とは離れなさい、って言われたのに、出鼻を挫かれた。
あのひとは、あの女は動物みたいな女なので、怖いんです。「子供は一片残さず母親の所有物」主義なので、猫や兎の母親みたいに子供を食い殺しかねない。
殺され掛けたけど、ね(笑)


友達が沢山いるひとは嫌いです。怖いです。生肉が見えた気分になります。

でも、一番嫌いなのは、
ひとりがかっこいい、と思っているひとです。
それは、ひとりでも平気、とは違います。
言いようのないおぞましさを感じます。陰部を鼻先に突き出された気分になります。

群れるひとは嫌いです。群れるひとはヌーです。水牛です。
でも、太宰治も言いましたが、「気取るという事は、上品という事と、ぜんぜんむかんけなあさましい虚勢」なのです。
それは、乞食です。厚かましいです。

群れる水牛を見て、「どうして群れるの?」と疑問に思うのは良いのですが、「ひとりのほうがかっこいいじゃん」だと、それは、気取りです。

女の子は、何時もひとりです。だってひとりでなんとか出来ます。アリスだってひとりです。
女の子はかわいいです。かっちょいいです。だから、気取る必要は無いと思うのです。
男子も然り、なのですが、男子は女子以上に群れますね。本能ですね。
本能から外れたひとが好きです。


ああ、何が言いたいのやら。

思うのは、身近なひとにこそ何も言えない、と云うことです。
なんだか、もう面倒で、これは嫌だとか止めてとか言えなくなって笑ってるしか出来ないわたしが一番気持ち悪い。

ボイスで呟きましたが、友達いないんです。
いた、んです。

でもね、みんな裏切るから、いらないんです。
みんな、仲良かったひとに限って、わたしが「なにもしていない」のに離れるんです。
時にはわたしに対して勝手なイメージを作って押し付けて理解出来ない、と。
だから、それはあなたの中のフィクションであって、わたしじゃないんですー…
ってやりとり、もう飽きました。

離れるくらいなら近付かないで、だなんて。人間関係は近付いてからじゃないとどうなるか解らない。だけどわたしを虚構世界の住人に仕立て上げるのは止めて欲しい。

だって、誰にも解らないもの。
どうせ解らないもの。
こんなわたしを作ったのは、フィクション要素を構成したのは、紛れもなく周りのあなたたちだと云うことを忘れないで欲しい。今からでもいい、覚えて、


欲しかった、な。
もう届かない。








翌朝。今日は2単位の科目が有るので学校へ行くことにする。クロゼット内に私服と分けて掛けてある制服を陰鬱な心地で身に纏う僕は囚人の心地…なんて言ってみても刑務所に放り込まれたことは無いし、其の予定もないので比喩としては不出来なのだろうが、とにかくそんな心地なのだ。延々と穴を掘り、埋めさせられることに何の疑問も持たない人達を、翠銅はナンセンスだと、ドレスに着られていると言った。確かに賛同出来る部分もあるが、それなら狂って仕舞える正常な僕たちは一体どうしたら巧く生きてゆけるのだろう。
4期生の学年色である臙脂のネクタイを締め、ブレザーを羽織ると少し暑い。夏服への移行期間は何時迄だったか、鞄を引っくり返せば其の旨に付いての配布プリントが出て来るのだろうが、面倒と云う気持ちが勝って諦める。今年も異装届けを出そう、とひとり呟きながら廊下に出た。部屋に引き返したいと云う欲求を何処か遠くに押しやって階段を下り、歯を磨こうと入った1階の脱衣所に、下着姿の翠銅の姿があった。ひもじい脚が踏み締めるのは体脂肪率迄叩き出せるヘルスメーター。食い入るかの様にじっと爪先の辺りを見詰める彼女は僕の姿に気が付くと、此の世の終わりだ、と恐怖に叫び回る3秒前の表情をゆっくりこちらに向けた。
「ハリ、どうしよ、200グラム増えてる」
彼女は体重に対して恐ろしい程の執着を見せる。レディに対して云々、だなんて初々しい間柄でも無いので彼女が忌々しげに睨み付けるデジタルの画面を覗き込めば、其処には小学生としか言えない値が示されていた。摂食障害、だなんて云う更年期障害と並ぶのではないかと思われる程にTVで扱われているでろう病名が、やけに大きくゴシック体で脳裏に浮かぶ。
「林檎食べたからかな」
不安そうな眼差しの割りには無表情な声が零れた。僕はかなしくなって床に脱ぎ捨てられた黒のペチコートワンピースを拾って貧弱な身体の前に差し出し手渡すと、実際に小学5年生で身体の成長を終えたちいさな半身を抱き上げて電気椅子から下ろしてやった。
「きっと、ラヴレターなんかで沸かしたミルクのせいだよ」
「…じゃあ、6年3組14番の倉部亜弥のせい?」
「ラヴレターなんて貰っちゃう僕のせい」
言うと、翠銅はちょっと笑った。そしてふたり並んで歯磨きを始める。洗面台の鏡に映る同じ顔が同じそっくりそのままの動きでブラシを動かす様は、此の世のどんな奇跡よりも素敵な気がした。
「あのさ」
「んー?」
「制服移行期間って何時迄?」
「昨日」
「うわ、もう着ちゃった」
ひとつのコップを使い回して口を濯ぐ。冷たい水で顔を洗っていると、乾燥機から適当に引っ張り出したシャツに袖を通した翠銅が僕の上着のポケットに手を差し入れて来たので驚いて顔を上げる。顔面に新しいタオルが飛んで来たので其れを受け取り水滴を拭うと、タオルの雲越しに僕のヘアコームで長い髪を解いている翠銅がいた。
「借してって言えば出したのに」
「お肌に費やす時間を邪魔したら駄目だもの」
「別にそう言う意味でやってるんじゃないって」
嫌味ね、と呟いた彼女はコームを突き返すと、制服のジャンパースカートを脚から通す。女子の制服は此のジャンパースカートかスカートのどちらかを選ぶことが出来るのだが、翠銅の様にハイウエスト切り替えの其れを選ぶ生徒は殆どいない。女子の間ではダサい、だなんて評価されているが、レトロクラシカルなデザインのそれは翠銅に良く似合った。スカートの方よりも大きなプリーツの裾からペチコートとドロワーズを覗かせてひらひらと歩く様はとびきり可愛らしく、真似したくなる気持ちも良く解るが、生憎そんな芸当が出来るのは彼女だけ。同じ様に着こなしてみようとする下級生が改めて翠銅の姿を目にして諦めの表情を浮かべているのを何度も見た。
「母さんは?」
「知らない。もう行ったんじゃない?カウンターに1000円ずつ置いてあった」
1000円ずつ、と云うことは夕食代も込みである。
「あ、今日バンドあるからご飯、食べてていいよ」
「ん。スタジオ行くの?」
「うん、ついでに次の主催の話」
彼女のやっているバンドは結構な人気があり、其れは彼女自身の人気に依るものが大きいということを、僕は他のメンバーに聴いたことが有る。其れに比べて僕にはたいした趣味も特技も無い。センスの塊の姉に、其の類いを子宮のなかで全て持って行かれた様に思われる。
「えっと、ケイだっけ?其の人のとこもまた出るんじゃない?」
「ふーん」
「あら、興味なさそう」
「僕には関係無いと思う」
「淡白。蛋白質」
本当のところは、少しだけ興味が有った。だが、たかが1度会っただけで親しくなったつもりは無いし、あちらも単なる偶然で顔見知りになった程度の奴になど、特に思い入れることも無いだろう。もしかしたら顔を覚えていないかも知れない、と思い、そうであるようにと期待してみたものの、馨の顔はくっきりと脳裏に焼き付いていた。変なやつ、と心の中で彼と僕、ふたりに宛てた。
疑問形で鳴くヴェニコに見送られ、着替えとメイクを終えた翠銅を伴って家を出ると、昨日の曇天を引き裂いてエコノミー症候群から脱した青空が健康的にきらめいていた。小さな身体に不釣り合いなベースのソフトケースを背負った翠銅が慌てた様にフリル過多の黒い日傘を差す。
「最悪。暑いし」
そうごちる彼女も冬服の上着を羽織っていた。厚底シューズで背が伸びても僕には及ばない。肩に掛けた何時ものテディベアとアンティークドール柄のバッグに加え、手提げにしているのは黒いトランク。恐らくエフェクターやシールドやらの機材が入っているのだろう。本当はベースを持ってやりたいが、周りに弾けると思われたら癪なのでトランクを軽くひったくる様にして預かると、ふたり並んで歩き出した。
「ねえハリ、給料日来たらお買い物いこ」
「いいよ。あ、今日は僕か」
「そう言えばそうね。無理しちゃ嫌よ」
「無理は嫌いだからする前に逃げるよ」
笑い合って同時に止まる赤信号。青で踏み出す足も同じ左。まばらに群れを成し擦れ違う他校の制服、運動の為なのか環境に配慮してなのかマウンテンバイクで颯爽と風を受ける背広のサラリーマン。エリア毎に班を作った小学生の列、活発そうなひとりが無邪気にゴスロリだ、と翠銅を指差し、彼女は魔女でした、と笑い掛ける。途中コンビニエンスストアに寄って1本ずつ紙パックの野菜ジュースを買い、同時に袋は要りません、と言って店員も含めた3人で笑った。ふたりで野良猫を追い掛けそうになるのを牽制し合い、最近補修工事を終えた橋を潮風になぶられながら渡れば、6年目の校舎が見える。
「スイ、朝テストなんだっけ」
「それ、今言うの?…わたしも知らないけど」
「数学じゃ、ないよね」
「ああ、大丈夫、数学は昨日やったから。遅刻を装って出なかったけど」
僕も翠銅も、病的に数学が出来ない。
「あ、地歴選択だったかも。ハリは世界史でしょ」
「スイは日本史だからお互い役立たずだね」
「ビスマルクとかビスマルクとかビスマルクとかは知ってる」
「戦艦が好きなだけじゃん。僕も東郷平八郎とか東郷平八郎とか東郷平八郎とか」
「軍服が格好良いって理由でしょ」
そうこうしている内に校門を潜る。挨拶強化週間だとかで生徒玄関前に立つ風紀委員にふたり同時にやる気の無い挨拶を返して、下駄箱で履き慣れた黒いラバーソールと暫しの別れ、これもまた学年色の靴紐を通したスニーカーに履き替えると靴紐を結ぶのが苦手な翠銅を待ってから階段を上った。普通最高学年は1階だと思うのだが、中高一貫だからか6年生の教室は4階にある。途中でへたり込みたくなるが当たり前に翠銅の方が辛いので、彼女を支えて上り切ると疲労で軽い目眩を起こしながら同じ様にふらふらな翠銅と別れて自教室に入った。
双子はどうしても分けられて仕舞うらしく、僕は1組、翠銅は2組。クラスは3つあるが文理綺麗に分けられなかった為、文理を混ぜて選択科目で分けてある。授業は移動ばかりで自教室で受けることは滅多に無く、ほぼホームルーム用と言ってもよい名簿順の席に座り、一応机の中のテキストを広げた。名簿は2番、廊下側の端、何故か有るコンセントの差し込み口付きの壁の陰が僕の席。前は嫌いだが、この席で授業を受けることは無いので特に不便もしない。小テスト開始の5分程前になり、全員で選択科目の小テスト用の席に並び替え終えたとき、担任が入ってきた。
「はい、テキストを仕舞って下さい」
彼の一声に眺めていた問題集とシャープペンシルを1本抜いたペンケースを床に放る。往生際悪くこっそりと問題集を見ている生徒を目敏く注意してから担任の現代文教師はプリントを配り始めた。そしてチャイムと同時に全てフ背中が同時に前のめりになる様子を一番後ろの席から眺めながら、シャープペンシルのノックを数回鳴らす。問題はつい最近習ったところの要約文の穴埋めで、適当に年号や人名を放り込んで行くが決して余裕な訳では無い。何世、だとかは曖昧だし、倫理と日本史も混ざっているだろう。10分間の内、残りの5分は机に突っ伏して過ごし、止め、の合図でペンを置いた。そしてぞろぞろと各々が自身の席へと戻り、朝のホームルームが始まる。担任は僕の姿を認めると何処か安心したように眼鏡のブリッジを押し上げ、今日1日の連絡事項を口にし始めた。

「なあ、蒼生」
恐ろしく退屈な午前の授業を終え、昼のホームルーム前の清掃の時間、同じ自教室の担当になっている名簿が2つ違いの男子生徒が突如声を掛けて来た。モップで拭った埃を教室の隅にはたき落としている最中だった僕は、特にそちらを見るでも無く返事をする。
「翠銅ちゃんって、彼氏とかいるの?」
とか、ってなんだとかって。双子の弟ならいますが、と言い掛けた口を引き結んで其の顔をまじまじと見詰めた。確か成績は常に上位なのにだらしがない、自身をクラスの人気者だと履き違えている運動部の生徒だ。ボリュームを持たせてセットした髪を整髪料で固めて、前髪をM字に流している。何をどうしたいのか、帚の柄を肩に担いでいた。
「…さあ。訊いてみたら」
「バカ、お前、話し掛けられないから訊いてるんだろ」
「知ってどうするの」
「バカ、そりゃお前…」
そう言って照れた様に彼方此方に視線を漂わせる様が気色悪いので無言で流そうとするが、尚も彼は身体をくねらせ食い下がる。僕が彼を好ましく思えないと云うことは、翠銅の好みでもないと云うことと同義。叶わぬ恋よな、と憐憫に似た気持ちを抱いていると、今度は質問を変えて来た。
「じゃあさ、好みのタイプとか解るか?」
少なくともお前じゃねーよ。言いたいが言わない。人間関係は滞り無い方が良いに決まっているのだ、無駄な諍いは避けるべきだ。
「…色白で睫毛が長くて綺麗な顔してて黒髪で読書が趣味な感じの無口で痩せた奴かな」
「お前じゃねーか」
「簡単に言うとひと昔前のヴィジュアル系っぽいの」
「よし、蒼生、なんかヴィジュアル系のバンドについて教えてくれ。先ずはちょこっとした会話からだよな、うん」
駄目だ。極めて救いようが無い。もういい加減に集めた塵をちりとりに集めて欲しかったので、1番ではないが翠銅が好きなバンドの名前を告げる。1番なんて教えたら、きっと彼女は泣きそうなくらいに怒るだろう。人一倍に独占欲が強いのだ。
「あのさ、それから翠銅ちゃんのメアド、教えてくれよ」
「嫌だね。スイはメールで迫る男になんか絶対に靡かない」
あれ、もしかしてこれは助言になるのだろうか。
「じゃあラヴレターか…ムズカシイな」
「ミルク沸かされるよ。そして200グラム増えて落ち込むから止めて」
彼は意味が解らないと怪訝そうな眼差しを向けてくるが、説明するつもりは無い。これは、ふたりだけが解れば良いことなのだ。排他的双子領域、他者など存在しない独立圏。
「じゃあ、やっぱり話し掛けることから始めないとな」
話したことが無いのなら、何がきっかけで好意を抱いたのだろうか。一目惚れなんて服にしかしたことが無い僕には遠い話であるからにして、興味が無い。
「…スイの負担になるようなら殺すからな」
「はい、未来の弟様!」
呆れてものも言えずに長い長い溜め息を吐く僕の視界の隅で、彼は意気込んだように帚を頭上に掲げた。其れが勝鬨にならないことを、僕は確信している。彼から帚を奪い取ると、モップを押し付けて床の塵を集めた。






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7月、ですってよ。
私、夏が大嫌いだから、もう7月ってだけで鼻血が出そう。
でも友人方のお誕生日が結構有りますし、Dのニューシングル『鳥籠御殿』も発売しますし、9日には弟がライヴに行くのにくっ付いて行って、ぺしぇたんとおデェトもするのです。
良いね、暑くなければね。

初のお給料が出ましたのでね、alice auaaのワンピースを買いました。
(書面上の)お給料じゃ足りませんでした。でも買いました。

可愛い、でしょうに!
(画像じゃ見えにくいですが)
パンフレットも付いて来ました。

サイズは去年冬より5キロも太りやがった私でちょっと緩いくらい。
でも他に比べたら大分小さいですよね…良かった。痩せよう。

襟元のごちゃっとしたプリーツフリルがもう邪魔で邪魔で可愛い。
此れでライヴ行こうかな…。


バイトは慣れて来たので安心かと思いきや、昨日は最悪でしたね。

ごみ捨てに行くときに爪でごみ袋破って中身ぶちまけるし。

レジ売ってる時に、何を思ったのか、
「534円になりません」
って、言った。
お客さんもわたしも事態が飲み込めて無かった。

店長出勤。
銀貨「いらっしゃ…あぁあらららららおはよっす御座います」
店長「…うん、御早う御座います」
泣いた。普通に入り口からなので間違えちゃうんですよね!

しかも店長と交代のときに、お客さんが沢山来たのでふたりでレジに…
これは、試されている…!とひとり張り切っていましたが、パスタをふたつ温めて欲しいとのこと。
ひとつを自分の脇のレンジに。もうひとつを店長のレジの方のレンジに持って行こうと。

店長「(レジ打ちながら)あぁ、使ってるよ」
銀貨「はい!使ってるんですね、失礼します!(がちゃっ)」
店長「使ってるって言ったじゃぁあぁぁん!」
銀貨「あららららら」

もう自分、きっと夜だったから頭がいかれてたんだ。

そして退勤。
店長「もう時間だからいいよ」
銀貨「あ、はい、お先に失礼します」
裏に行くついでに床にあったカゴを持って行こうとするが、カゴとカゴの間に吊り下げてあるレジ袋が挟まっていたことに気付かずに引っ張る。
びりびりびりびり。
散らばるレジ袋。
銀貨「何が、起こった」
店長「…お前、面白いな」

駄目だ、このままじゃ駄目だ。自分変な子だと思われちゃう。(多分もう思われてる)
挽回せねばならぬ。
今日は何時もより頑張ろう。


兎に角、痩せよう。



人間はうやまわなきゃならねえ!
あわれんだり…あわれんで
見下したりしちゃいけねえ……
うやまうことだ!

(ゴーリキー『どん底』)







家に帰ると玄関には厚底のぷっくりとしたデザインのストラップシューズが脱ぎ散らかしてあった。時計は確認していないが未だ昼過ぎと云ったところ、早過ぎる双子の姉の帰宅はくらりと既視感を催す程に日常的。ブーツを脱ぎ、彼女の厚底も隅に整えてやると廊下を進んでリビングへのドアを開けた。
「おかえり」
ソファに猫が増えている。
「おかえり。学校は?」
「刑務所」
「そうじゃなくて、また早退?今度はなんて言い訳したの」
バッグを肩から下ろしながら片割れに少し意地悪く声を掛けると、彼女、翠銅は寝そべっていた頭上に掲げた本を下ろして起き上がった。膝迄伸びた黒髪が垂れてしゅるり波打つ。
「言い訳じゃないもの。くらくらして気持ち悪いんです、って言ったら直ぐに帰して頂けました」
ヴェニコが加勢のつもりなのか未だ制服姿の彼女の膝に乗って語尾を引き継ぐ様に鳴いた。1年中制服に黒いタイツを併せている彼女は其の着こなし方が示す通りに色白で、病的に細い体躯をしている。実質、病気なのだが。
「不良だ」
「五月蝿い。君に言われたくないな…不良って素敵じゃない、太宰の『斜陽』は読みまして?」
「読みました。スイが五月蝿いから」
「あれは直治が良い…きっと美男よ。ハリみたく」
「スイは姉の方にそっくりだと思ったな」
「母親の世話なんてまっぴら。死んだ方がまし」
翠銅は顔を不機嫌に顰めると読んでいた本に栞を入れてテーブルに放った。僕が図書館から借りて来た本なのだから、もう少し丁重に扱って欲しい。そんな僕の目線に気付いたのか、彼女は性悪に笑んで膝に肘を付いて頬杖をすると、林檎、と呟いた。剥け、の意である。仕方無しに手を洗い、果物ナイフと皿を取り出して林檎と共に翠銅の隣に腰掛けた。
「うさぎ」
「わかってる」
彼女は、林檎をうさぎに剥かないと食べない。
「…林檎を剥くのが巧い男って素敵。其の点、ハリは素晴らしいと言えるわね。性格は別として」
「スイみたいな子、嫌だな」
「わたしもハリは御免よ…でも物好きっているのね。はい」
翠銅は学生鞄として使っている経年色の漂う色合いの、貴重であるらしいテディベア柄のバッグから淡い桃色をしたメルヘンチックなデザインの便箋を取り出し、ナイフと林檎で手の塞がっている僕の目の前に突き出した。有名な白くて耳に赤いリボンをした猫のシールで封がされている。玻璃くんへ、と女子にありがちな丸い字と濃いピンクのペンで認められていた。
「ばっかみたい。わたしの下駄箱に玻璃くんへ渡して下さい、ってメモと入ってたのよ。わたしのところに入れる勇気があるんならハリのに入れろって話よ。それとも何かしら、わたし、ハリより格下だと思われてる?」
「其れは、ない。格下じゃないと言っておくけれど、格上でもないけれど、スイは恐い。普通…入れないよね、うん」
彼女は今僕が受け取れないことに気付くと、しきりに封筒の観察を始める。便箋の渕は女の子らしくレースの様に切られており、光の加減で其の表面に凹凸で繊細な花柄が入っていることが解った。恐らく其の封筒の中身も同じ様に凝っているに違いない。
「燃やしてミルクでも沸かす?」
「僕は葉蔵じゃないよ…誰から?」
「えーと…?ああ、3組の倉部亜弥。へえ、こんな乙女チックな趣味だったのね…メールとかじゃなくて手紙な辺り評価してあげてもいいけど、ピンクの薔薇と赤いリボンが欲しかったな。おまじないを信じるくらいじゃないとハリには合わない」
「スイみたいにヘキサグラムだとか魔法陣描いたりしちゃうくらい?」
「可愛いでしょ?」
「悪趣味」
「好きでしょ?」
応える代わりにうさぎが乗った皿を彼女の尖った膝の上に置いてやる。翠銅はお待ちかね、と云った様子で赤い爪で1羽を摘むと、頭から歯を立てた。うさぎがいい、と強請る癖、容赦が無い。気持ちの良い音を立て林檎を齧る彼女から其のラヴレターを受け取ると、1羽を貰い受けて同じ様に頭から齧った。甘酸っぱさの加減が丁度良いので、バスケットに有る残りも近日中に食べて仕舞わなければならない。甘いだけでは駄目である、と云うのがふたりの見解だった。
「読む?」
「どうしようか」
「読み聞かせしてあげようか」
「嫌だ。絶対ミスマッチ」
「ヴェニコ、ハリが酷いこと言う」
一体、どうしたら正解なのだろう。一番は此の手紙の主の気持ちと意向に同調してやることなのだろうが、生憎そう云った類いの交流は好まない。かと言って下手に断れば、鬱憤が黒山羊さんを頼まれた翠銅に行くだろう。其れは出来れば避けたい。
「…好きにしたら良いよ。わたしもハリも悪く無いし」
僕のこころを読み取ったのか、翠銅は膝を抱えて首を傾げながら笑い掛けて来た。双子だからだろうか、解って仕舞うこと、繋がって仕舞うことが多々ある。同じ言葉を同じときに口に出すことなんてベッドから起き上がることくらい日常的だ。血縁の愛なんてものは信じていないから、彼女に対する気持ちはアンドロギュノスだったときの片割れを追い求めるのに極めて近い本能的なものだろう。
「…ミルク、飲む?」
「ふふ、蜂蜜いれてね」
手紙を翳しながら言うと、彼女はちいさな幸せをみつけたように愛おしく微笑んだ。そして着替えて来る、とひとこと残してリビングを後にした。足元でヴェニコが甘えた調子で鳴く。
「なんだ、キミも欲しいの?」
「う、う、う」
「冷める迄待てよ」
人間のミルクを動物に与えるのは余り好ましくはないが、1度温めれば大丈夫な気がして冷蔵庫から瓶入りのミルクを取り出した。目分量を小鍋に注ぎ、コンロの火を付けるが、手紙をどうやって使えば良いのか解らなくて困る。結果鍋料理に使うガスコンロを引っ張り出し、灰は後で片付けることにして円形にゆらめく青い火にラヴレターをそっと落とした。徐々に黒点が広がり、白い猫の顔が嫌な臭いと共に黒に飲み込まれるのをぼんやりと眺めながら其の上に鍋を置く。興味なら初めから失せている。蜂蜜を棚から取り出した。
「あ、ほんとにやってる」
スプウンで白い液体を掻き回していると、着替えを終えた翠銅が静かに入って来て僕の腕に骨みたいな腕を絡ませて来た。黒いパフスリーブのベビードールワンピースは彼女の好きなブランドのものだった筈だ。ルームウェアにしてはフリルとレースの具合が過剰である。
「どんな味になるのかしらん」
「不味いんじゃない?」
「わたし、ハリのつくるホットミルクは飲めるのよ、そう簡単に負けるものですか」
なんの張り合いだよ、と笑いながら見下ろす小さな頭は軽く旋毛が見えるくらいの位置にあった。双子と言えど男女の差ははっきりと出るもので、彼女の身長は小学5年生辺りで止まっている。比べて僕は微々たるものだが未だ伸びている、と言っても男子の平均値よりは大分低くて其れがコンプレックスだったりするのだが、姉よりも高いだけで気持ちの面では満足していた。彼女の絹糸の様な、と云う表現がぴったりな髪からはシュガーローズの甘い香りが鱗粉の様に漂い、切り揃えられた前髪の下からは扇状の睫毛が花開いて、其の様はまるで作り物、自慢の姉。矢張り男であるからにして、誰かひとりを護れと言われたら、選択の余地もなく翠銅を選ぶだろう。僕の姫様だ。
お揃いの、色違いのマグカップにミルクを注いで蜂蜜を垂らす。ヴェニコの分は平皿に薄く張って暫く置いておくことにして、ふたつのマグカップをカウンターテーブルにコースターと共に並べていると、翠銅がコンポの電源を入れて大音量で好きなバンドの最新シングルを流し始めた。流れるように優美なピアノの伴奏は直ぐに奔流の様な激しいギターのうねりに飲み込まれて掻き消されそうに泣いている。腹腔深くに鉛の様に重たく響くベースの呻きが、其のトーンに反して軽やかに跳ね、調和を齎すドラミングに支えられて気品漂う低い声が叫ぶようにして歌詞に意味を持たせていた。
「音、大きくない?」
「別に、普通よ。此処迄しないと下手迄注意が行かないのよ」
「耳が悪いだけなんじゃないの」
「穴だらけだからかしら…あ、ツアー始まるらしいけど、チケ、取っておこっか?」
彼女は此のバンドを心から愛していた。文字通り、命をを掛けていると言っても過言ではない。影響されてが僕も此のバンドを好んで聴いているので、是非とも行きたいと思い彼女に手渡されたファンクラブのチケット先行予約の葉書に目を通した。幸いにも此処に来るのは休日である。
「…スイは何処行くの」
「うーん、遠征しようか…取り敢えず此処とファイナルは行く。ハリは?」
「僕は此処だけでいいや。申し込んどいて」
翠銅は承諾の返事をすると、僕の隣に腰掛けてカップの持ち手に華奢な指を掛け軽く持ち上げ、熱そうな渕に紅い唇を重ねた。彼女がゆっくりと其れを傾けるのに倣い、僕もカップに口をつける。予想通りに、特筆することもない、何時ものホットミルクの味。つまらなそうに傍らの少女が引き剥がしたマグカップを睨み付けるのを見て、思わず笑って仕舞う。
「…うん、ハリの味」
「まあ、そうなるよね」
「でも女のにおいがする。安っぽいトワレの香り。プラスチックの可愛いボトル」
「吐く?」
「負けた気がするからいや」
そう言って翠銅は手を伸ばして蜂蜜の瓶を手に取ると、自身のミルクに味の想像を拒絶したくなるくらいにたっぷりと鼈甲色の液体を垂らした、と言うより注いだ。そしてスプウンで重たそうにカップの底を掻き混ぜる。
「うっわ、太るよ」
「太っても嫌いにならないでね」
「ならないよ」
だから其れ全部飲んでね、と洩らすと翠銅は一瞬だけ泣きそうな顔をして其れを口にした。まるで重大な儀式でもするように神妙な顔つきで控えめに喉を鳴らす彼女がおかしくて、薄っぺらな背中を撫でてやる。おまじないはどちらだろうか、どうでも良いと思いつつ何処か遠くで烈しく打ち鳴らされるドラムの音を聴いた。ミルクも残り半分を切ったところで、先程からこちらを恨めしそうに見上げてくるヴェニコの為に席を立って醒めたミルク入りの平皿を床に置いてやる。底にねっとりと溜まっているであろう蜂蜜をスプウンで掻くようにして引き剥がしては口にしている翠銅を観察していると、何故か急に数時間前の出来事が思い出されて、何も考えないままに唇が動いていた。
「…スイ、馨って名前の眼鏡で長身の男、知らない?」
「なに、わたしに男なんていないわよ」
「違うよ…今日公園で会ったんだ。ドラムやっトて、此の間のスイのバンドの主催に対バンで出てたんだって。スイのベース、褒めてたよ」
彼女は暫くスプウンを動かす手を止めると、首を左に少し傾けて大きな睛を数回、適当な方向へと動かしてうーんと呟き、そして何か思い当たったのか今度は真っ直ぐに僕を見上げる。
「ああ…ベルギーチョコみたいな髪と冷やしたアールグレイの睛した大型犬みたいにおっきいの」
「多分、そう」
好きなもので喩えたと云うことは、気に入ったのだろう。
「ドラム、良かったわね。リハのとき少し見学したくらいだけれど…なに、惚れたの?」
「なんでそうなる」
「そうよね、ハリはスイのことがいちばんすきだものね」
「当たり前じゃないか」
翠銅は一等楽しそうに笑むと、再び蜂蜜を掻き回しに取り掛かった。僕は特に何をするでもなく、彼女の隣に戻ると温くなったホットミルクを飲み干して音楽に耳を傾ける。舌に残った温さが先程のアイスティーに重なって、少し気恥かしくて声を上げそうになったが閉じた目蓋を上げることはしなかった。暗闇の中、あのペットボトルを棄てて来て仕舞ったことをひとり、後悔する。









御存知の方もいらっしゃるかと思いますが、わたしは鉱石が好きで好きで仕方が有りません。
と、言うことで、今日届いた子たちをお披露目。

Memoraphilia

この、ブルー。
駄目、もう吐きそうなくらいときめいちゃってる。

1番上の大きい斜切れくんが瑠璃。
ラピスラズリですね。
くすんだ深いマリンうかぶきらめくきらり。

真ん中の青緑の艶々ちゃんが珪孔雀石。
クリソコーラです。
何億年も前の大海が化石になったみたいにみとれちゃう。

一番右のちいさな蛇苺気取りが藍銅鉱。
アズライト…此の子が欲しかった!
はっ、と冷たい氷のブルー。嘘みたいなブルー。

ああ、もう、泣いちゃうでしょ。
ちいさくて可愛い。瑠璃でも長いところが3センチくらいしかありません。
駄目です、此れ、集めてたら破産するでしょ。
値段的な意味合いじゃなくて、蒐集したくなる。

宝石も好きですが、いかにも鉱石!って感じの石が好きです。
蜻蛉玉も欲しいな…

ふふ、綺麗な硝子匣を買ってあげましょうね。