京都競馬場のメインはマイルチャンピオンシップ、G1。馬場コンディションは良。安田記念とはまた趣の違ったマイルG1になりそうであります。一番人気は先に休み明けでG1を制したスーパーキッド。二番人気も同じく三歳馬のミラクルスターとなっています。

調整不足が囁かれているマッドヘリオスでありますが、本誌は三番手評価であります。何かしでかすならこの馬、という見解でありましょうか。分かる気もしますがどうか。そういう意味ではそのあとに推しているバクシンマツカゼも非常に気になるところであります。

さあゲートインが始まっております。一頭嫌っているようですね。マッドヘリオスでしょうか、いや、ミスカトニックだ。ああ、ミスカトニックですね。ゲートに入らないとレースは始まりません。さあどうなのか。

・・・数分経過。

ようやく入りました、ミスカトニック。ちょっとスタート時間を過ぎてしまったようですがこれで全馬16頭、ゲートイン完了であります。気合いが入りまして、、、

さあ、スタートしましたっ!マイルチャンピオンシップのスタート、まず好ダッシュを見せたのはマッドヘリオスだっ、ヘリオスが行ったっ!

ロングキスナイトが外目から二番手か、スーッと上がって行ったバクシンマツカゼ三番手、ウインドジュエルが押してこれに加わっていったか、

あとはあとは、一馬身ほど離れてステイマインド、そしてマキシが外目から、セカンドトゥノン、セイクビゼンン、トモミナンバーワンなどこのあたり団子状態か、

やや切れてチャッピーカイザーが行って、バンダナシャイン外目から、エカチェリーナ早くもムチが入って抑え気味に進むミスカトニック、 そしてそして、ここにいましたミラクルスター、押している押している、懸命に押してミラクルスターが後方集団から行っております。あとはブリザード、

そして一馬身差、最後方からスーパーキッド、最後方からキッドが行って、さあ前からお終いまでは十八馬身くらい、かなり前が飛ばしているようですがどうなのか、

前はマッドヘリオスが押して押して飛ばしているっ!これに続いてロングキスナイトも懸命に押して行って前二頭が三馬身から四馬身のリード、三番手スーッと付けたバクシンマツカゼでありますがこれでも速いペース、かなりのハイペース、かなりのハイペースでありますマイルチャンピオンシップ、

バクシンマツカゼから一馬身半差で続いたのはトモミナンバーワン、ウインドジュエルが内から抑え気味の四番手か、マキシがこのあたり上がって五番手であります。

後ろはどうなっているか、ミラクルスターはどこにいる、まだ後ろから二頭目三頭目あたりか、先頭からは十六馬身から七馬身離れておりますがどうなのかこの位置は、これで大丈夫なのか海老名正義とミラクルスターは現在後方十四五番手あたり。

さあ、先頭はマッドヘリオスが二馬身のリードか、またロングキスナイトを二馬身くらい離して先頭に立っております。そこから三番手は二馬身差、バクシンマツカゼと竹本豊が進んで最終コーナー、

ずーっと後続動いてきて差を詰めて来るっ、ウインドジュエル、マキシなど押して上がって来てあとはセイクビゼンン内に入ったか、

さあどこにいるのかミラクルスター、馬群の中、まだ後方でミラクルスター、手応えの程はどうなのか、休み明けは苦しいかっ、ミラクルスターはまだ後方で迎える最後の直線だ、勝負はここからっ、勝負はここからであります!




「ウワアアアアア!」




先頭、先頭はマッドヘリオスだ!リードは二馬身、ムチが入ってマッドヘリオス、しかし外から併せて来たのはバクシンマツカゼと竹本豊、右ムチ一発、右ムチ一発入ってバクシンマツカゼがヘリオスに並んでくるっ、

あとはウインドジュエル内から、マキシの手応えも残っているか、マキシが馬場の真ん中から伸びて来るっ、あとは外、横に広がった各馬の中から末脚切れるのはどれかっ


内はバクシンマツカゼが先頭に立っているっ、ウインドジュエルが詰めてきたかっ、ウインドジュエルが三番手から二番手、さあそして先頭を追ってくる、

ああっ、マッドヘリオスは遅れた!もがいて苦しそう、あとはちょっと止まったか、各馬ちょっと脚が止まってしまったか、これはサバイバル、サバイバルの様相を呈してきましたマイルチャンピオンシップ、

踏ん張るバクシンマツカゼ、懸命にウインドジュエル食い下がるがどうかっ、この辺でジュエルも力尽きたか、前はバクシン、前はバクシンで坂を登り切ったところ、最内からトモミナンバーワン上がってくるがウインドジュエルに並び掛けるところまでかっ、

前はバクシンマツカゼ!残り百と五十を切って後はなだれ込むだけ、後は二馬身ほど離れてウインドジュエルとトモミナンバーワンだが既にこのあたり脚が上がっているっ、

大外から一頭飛んで来たがこれも二番手争いまでか、、、あっ、いやっ、凄い脚だが、おっと、来た、来たかっ、来たぁ、来たーっ!





ああーっと、



大外からミラクルミラクル、ミラクルー!





ミラクルスターがただ一頭、鬼脚見せて飛んで来たぁ!さあ前はバクシンマツカゼだが、この脚、この脚を見てくれ、ミラクルだ、ミラクルが差し切ってしまうのか、差し切るのか、外、










凄い勢いで並んで来た今ぁゴール、イン!







「ウワアアアアア!」










....!!


ミラクルスターだぁ!







なんとなんとなんとぉー!


勝ったのはミラクルスター!!




各馬ハイペースでバタバタになったところ、一頭だけ、一頭だけ鋭い末脚で追い込んできたミラクルスター、直線入り口では絶望的なポジションでありましたが、残り二百くらいから凄い脚で追い込んできたミラクルスター、

いやあ、これは驚きました、何という馬、何という能力でありましょうか!エッジがいない今主役は俺だと言わんばかり、豪快な走りを見せましたミラクルスター。他の馬には負けられない、負けられませんミラクルスター!そして自信を持っての騎乗は海老名正義騎手、これもファインプレーと言って良いでしょう。勝ち時計は1.33.5!

凄い競馬でしたマイルチャンピオンシップ。勝ったのは休み明けながら豪快な競馬を見せたミラクルスター。勝利目前でまたもや涙を飲んだ形になったバクシンマツカゼでありますが、立派に健闘したと言っていいでしょう。

その後二馬身ほど離れてトモミナンバーワンとウインドジュエル、そしてスーパーキッドが追い込んだようですが五番手までという結果。

勝ったのはミラクルスター、左手を挙げて海老名騎手、これからウイニングランというところか、ホームストレッチを逆に走って大歓声に応える形、ミラクルです、勝ったのはミラクルスター!有馬記念に向け視界良好です!

(つづく)



(4週間後・マイルCS馬主席)







「久しぶりだな、若林」






「多良崎か。」

「ウインドジュエルの調子はどうだ?」

「ああ、調子はいいよ。それより、まさかミラクルスターがマイルCSから始動とはな。」

「有馬記念に向けた一叩きさ。本気で勝てるとは思っていないよ。」

「ははは、怖い怖い・・・。」







「ほう!スーパーキッドが一番人気か?」

「休み明けのスプリンターズSを勝ったからね。”元”神戸HCの多良崎としては、複雑な心境かな?」

「・・・まあな。」

「それより、久々の再会だ、どうだい今夜一杯?」

「いいね。新地にいい店を見つけたんだよ、若林。」



                          :


          (本馬場入場)

さあ、やって参りましたマイルチャンピオンシップ。十四万を越えるファンを飲み込んだ京都競馬場。今日も例によって各馬、本場馬入場の紹介から入ってきましょう。

さあいきなりです。ゼッケン1番。1着もこの俺だ、名手海老名を背に乗せて、ミラクルスターが宝塚記念以来の登場であります。まあなんと言いますか、流石に風格がありますミラクルスター。 エッジ帝国が崩壊した今、王の座に就くのはこの馬しかいません、休み明けとはいえここは負けることが出来ない一戦。前走は宝塚記念1着。

ゼッケン二番を付けましたウインドジュエルの登場であります。ここはもちろん得意とする距離。稀代の名牝ウインドジュエル。鞍上は天才畑原、何か今日は策を講じてくるのかどうなのか。ルストマ・シーランド所有。







                          :



トモミナンバーワンであります。安定した実力の持ち主であります、トモミナンバーワン。相手に取って不足無し、若武者誤投を鞍上に今日はどんな競馬を見せてくれるのか。レッドバロンHCは有力馬二頭出し。


ミスカトニックがちょっと暴れる仕草を見せていますがこれはいつものこと。なかなか一筋縄ではいかないが抑えきれるか菊澤騎手。おっとおっと、立ち上がる仕草を見せております。前走は菊花賞3着。

                          :

!っと、飛び出してきたのはマッドヘリオスであります。まだ走るには早いぞ、ヘリオス。オーナーはすっかりお馴染み松戸氏、前走は秋風S3着。

ゼッケン9番はチャッピーカイザーであります。いつも好走するのですがなかなか突き抜けるものがない同馬、この本番でどういった走りを見せるのか。前走は秋風S4着。

スピードではヒケを取りません、ゼッケン10番はバクシンマツカゼであります。なんと言っても魅力は鞍上、竹本豊。その能力をうまく引き出してやれば勝利は遠くありません。鍵を握るのは同型のさばき方とマイルという距離。前走はスプリンターズS2着。

                          :

さあ春のマイル王者、マキシの登場であります。前走は謎の惨敗を喫しておりますが、元々が能力の安定した馬。ここは巻き返し必死であります。鞍上は名手川内、前走はピロウィナーS8着。

歓声があがってゼッケン12番、スーパーキッドの登場であります。前走で悲願の初G1を制しましたが、もちろんここも必勝体勢。調整に抜かりなし、震災を乗り越えてまた一つ、神戸市民に嬉しい知らせを届けたいスーパーキッド、堂々の入場であります。神戸HC所有。前走はスプリンターズS勝ち、鞍上はばんばのカツであります。


ロングキスナイト、ゼッケン15番。パッとしませんが、どうしてどうして実力馬であります。一発の可能性は十分だ、富士田ジョッキーを背に大人しい雰囲気でロングキスナイトが行きます。前走はスプリンターズS3着。

                          :

さあいよいよ、いよいよでありますマイルチャンピオンシップ。発走は数分後であります!















(つづく)



本誌本命は前走で3000mを克服済み、オーバーザワールドに付いています。鞍上岡辺の手綱さばきにも信頼が集まります。対抗は東京優駿以来の休み明けとなるフウリンカザン。調子の程はどうか、能力は高い同馬でありますがこの3000mという距離も鍵になって参ります。

あとはダービー馬グイン、実力馬ヒデノブライト、そして重賞を連勝してきたロックブライアンなど役者は揃いました。さあ、各馬本場馬に入って参ります。大歓声の中行われます京都のメインレースは菊花賞、グレードワン。

淀の長距離を克服し、最後の一冠を手中に収めるのは果たしてどれ。人気の方はオーバーザワールド、フウリンカザン、ロックブライアン、ヒデジェントル、ヒデノブライトやグインあたりが十倍以下であります。割れ加減のオッズと申し上げてよろしいでしょう。

馬番連勝の方は9-12、オーバーザワールドとフウリンカザンの組が売れているようですね。

さあ果たしてどの馬がこのビッグタイトルを制するのか。非常に楽しみであります。ワクワク致します。おっ、スターターが台に上がります。菊花賞、G1のファンファーレです!


さあ物凄い歓声が上がっております。各馬のゲートインが進んでおりますがどうでしょう。手こずらせそうなオカダトップガン、ミスカトニックあたりどうか。うーん、スムーズに入っているようですね。珍しい、珍しいですねこれは。すんなり全馬ゲートイン完了したようです。

緊張いたします。さあ、今、ゲートが開きましたっ!

一頭、一頭ちょっと出遅れた感じ、大外の一頭・・・えーっとこれはミスカトニックですか、ミスカトニックが二馬身ほど出遅れた感じです。あともバラバラとしたスタートになっておりますが注目の先行争い、まずは何が行きますか、

っと、っと、ゼッケン10番オカダトップガンが行ったか、さあオカダトップガンがスーッと上がって行って先頭に立つ勢いか、これに外からグインが押して押して付いていきます。

いきなりから激しい先行争いになった模様、オカダトップガンの外からグインが懸命に押して前に出ようという構え、トップガンも抑えませんっ、抑えないでばんばのカツ、持ったままでグインを迎え撃つ構えか。ちょっとムキになってトップガン行っておりますが、これに押してグインがハナを奪いに行きます。

前が凄い凄い、前二頭が既に後続を五馬身から六馬身、早くも大きな差を付けようとしております。離れた三番手にロックブライアン、ここにロックブライアン、後続集団の先頭を走っております。がっちり折り合っているかこのあたり、絶好位と申し上げてよろしいでしょう、ロックブライアンは三番手であります。

これを見る形で進んでいるのは牝馬、アキノミラクルと的馬等。併走してフウリンカザンが進んでいます。内からベルファストボムでありますが、ちょっとベルファストボムが掛かり気味か、外からすーっと上がって参ります。ヒデジェントルが外目から進んで、一馬身差、ロットオブサンクスが行きます。

ヒデノブライトが馬群の中、包まれるように進んで現在十一番手あたりか。ダンシングデビルも差が無く馬群の中、ノーリターンもおります。一馬身あってさあここ、ここにオーバーザワールド、

最後方から二、三番手を行ってあとはランディスリル、そして最後方ポツンと出遅れたミスカトニックが行って全馬16頭、先頭からお終いまで縦長の展開、もう二十馬身以上離れておりますか。

正面スタンド前、このあたりでグインが先頭に立ったようです。半馬身差、ほとんど並ぶようにしてオカダトップガン、つついているというのでしょうか、前二頭がかなりの乱ペースで行っている感じ、えーっと、五、六、七馬身でしょうか。

これはなんと言いますか、後続に七馬身差、やってくれますこの二頭、やはりこの二頭が出てくると俄然レースが面白くなる、一体どんな結果が待ちかまえているのか菊花賞、

相変わらずロックブライアンが前二頭を睨んで・・・と言っても見えないほど前方でありますが、ロックブライアンが悠々と後続の先頭を行っております。今日はフウリンカザン、ロックブライアンをマークする作戦か、一馬身差の四番手に付けています。そしてアキノミラクルも差のない位置。

抑え気味のベルファストボム、まだちょっと落ち着かない模様で外から。内からサンセットが行きまして、ヒデジェントルが外目。ロットオブサンクス、そしてトウショウキャロル、ヒデノブライトこの辺は固まって進んでおります。

馬群の中、ダンシングデビルが進んでおりまして、ノーリターン差が無く続いて一馬身半、オーバーザワールドが続きます。今日も前走のような末脚を爆発させることが出来るかどうか。

ランディスリルがこれを見る形で行って、最後方、二馬身から三馬身開いてミスカトニックは自分の競馬に徹する感じ、掛かってはいないようです、最後方からゆっくりとミスカトニック。

先頭はグイン、そして並んでオカダトップガン。ダービー馬に食らい付いていくオカダトップガン、速いペースでありますが流石に落ち着いたか前二頭、掛かってはいないようです。後続を七馬身離して向こう上面をぐんぐん行きます。

離れた三番手ロックブライアン、鞍上犬西はどう判断するのか。ここは犬西、一世一代の大決断を迫られる場面、さあどこで行くのか、どこで動くのか。フウリンカザン鞍上横谷も同じく際どい判断を迫られるポジションであります。

前を追えば後ろにやられかねません。なんと言っても後ろに控えているのはオーバーザワールドやダンシングデビル。早めに動けば間違いなくこの馬たちに勝利を持って行かれます。

しかし逃げているのはダービー馬、グイン。あの府中での競馬を忘れたわけではないでしょう。スムーズに逃がして自分の競馬をされてはたまりません。淀の3000m、そのスタミナと根性には絶対の自信があるグイン、さあ位置番難しいポジションだ、ロックブライアンとフウリンカザン、どうするのか、どうするのか犬西と横谷、

さあそうしている内に前は第三コーナーに差し掛かってそろそろ勝負所を迎えます。二頭のリードは六馬身ほど、さあ、動くのか、ロックブライアンが行った!坂を登って、登り、登りで行ったロックブライアン、

さあこれを見て一気に後続動いてくる、フウリンカザンも行った行った、アキノミラクルを交わして四番手、ちょっとアキノミラクル遅れたか、懸命に手が動いてアキノミラクルもこれに付いて行きます。

グインとトップガン、二頭が坂を下って最終コーナーから直線、後続一気に詰めて来るっ、後続一気に差を詰めて前二頭との差は三馬身から四馬身、長い長いクラシックロードの締め括り、最後の直線、最後の直線を迎えます!

さあ先頭はグインだ、グインが先頭だ、オカダトップガンがこれに半馬身差で付いていて、後続迫ってくるのはロックブライアン、そしてフウリンカザンがやって来る、土煙を上げて更に後ろから、内に入ってヒデノブライトあたりの伸び脚も活きているっ、

オーバーはどこだ、オーバーはまだ後ろかっ、ちょっと見えないっ、馬群が壁になってどこにいるか見えませんっ!

先頭はグイン、グインが頑張っている!詰めてきたトップガンが並んでこれを交わすのか、交わしてしまうのか、二馬身、二馬身差で追って来たロックブライアンとフウリンカザン、カザンがやって来る、さあフウリンカザンの末が切れるっ!前二頭に迫ってきたのはフウリンカザンだぁ!

グイン、そして並んだっ、並んだオカダトップガン、もうバカとは、バカとは言わせないオカダトップガン、交わしたっ、交わしてしまった!先頭はオカダトップガンだ、直線半ば、グインはちょっと遅れた感じっ、遅れてしまった感じっ!

トップガンが先頭だ!しかし来た来た、やはりこの馬か、やはりこの馬なのか、次代を担うのはこの馬、フウリンカザンっ!カザンがいーっきに外から詰めて前に迫って来るっ、あとはどうかっ、

ヒデノブライト内からスルスル伸びて来るぞ、前に詰めて来る勢いだ、ヒデノブライトが四番手から三番手、上がってくる上がって来るっ、

さあオカダトップガン先頭だが、詰めてきたフウリンカザン、フウリンカザンが並んで来て先頭に代わるか、残り二百を切ってついにフウリンカザンが初タイトルか、内からヒデノブライト三番手から二番手襲う勢いだが・・・

ああっと、ああっと、大外からオーバーザワールド飛んで来たぁ、やはり来た、やはり来たぞオーバーザワールド、これが世界を目指す神の脚か、内はフウリンカザン前に出たっ、これにオーバーザワールド、最内ヒデノブライト、オカダトップガンも一杯一杯粘った粘った!

大歓声だ、大歓声だっ、内、フウリンカザンが先頭に立っているっ、しかししかしっ、しかししかしっ、オーバーザワールドが外から一変に交わす勢いで突っ込んでくる、抜けるか、抜けるか、

勝つのはオーバー、勝つのはオーバーザワールドかっ、二頭三頭並んでくるゴール板前、オーバー抜けるかぁ・・・ああああああ!大外から一頭突っ込んで来たぁぁぁ!!!

これは、えーっ、なんと、なんとなんとなんと、ミスカトニックぅ!これはゼッケン16番ミスカトニックに間違いないっ!さあ前並んで、前並んで来てゴール板前、前はオーバーか、カザンか、カトニックこれは凄い脚だが、

オーバーザワールド出たか今ぁ、ゴール、イン!!!



「ウワアアアアアア!」






・・・・・!!!

オーバーザワールドだぁ!!

勝ったのはオーバーザワールドぉぉ!








二着争いは微妙、内懸命にフウリンカザン粘っておりましたが最後の最後で突っ込んできた伏兵馬ミスカトニック!どうでしょうか、勢いは外でしたが内フウリンカザンも一杯に粘っておりました。

そのあとはヒデノブライトが内から、オカダトップガンもそのあと粘っております。ロックブライアンは直線伸びを欠いたかそのあとくらい。

今スローでターフビジョン、ゴール板前が映し出されておりますが・・・ああっ、場内から歓声上がっておりますが二着はどうやら内!内のフウリンカザンか。僅かに外、ミスカトニックは遅れて三番手か。

しかし凄い脚を使いました、驚きました、オーバーザワールド。岡辺騎手、今ポンポーンと首筋を叩きまして第一コーナーの向こうへ走り去って行きます。終始後方を進んで直線に入ってからは姿さえ見せませんでしたが外に行っておりました。

外から一気の強襲劇。ついに栄冠手にしたオーバーザワールド、名手岡辺の手綱さばきもお見事の一言に尽きます。

休み明けとはいえ、フウリンカザンの健闘も称えたいところであります。

直線半ば過ぎ、抜け出したところでは勝利を確信いたしましたがそれを許さなかったオーバーザワールド。それにしても力のある馬です。走る馬です。ハイペース前目にいたのが痛かったといえばそうですが、そこは競馬、仕方ありません。実力を十二分に出し切ったと言って良いでしょう。

三着に突っ込んだミスカトニックには驚きました。ここで久々に見せてくれました鬼脚。あと一ハロンあれば、一ハロンあれば結果は変わっていたかも知れません。オーバーザワールドをも上回る末脚を披露いたしましたミスカトニック、見事な競馬をしたといって良いでしょう。

あっ、今確定したようです。一着は9番オーバーザワールド。二着に12番フウリンカザン。三着に16番ミスカトニックでそのあとヒデノブライト、オカダトップガンと続いています。

勝ったのはオーバーザワールド、オーバーザワールドが初のG1制覇を実現しています!







「ウワアアアアアアア!」








                        :






「成宮さん!オーバーザワールドやりましたね!おめでとうございます。」

「ありがとう、有田さん。ようやくG1を勝ててホッとしたよ。」

「2歳時から期待していましたもんね。最後の直線、うちのスーパーキッドより数段上の末脚でしたよ。」

「いやいや、今日のメンバーでもう一度走れば、今度はよその馬が勝つだろう。”アイツ”を除けば、この世代の力は拮抗しているんだよ。」

「”アイツ”ですか・・・。」

「そう。さっきオーバーザワールドがゴールする瞬間、一瞬だけマルゼンエッジの姿が見えたんだよ。」

「えっ・・・?」

「先頭でゴール板を駆け抜けるワールドのはるか先を、マルゼンエッジが悠然と駆け抜けていく姿が見えてね。」


「マルゼンエッジの残影・・・。」

「本当は、あのウイナーズサークルに立っているのは、マルゼンエッジだったのかもしれない。」

「・・・かもしれませんね、でも」

「でもそのポスト・マルゼンエッジの筆頭は、今日の勝ち馬・オーバーザワールドですよ。」

「有田さん・・。」


「僕たちは、エッジの影を追っていかなければならないんです。」

「エッジの遺志をつぐ、かー。」

「そうですよ。エッジは、エッジの遺志は、これからも僕らの中で生き続けていくんです。」

「マルゼンエッジは死んでいない、か―。」

「さあ、次は有馬記念!あの馬が待っていますよ。」

赤い彗星・ミラクルスター、か・・・。」

「期待してますよ、成宮さん!」

「よし、菊花賞馬の名に恥じないように頑張るよ!」

「あ、成宮さん!その前にマイルCSでうちのスーパーキッドが勝つ予定でした。」

「そ、それはズルイ!!!」

「ワハハハハ!」

(つづく)



    (3週間後・京都競馬場)








本当にいろいろありました、牡馬クラシック戦線。府中の杜で逝ったあの馬は今どこで、どんな気持ちでこの一戦を見守っているのか。牡馬クラシックの最後を締めくくるのは言うまでもなくこのレース、菊花賞。






淀の3000mに集った優駿達がここで覇を競い合います。出走馬は16頭。この世代を担っていく新しいスターホースがこのレースで生まれることを願いたいところであります。



「カツさん。」


「富士田か?騎乗予定のないおまんが、何しに来た?」


「この前は悪かったな。”おいぼれ”、なんて言い過ぎたよ。」


「別に気にしてないでごわす。」


「それと、ええっと・・・G1制覇、お、おめでとう。」


「富士田・・・。」


「まさかナムラコクオー産駒が、G1を勝っちまうなんてな。」


「古来はんが勝たせてくれたんでごわす。」


「生産者の古来さんか。たしかマルゼンエッジの馬運車で命を落とした・・・。」


「・・・・。」


「そのエッジもあの世からこのレースを見ているだろうな・・・。カツさん、菊花賞・・・ガンバレよ!」


「富士田・・・。」


「へへ、じゃあ、オレいくわ!」




                        :






          (パドック)



「おい、今日のオカダトップガンはやけに大人しいな・・・。」


「不気味だ・・・。何か悪いことでも起こらなければいいが・・・」


「鞍上の西郷は、初のG1制覇で勢いがあるしな、ここは一応おさえで買うか・・・。」


「穴党だねぇ~。」



                      :




「集合~!」




「よし!トップガン、いくでごわすよ!」



一礼してオカダトップガンにまたがった西郷の目に、小さな横断幕が飛び込んだ。






【おとーちゃん、がんばって!】



「ま、まさか?!」


横断幕の前で、車椅子の少年が手を振っているのが見える。


「タ、タカオ?!どうしてここに?!」


「へへ、カツさんの驚く顔って、おもしろーい!」


オカダトップガンを引く助手の沖田が、イタズラっぽく振り返った。







「こ、これはいったい・・・」


「水くさいじゃないですか、カツさん。あんなかわいい息子さんがいることを黙っていたなんて」


「な、なぜそれを?!」


「えいくんから聞きましたよ。それで、有田さんがオクサンとタカオくんを招待されたんです。」


「全然しらなかったでごわす・・・!」



「タカオくんは、カツさんが自分の父親だと聞いて、すごく喜んでるそうですよ。」


「えええええええ?!」


「今日のレースが終わったら、タカオくんの将来についてじっくり考えてあげてくださいね。」


「沖田クン・・・。」




「さあ、本馬場にいきましょう!って、・・・・ああ!

 ちょっと待て、トップガン!!! 





おおっと、突然オカダトップガンが走り出した、これは危ない危ない!ばんばのカツはなんとかしがみついてます!こんなところで全力疾走か?バカダトップガン!








「ヒエエエエエー!助けてーーーー!ヽ((◎д◎; ))ノ 」





(つづく)



「かあちゃん、早く!スーパーキッドが走るよ!」






「はいはい、すぐいくよ、タカオ。」

「今度こそ、キッドは勝つよね?!」

「そうね。頑張ってキッドを応援しようね。」

「ウン!」

「はい、タカオ。誕生日プレゼントよ。あけてごらんなさい。」

「え?プレゼント?ヤッター!」

「うわー、スーパーキッドの大きなぬいぐるみだ!」

「タカオはキッドの大ファンだって言ったら、カツ”おじさん”が送ってくれたんだよ。」

「カツおじちゃんが?やったー!」

「(・・・・アナタ、頑張って!)」


             :


  (10ヶ月前・高知市内の総合病院)




「コンコン」


「はい?どちらさま?」

「オイでごわす・・・。」

「アナタ!・・・」

「久しぶりでごわすな・・・。それで、ケガの具合はどうでごわすか?」

「それが―。」

「えっ?!タカオは右脚を切断した?!」

「ええ・・・。」

「・・・なんてことに・・・。」





「ねえ、おじちゃん、だあれ?」

「おお、タカオくんはじめまして。オイは、カツ”おじさん”でごわす。」

「ふーん、かーちゃん、ぼくらに親戚がいたんだね?知らなかったなー!」

「タカオくん、早くよくなるでごわすよ!」

「うん、カツおじちゃん、ありがとう!」

「じゃあ、オイはこのへんで・・・。オクサン、失礼するでごわす。」

「アナ・・・西郷さん・・・。」

「ガチャ!」

西郷が病室のドアを開けると、そこに一人の男が立っていた。

「ゴメン、聞いちゃったヨ。カツさん・・・。」

「えいくん?!なんでここに」

「僕だけ響牧場に残って、こうしてたまにタカオくんのお見舞いに来ているんです。」

「そうでごわすか・・・。」

「カツさん、タカオくんのお父さんなんですね?」

「・・・・。」

「なんで父親だと名乗らなかったんですか?」

「昔、高知競馬で騎乗していたころ、スナックのホステスだったアイツと知り合ってね・・・。」

「オクサンと?」

「やがてオイたちは結婚して、タカオが生まれたんでごわす。」

「それで?」

「知っての通り、高知競馬の三流騎手じゃ、手取りなんてスズメの涙。さらにある日ムシャクシャして同僚に手を出してしまい、長期の騎乗停止をくらったんでごわす。」

「・・・・。」

「それからオイの生活は荒れに荒れ、あいそをつかした嫁はオイと離婚してタカオを引き取ったというわけでごわす。」

「そうだったんですか・・・。」

「今日のことは、有田はんたちには言わないでたもんせ、えいくん!」

「は、はい。分かっています。」

「すまんね、えいくん・・・。」



             :

  (スプリンターズSゲート)




「(タカオ見てるか?”父さん”がもっと大きな誕生日プレゼントを届けてやるでごわす・・・)」


「おい、ばんばのカツさんよ!いいかげんあきらめたらどうだい?その馬じゃ勝てないよ。」

「うるさいでごわす!富士田、おまんのヘボ騎乗でマルゼンエッジは死んだんでごわす!」

「なにをー?!クッ、おぼえてろよ、おいぼれめ・・・。」






スプリンターズSのゲートインが始まっております。どの馬も手こずらせることなく入っていきます、さすがにここまで駒を進めてきた馬たちです。早くも全馬がゲートに収まりました。さあ気合いが入って...

「ガシャン!!」

スタートしましたっ!さあハナに行くのはどの馬か、行った行った、バクシンマツカゼ、速い速い、バクシンマツカゼがハナに行った!そのあとはロングキスナイト、押して上がっていったリボンストロー、一馬身開いてマケラーレン、並んで行ったマジックブルボン、また一馬身あってディフィカルティー、

ティッカネンホークが行って半馬身差ソースヤキソバが続いています。チャッピーカイザーも盛んに押して行ってオートレーサー、一馬身半差でクウキシャトル、さあ、最後方からスーパーキッド、スーパーキッドはここだ。前からは十二三馬身、かなり追っつけた状態で追走です、スーパーキッド、

さあ前はバクシンマツカゼでリードは二馬身、一騎突き抜けて先頭を行きます。二番手にはリボンストローがいてロングキスナイトがそのあと。マジックブルボン四番手に上がって半馬身差にマケラーレン、ディフィカルティー、ティッカネンホークと続いていきます。

先頭はバクシンマツカゼ、バクシンマツカゼが速い速い、他はちょっと付いて行けないのか、それとも控えているのか、早くも第三コーナーから第四コーナーへ、後続との差は四馬身と開いたか、ちょっとこれは速い、速すぎる感じ、

後続はどうか、リボンストロー手が動いて上がっていきたいところ、ロングキスナイトも盛んに手が動いて上がっていった、その後もずーっと差を詰めて来る、一気に動いてきた後方集団、さあ最終コーナーから直線、最後の直線だ、

バクシンマツカゼが先頭だ!リードは三馬身、ただ一騎、バクシンマツカゼが前を行くっ、詰めてきたかリボンストロー、リボンストローが懸命に詰めて来るかっ、直後からロングキスナイトも差を詰めてあとはちょっと切れた感じ、ちょっと切れた感じ!

バクシンマツカゼが先頭!徐々にリボンストローとロングキスナイト詰めて来るっ、詰めてきたぞこの二頭!さすがに一杯になったかバクシンマツカゼ、リボンストローとロングキスナイトが懸命にこれを追って迫ってくる!

バクシンマツカゼ、必死に踏ん張るっ、交わせるかリボンストロー、止まったか、止まったかリボンストロー脚色一緒になったか、ロングキスナイトが代わって三番手から二番手、バクシンマツカゼに迫った迫った!

バクシンマツカゼとロングキスナイト!バクシン踏ん張るっ、バクシン踏ん張るっ!交わせないかロングキスナイト、懸命にロングキスナイト追われているが差は縮まらないっ!さあバクシンマツカゼか、バクシンマツカゼか...!!!



ああっと、ああっと、大外から一頭、一気に、一気に、キッド、キッド、キッドぉ!!スーパーキッドがやって来たぁ!

「タカオォーーーー!」






ばんばのカツが雄たけび上げて、大外からスーパーキッドが飛んで来たぁ!これはケタ違いの脚、一気に前に迫ってくるがさあこれは届くのか?!






「ばんばのカツ!オマエにだけは負けん!」

ああっと、ロングキスナイト鞍上・富士田が、馬体をスーパーキッドにあわせにきた!







「富士田ー!!!」

さあ、キッドとナイトの壮絶な叩き合い!馬体が激しくぶつかり合って、意地と意地のぶつかり合いだ!








「今日だけは絶対に負けんでごわす!」


ばんばのカツが渾身の連打!千手観音のごとく、すさまじい数のムチが入る! 抜けた抜けた、スーパーキッドが抜け出した!


「くそ、おいぼれのどこにこんな力が!」



キッドだ、キッドだ、スーパーキッドがバクシンマツカゼをかわしにかかる!

スーパーキッド、外からスーパーキッドがバクシンマツカゼに並んできたところ今ぁ、ゴール、イン!!どうかどうかどうかぁ!!並んでいます、全く並んでいます外と内の二頭!

内はバクシンマツカゼ、外はスーパーキッド。見た感じ全く分かりませんでした!完全に同時に入ったように見えましたゴール板前。果たしてG1を制したのはどちらか。この大舞台、勝負は写真判定、写真判定にもつれ込みました!

(つづく)



「おふくろ、今日の夕飯はなんだい?」






「ハンバーグだよ。」

「やったね。いっただきまーす!」

「これ!先に手を洗っておいで!ほんと、いくつになっても子供なんだから、おまえは!」

「おい、かーちゃん!ビール冷えてないぞ!!!」

「ビールなんて買ってないよ!とーちゃんは少し禁酒したほうがいいからね!」


「ええええええええ!」


           :


「そうそう、プリンセスメールの入厩日が決まったんだってな?親父。」

「ああ。ようやくこの日が来たよ。あのこには古来ファームの未来が懸かっているからな。」

「大丈夫、きっとあのこなら活躍してくれるさ!なあ、おふくろ?」

「あたいは、無事に牧場に帰ってきてくれたら、それでいいよ。」







「かーちゃんはいつもこれだ!」





「ワハハハハ!」






           :




「ところで、”虎獅子”の調子はどうなんだ?」

「ああ、今日も元気に走り回っていたよ、親父。オレの勘だけど、”トラジシ”は結構走ると思うぜ。」

「ハハハ。ナムラコクオー産駒に期待するのは、酷ってもんだぞ。」

「トラジシの瞬発力は、プリンセスメールよりも上だと思うぜ。」

「1つ年上のプリンセスメールより上だって?そいつはすごいじゃないか!ねえ、とーちゃん?」


「ああ、そうだな。トラジシまで活躍してくれたら、古来ファームの未来は明るいな!ウハハハ。」

「チッ!信じてねぇな、この親父・・・。」





           :





「ウワアアアアアアア!」






テレビから大きな歓声があがり、古来夫人は目を覚ました。


さあ今日の主役、今日の一番人気、王者バクシンマツカゼの入場であります。父サクラバクシンオー譲りのスピードで、スプリント界の頂点に君臨しています。絶対的なスピードを誇る希代のスプリンター。もう説明は不用、鞍上は鬼才竹本豊!







「おや夢を見てたのかい・・・。おとーちゃん達、そろそろ始まるみたいだよ。」

そういって、古来夫人は二人の位牌から良く見える位置に、テレビの向きを変えた。


「ウワアアアアアアア!」






最後の登場になりますのは16番スーパーキッド。ああ、歓声が上がっているようですね。さすがに根強い人気があります同馬。 鞍上はばんばのカツ、神戸HC所有、生産牧場は旧・古来ファームです。





「ほら、おとーちゃん達、トラジシが映ったよ!見えるかい?」






亡きマルゼンエッジ、そしてミラクルスターと共にクラシック戦線を支えてきたスーパーキッド。安田記念以来、4ヶ月ぶりのレースですがどうでしょう。休み明けとはいえその能力は誰もが知るところ。最強の鬼脚は、王者バクシンマツカゼをとらえることができるのか?


さあ全馬16頭が出揃いましたスプリンターズS。発走は間もなくです!!!

(つづく)



  (栗東・スプリンターズS最終追いきり)


「あ、有田さん!こんにちは!」






「久しぶりだね、沖田くん!どうだい、スーパーキッドの調子は?」


「ええ、休み明けですがいい状態に仕上がってますよ。来週のスプリンターズS、期待できそうです!」


「そうか!そいつは楽しみだ。マスターは・・・あいかわらずグインにつきっきりかな?」


「ええ。菊花賞に向けて、グインを更に鍛え上げてますよ。ほら、あそこです。」


「やれやれ、またオカダトップガンと2頭追いか。」



「トップガンもグインに負けてませんよ。一夏越して、ガラッと大人びてきましたから。」


「ほ、ほんとかな・・・。」


「へへ、ちょっと言い過ぎたかも。じゃあ、僕はこのへんで。週末に競馬場で!」


「おう、またな!」






          :






「神戸HCさんもいらしてたんですか?」


「あ、成宮さん!ご無沙汰してます。」



「こちらこそ。どうです?キッドの調子は?驚きましたよ、スプリンターズSに出すんですってね?」


「ええ。菊花賞は長すぎますし、それに・・・成宮さんの秘蔵っ子がいますからね・・・。」


「ハハハ、たしかにうちのオーバーザワールドにとって、菊は最大のチャンスですよ。」


「菊花賞の前哨戦も楽勝でしたもんね?エッジがのりうつったかのような走りでしたね。」


「それはいいすぎですよ。でもマルゼンエッジと同じラムタラ産駒、彼の遺志を継ぐのが、うちのワールドだったら嬉しいですね。」


「マルゼンエッジの遺志を継ぐもの、ですか・・・。」


「もちろん、神戸HCさんのスーパーキッドにも、その資格はありますがね。」


「へへ、そういってもらえると嬉しいですね」


「スプリンターズS、楽しみにしてますよ!」



「プルルル!」




有田の携帯が鳴った。スーパーキッドとオカダトップガンの主戦騎手・西郷からである。



「はい、もしもし。カツさん?」


「有田はん、キッドの戦法どうしよう?」


「どうしようって・・・決まってるだろ?大外一気だよ。」


「いつもそれで失敗してるでごわす。今回もダメかもしれもはん・・・。」


「おいおい、やけに弱気だな!薩摩示現流はどうした?」


「オイは三流でごわすから・・・」


「そんなことはないぜ。多良崎が言ってたことは忘れるんだ。」


「しかし・・・。」


「キッドが勝つには大外一気しかない、そうだろ?」


「・・・。」


「信念を貫き通すんだ!」



「分かったでごわす・・・。有田はん、おかげで迷いがふっきれたでごわす。」


「”ばんばのカツ”さんよ、あんたは三流なんかじゃない。あの多良崎を見返してやろうぜ!」


「多良崎はん・・・。あの男に、オイの・・・、キッドの真の力を見せてやるでごわす!」











(つづく)





(六甲スタリオン)








「スーパーキッドは、またオイのせいで負けたんでごわす・・・。」






「カツさん、そう気にするな。」

「そうですよ!」


「オイの騎乗がヘタくそだから、負けたんでごわす。」

「まあ、今回は古馬相手だったからな。五着でもよくやった方だよ。」

「しかし・・・。」


「・・・・・。」


「多良崎さん、今日はやけに大人しいですね。」


「・・・・・。」


「どうした?腹の調子でも悪いのか?それより、下半期に向けてなんとか立て直しの策を練ろうぜ。」


「スーパーキッドは、どうします?有田さん。」

「えいくん、キッドはこのまま終わる馬じゃない。必ずG1タイトルを取ってくれるはずだ。」

「ええ。でも菊花賞は距離が長すぎますし、短距離路線も古馬の壁が厚いことが分かりました・・・。」

「菊花賞はオカダトップガンに任せよう。あいつの底なしのスタミナなら、掲示板くらい乗ってくれるかもしれないぜ。なあ、多良崎?」

「トップガン・・・。」

「本当に調子が悪そうだな?まあいい、それよりスーパーキッドのローテーションだが・・・。」

「おい、有田・・・。」

「ん?しんどいなら帰っていいぞ、多良崎。・・・で、スーパーキッドはスプリンターズSからマイルCSに向かうことにする!」

「や、やはり短距離路線ですか?しかも未経験のスプリント戦?!」


「そうだよ、えいくん。昨日、沖田くんとも電話で相談したんだ。」

「スプリンターズSか・・・。ちょっと驚きました。」


「おい、有田聞いてくれ・・・。」


「ん?だからどうしたんだ?多良崎。」


「多良崎さん、さっきから変ですよ?」

「オレは・・・・神戸HCを辞める。」


「ええ?!」

「多良崎おまえ・・・」


「すまない、みんな。」


「どうしてだ?病院の仕事が忙しいからか?」

「いや・・・そういうわけでは。」

「オカダトップガンはどうするんですか?多良崎さん!」

「・・・えいくん、すまない。」


「わけを聞かせてもらおうか、多良崎。」

「すまん、有田。これからも神戸HCの活躍を祈っているよ。じゃあな・・・。」


「おい待てよ、多良崎!」

「あぁ、多良崎さん、行っちゃった・・・。」


       (3週間後)


「ウワアアアアアア!」


さあ、きたきたきた!ミラクルスターがやってきた!一気に古馬をごぼう抜き!今ぁ、一着でゴールイン!


宝塚記念を制したのは、三歳馬・ミラクルスター!ダービーの屈辱を、仁川で晴らしました!


「ミラクルスターが宝塚を制したか!」


「有田さん、これは事件ですね!」

「いや、えいくん、ミラクルスターは10年に1頭の逸材。たとえ歴戦の古馬達だろうと、スターに勝てるヤツはいないと思ってたよ。」

「有田さん・・・。」

「ダービーでの惨敗は、輸送の負荷が大きかっただけのこと。まともなら、ヤツこそがダービー馬になっていただろう。」


「・・・・。」


「マルゼンエッジとミラクルスター、どちらが本当に強かったのか・・・それは誰にも分からないさ。」


「じゃあ、僕たちの目標は、打倒・ミラクルスターってわけですね!」

「その通り、えいくん!王者・ミラクルスターを倒すことが、俺たちの目標だ!」

「あれ・・・あのウイナーズサークルに立ってる馬主さんを見てください!」

「ん?レッドバロン総帥のガミラス・トモミだろ?またド派手な衣装で登場・・・・」

「多良崎?!    (((゜д゜;))) 」
「多良崎さん?! (((゜д゜;))) 」


「勝利馬主インタビューです。多良崎さん、一言お願いします」

「まあ、順当勝ち、といったところでしょうね。」

「おお、大胆発言!古馬ですらミラクルスターの敵ではない、ということですか?!」

「ミラクルスターのライバルは、マルゼンエッジだけですからね。あとは・・・」

「あとは・・・?」

「スーパーキッド。」

「スーパーキッド?あの安田記念で惨敗した馬をライバル視してるのですか?」

「ええ。あの馬の力はあんなものじゃないと思いますよ。」

「では、そのスーパーキッド陣営に一言どうぞ!」

「神戸HC、見てるか?マイルCSで待ってるぞ。」


「以上、レッドバロンHCの多良崎さんでした。実況席どうぞ。」








            :


「多良崎がレッドバロンに?!」


「有田さん!これはいったい、どういうことでしょう?!」


「最高のパートナーが・・・最強の敵になった、ってわけさ・・・。 (-゛-;) 」





「えええええええええ!(((゜д゜;))) 」 





(つづく)




     (安田記念馬主席)






「ねえ・・・、レッドバロンに来ない?」





                 :





「ハア・・・・。」


「ため息なんてついてどうした、多良崎?もうすぐ本馬場入場だぞ。」


「分かった。すぐ行くよ、有田。」

「元気ないな。何かあったのか?」

「いや・・・別に。」

「ならいいんだが。それよりも、富士川厩舎が大変なことになってるらしいぞ。」

「え?」

「ダービーを制覇しちゃったもんだから、入厩希望馬がドッと押し寄せてるらしい。」

「チッ、馬鹿野郎ばかりだな。」

「マスターの野郎、”キッドとトップガン以外は面倒見れマセン”って電話してきやがってさ・・。」

「あのオージー野郎、調子に乗りやがって・・・。」

「だろう?ヤキを入れに行こうとしたら、入れ替わりに”例の”伊藤先生から電話が入ってさ。うちの馬たちを預かりたいだと。いったいどういう風の吹き回しなんだろうね。」

「そ、それは良かった、アハハ・・・。」


「おっと、そろそろ時間だ。行こうぜ、多良崎!ついに俺たち神戸HCも、G1馬主の仲間入りだ、ワハハハ!」




         (本馬場入場)


ダービーの余韻が残る東京競馬場、本日のメインは安田記念、グレードワン。絶好の天候に恵まれまして出走馬16頭、各馬本馬場に出てくるところであります。

それでは早速紹介していきましょう。まず一番はお馴染みマッドヘリオス。例によってうるさいところを見せていますが……ああ、ちょっと大観衆の前で気が立っているようですねぇ。これがこの馬のウリと言えばウリなのですが。さあ今日も逃げて逃げてG1タイトルを奪うことが出来るかどうか。鞍上は松長騎手、前走は雷光S、2着。

                 :

リボンストローは前々走で重賞を勝っています。さあ今度こそ勝ってフロックの疑いを晴らせ、鞍上は下手田騎手。前走は雷光S10着。

                 :


チャッピーカイザーが入ってきました。天才竹本豊とのコンビ。十分勝ちに手の届く所にいる一頭、何より鞍上が魅力です。前走は西瓜賞、1着。

                 :

十一番はポケットスプリング。重賞戦線でも上位に来る実力馬。勝ちきれないのが難点でありますが今回は気合いも入って良い感じに見えます。鞍上は不幸騎手、

                 :

さあオートレーサーが入ってきました。今回のマイル戦、距離延長がどう出るか。四番人気に指示された同馬、力はあります。鞍上は服永騎手、前走は雷光S、3着。

                 :

ネーハイシーザー産駒のマキシは十四番。前走は距離短縮でしたが4着と健闘。短距離二戦目となる今回、どんな走りをしてくれるのか。適距離がまだ不明なだけに恐い存在だ、鞍上は名手川内。

さあ歓声が上がりました。スーパーキッドの入場であります。皐月賞からここに駒を進めてきました、戦友マルゼンエッジの弔い合戦とばかり、古馬に真っ向勝負を挑みます。マイル実績もありまして、ここは一番人気に支持されています。神戸HCに悲願のG1を運んでくることが出来るかどうか。鞍上は西郷騎手。前走は皐月賞、5着。

そして、最後の入場は常勝軍団・レッドバロンHCが誇るマイル王、トモミナンバーワン!鞍上は天下の岡辺。前走は雷光S、一着。




          (解説席)


吠々アナ:ジーワン連発で忙しくなりますがよろしくお願いします。

紀ノ川解説員:はいはい。

吠々アナ:では早速ですが、今週の「馬鹿に見える馬」を一頭挙げてもらいたいと思います。


紀ノ川解説員:…まあ「バカ」という意味ではマッドヘリオスですが、良く見えるのはトモミナンバーワンですかね。スーパーキッドは三歳馬ですから、ちょっとローテーション的に気に入らない。皐月賞で厳しい競馬をしてますしね。

吠々アナ:なるほど。ヘリオスは相変わらずうるさいところを見せているようですが……そうですか。トモミナンバーワンですか。

紀ノ川解説員:後はマキシなんかが良いんじゃないでしょうか。これもネーハイシーザー産駒ですね。

吠々アナ:展開なんかはどうでしょう。

紀ノ川解説員:やっぱり逃げるんでしょうね、マッドヘリオスが。今日の様子だとまた暴走しそうですが、どこまで持つか。基本的にマイルはベストなんでしょうが。

吠々アナ:そうなると後ろの馬が有利ということでしょうか?

紀ノ川解説員:それを考慮してのスーパーキッド本命なんですが。ただ前走のようにまたマスター富士川が何を企んでいるか分かりませんからね。必ずしも後方から行くとは限りません。

吠々アナ「何もしなくても勝てる」と、また自信ありげなコメントをしていますが。

紀ノ川解説員:いつものことですね。いつもだから気にしてはいけません。惑わされるだけ損というものです。

吠々アナ:分かりました。ではまとめてもらいましょう。

紀ノ川解説員:マッドヘリオスが飛ばしに飛ばしてトモミナンバーワンも前目に付ける。キッドは中団以降。直線一杯になったヘリオスをトモミが交わして、さらにこれをキッドが差しきってゴール。まあ簡単な話です。

吠々アナ:ほう、いつになく確信に満ちたコメントですね。

紀ノ川解説員:外れても関係ないし。

吠々アナ:……。

紀ノ川解説員:あと、今日の様子ならマキシも抑えときましょう。

吠々アナ:分かりました。有り難うございました。では実況にマイクを返しましょう。











「ウワアアアアアア!」


さあ東京競馬場、沸きに沸いております。安田記念、グレードワン。ゲート入りが始まっております。

一番人気はスーパーキッドで3.0倍。トモミナンバーワンが4.5倍で二番人気。その後にマッドヘリオスが続いて5.5倍です。

スーパーキッドがタイトルを手にするのか、それともトモミナンバーワンが昨秋のマイルCSに続いてここも連覇するのか。はたまたマッドヘリオスがすんなり押し切ってしまうのか。

さあゲートイン完了です。

「ガシャン!!」



スタートしましたっ!ちょっとバラけたスタート、リボンストロー好ダッシュか、マッドヘリオスはちょっとスタートが悪かったようですが……それでも行った!

さあマッドヘリオスが押して押して先頭に行った!リボンストローも負けずに行きます、負けずに押してリボンストローも行った!三番手からキタノオリヒメ、トモミナンバーワンもこれに付いていって前は速いペースになりそうです、

先頭はマッドヘリオス、半馬身差にリボンストローが付けて、その後キタノオリヒメが一馬身差。トモミナンバーワンずーっと内に入ってきて四番手。ポルタヴィヨン、チャッピーカイザーと行って、オートレーサーがここにいます。

外目からマキシ、マキシと川内が行きます。サファリパークが押してこの後、レイニングプレイズ、ポケットスプリングが並んでいきます。

アローヘッド、ノーブルグレイがこのあたり、さあいました、ここにいましたスーパーキッド、キッドは後方手。ちょっとその後ちぎれてイイノインザワープとユウテンリュウが行っています。さあこれで16頭、縦長の展開、縦長に進んでおります安田記念。

先頭はマッドヘリオス、このあたり、リードを二馬身から二馬身半と取って、二番手にリボンストロー控えた形。キタノオリヒメ懸命に押しますがこれから二馬身差の三番手。

トモミナンバーワン直後、オートレーサーは中団、そしてスーパーキッド、キッドはまだ後ろ、先頭から十馬身以上後ろにいる!

さあ前はマッドヘリオス、早くも第三コーナーから第四コーナー、ペースは速い、ペースは速いぞマッドヘリオス、このまま押し切れば相当なもの、後ろも差を詰めたいところ、トモミナンバーワンが四番手から三番手に上がってくるか、

いよいよ最終コーナー、トモミナンバーワンが上がっていった!後続もぐーっと差を詰めてきて、さあこれは溜めたのか、マッドヘリオス、リードが縮まってリボンストロー以下が詰めてくる、スーパーキッドは大外、キッドは今日も大外から上がっていきます!



さあ、最後の直線!最後の直線!




マッドヘリオス先頭だ!リボンストローの外からトモミナンバーワンが来る、トモミナンバーワンが差を詰めてくる!オートレーサーも外目、さらにはマキシといったところ、スーパーキッドは今日も大外だ!

先頭はマッドヘリオス!トモミナンバーワンが来る!トモミナンバーワンが来た!その後オートレーサー来ているが、更に外からマキシが伸びた! マキシが外から突っ込んでくる!

ヘリオス先頭!ヘリオス先頭!トモミが並んでくる、外からマキシでこの三頭抜けてくるか、キッドは大外、キッドは大外、

頑張ったマッドヘリオス、さあトモミが並んだ!トモミが並んで交わせるか、外からマキシ来たぁ!マキシがこれらに並んで来るぞゴール板前、キッドは伸びないか、キッドにいつもの切れがない!キッドはまだ五番手あたり!

さあ前は三頭並んだ!マッドヘリオス、トモミナンバーワン、ああっ、外からマキシ代わるか今ゴールイン!!

「ウワアアアアアア!」

マキシ!マキシ!勝ったのはなんとマキシです!粘りに粘ったマッドヘリオス、食い下がるトモミナンバーワンを見事に差しきりました!最後の最後でもう一伸びしたマキシ!


ネーハイシーザー産駒はトモミだけではない!外来種の席巻著しい競馬界、純和風血統がまたもやマイルの頂点に立ちました!


四着はオートレーサー、どうやら一番人気のスーパーキッドは五着!キッドは古馬の牙城を崩すことができませんでした!

(つづく)




「ミ、ミラクルスターが、負けた・・・・バタン!」






「オ、オイ!大丈夫か?ガッツ?!」




「ごめんなさい、少し目眩がしただけ。少し横になればよくなるわ。」


「顔色が悪いぞ・・・。」


「大丈夫・・・。ごめんなさい。」



「送っていこう。宿は?」


「し・・・品川プリンス」




   (3時間後)




「ハッ!ここは?」



「気がついたか?ホテルのあんたの部屋だよ。」


「た、多良崎・・・さん。じゃあ、あのまま私は気をうしなったの?」


「ああ。ホテルまで運んだってわけ。」


「・・・ごめんなさい。セバスチャンは?」


「ああ、競馬場でアンタを探し回ってたようだ。すぐにこの部屋に駆けつけてくれたよ。今、下のレストランに買出しにいってくれてるんだ。」


「そう・・・」



「全く、たいしたヤツだよ、ガッツさん。ミラクルスターが失踪してから丸1日、ほうぼう探し回ったらしいな。水も一滴も飲んでないって、セバスチャンも呆れてたぜ。」


「・・・・。」



「あんたも愛馬を思う気持ちはハンパじゃないってことか。」


「あの子は私の、レッドバロンの希望だったのよ。」


「だった?」


「そう。今日のレースがあんな結果に終わるなんて・・・。」


「らしくないな。まだチャンスはいくらでもあるじゃないか。」


「え?」


「おたくのミラクルスターは、もう二度と走れないのかい?」



「いいえ。でも二度と勝てないかもね・・・。」


「冗談はよせ。レースに出れるだけで、幸せだってことがわからないのか?」


「・・・・。」




「マルゼンエッジは予後不良だ。」


「え?!」


「安楽死処分がとられたらしい。さっきニュースで流れてたよ。」


「そ、そんな・・・。」


「あんたの馬は、ミラクルスターは、強い。マルゼンエッジ亡き今、その遺志をつげる馬はミラクルスターしかいないんじゃないか?」


「エッジの遺志・・・。」


「落ち込んでるヒマはないんだぜ、トモミさん。」


「・・・多良崎さん。」


        :



「おっと、そろそろオレはおいとまするよ。腹が減ってきちまった。」


「あ、ちょっと待って!」


「ん?」


「銀座の高級寿司なんてどうかしら?私もおなかペコペコ!」


「・・・・そこ、高いのか?」


「ムッ!それぐらい、私がもちます!」


「ほんとか?!」


「さあ、いきましょう!」




   (銀座・久兵衛)



「どう?おいしいでしょう?ここのギョクが大好きなの。」


「おいおい、久兵衛つったらウニの軍艦巻きだろう?ここが発祥なんだぜ。」


「ちょっと、なに?あなたこの店来た事あるの?」


「ああ。岡田先生・・・おれの恩師がここのご主人と昔なじみでね。若い頃、三宮に修行に来ていた頃からの仲らしいんだよ。」


「へぇ!もしかしてオカダトップガンの”オカダ”って、その先生からいただいたの?」


「ああ。先生は馬主でね。ダービーを制するのが夢だったのさ。」


「ダービーはみんなの夢ですものね・・・。」



「まあな。でも、おれは別にどうでもいいや。あいつらが無事に走ってくれたら、それだけでいい。」


「・・・・。」


「あ、こっちに茶碗蒸しをください。」


「私も!」



        :


「フー、結構くったな。本当におごりでいいんだな?」


「何度も確認しないでよ・・・」


「わりぃなぁ。ガミラス・トモミさん、あんたを見直したぜ。」


「どうも。それより、ちょっとタクシーでドライブしない?」


「へ?これ以上どこに行くんだい?」


「いいから、さあ早く!」


「(ま、まさか・・・この展開は・・・)」


「早く乗ってよ、多良崎さん!」


「(うーん、マズイ!マズイぞ、オレ!)」


        :



「キキー!」


「着いたわ!」


「随分遠くまで来たなぁ。そんなにいいホテルがあるのか?」


「何言ってるの?さあ、見つからないうちに早く入ろ!」


「ガッツ・・・いや、トモミさん!オレたちもう少し時間をかけて、理解しあった方がいいんじゃないかな・・。」


「何ブツブツ言ってるの?忍び込むわよ、手を貸して!」


「忍び込むって・・・、ここは?」


「東京競馬場よ。」


「ええええええええ!」



        :



「もう清掃も終わってるようね。誰もいないわ。」


「夜の競馬場か・・・不気味なほど静かだな。」



「そうね。でも、まだかすかに、ダービーの余韻が残ってるわ。」





多良崎とトモミはちょうどゴール板前の芝生に座って空を見上げた。


「月が綺麗ね・・・。」


「ああ。」



「不思議。ここに座っていると、なんだかマルゼンエッジがそばにいるみたい。」


「ああ。おれも感じるよ。エッジは死んでなんかいない。エッジはたしかに、ここにいる。ヤツは、おれたちの中で生き続けているんだ・・・。」


「・・・多良崎さん、私ミラクルスターともう一度再スタートをきるわ。」


「トモミ・・・さん。」


「ええ。マルゼンエッジの遺志をついでみせるわ。」


「そうか。安心したよ。」


多良崎は、自分でもハッキリとそういったかは覚えていない。

気がついたときには、多良崎の腕の中で、トモミが少女のように喘いでいた。



(つづく)