New Young Rain

■本日のコメント
天気予報を聞き忘れて、今夜は雨が降るとは知らなかった僕は、電車を降りてすこし驚いた。
同じ空の下、どこかで哀しい思いをしている誰かのかわりに、夜が泣いているとさえ思う空。
黒い夜に落ちてくる、見えない水の線。暗闇へ手を伸ばして触ろうとしても、手応えはない。
遠いどこからかやってきて、遠くどこかへ消えていく。誰も行き先を知らない、小さな水玉。
そう、冬の雨はいつもこうなんだ。信じられないくらい弱くて冷たくて、まるで重さがない。
だけどその存在は、いつまでも消えないで残り、深いシミになってしまうような感じがする。
どの季節の雨にも匂いというものはあると思う。冬の雨はあとから効いてくるタイプだから、
熱いコンクリートを染めていった夏の夕立なんかとは違って、すぐにその匂いはしてこない。
僕がここ何年か着ている大好きなコートには、色んな年の冬に降った雨の記憶が住んでいる。
鼻水を拭くために袖を鼻に当てると、もう遥か彼方へ過ぎ去ってしまった季節の匂いがした。
雨や雲は身の回りの景色を灰色に染めていくけど、頭の中では色々なことを考えられていい。
濡れていくのは身体。潤っていくのは気持。「沁み込む」とは、心に水が入ってゆくと書く。
雨を見て何か思うことは、たぶん何の利益も生み出さないと思う。だから止めたほうがいい。
ただ、雲の上では今夜も星が輝き、月の光がきみを照らしていることは忘れないほうがいい。
と、僕は思います。
今日の1曲:"My Girls"/Animal Collective