古来の納骨式が無事にすんだ日の晩、有田と多良崎は六甲山頂に鎮座する「天狗岩」へとむかった。






「天狗岩」は、神戸の【100万ドルの夜景】を一望できる高台の名所である。



      kobe

「おぉ。天気がいいと、対岸の関西空港まで見えるんだな。」 有田が声をあげた。


「この辺にしようぜ、有田。」

有田は古来の遺骨が納められた小瓶を丁寧に取り出した。


「ここなら古来のオヤジも喜んでくれるだろう。」

二人は「天狗岩」の山頂付近に、古来の遺骨を埋葬した。

「たまに遊びにくるよ。オヤジさん。」

「ここで、神戸の活躍をみていてくれ・・・。」


      :


それから3日後、六甲スタリオンの玄関にタクシーが停まり、少しやつれた栄太郎が降り立った。


「みなさん、ただいま戻りました。」

「お、えいくん。帰ってきたか!」

「遅くなってすみません、おかげでゆっくりできました。」


「オヤジさんのことは、少し落ち着いたようだな。」

「はい、多良崎さん。」

「ぼちぼちやっていこうぜ!」

「はい。」

   :



「有田さん、多良崎さん。」

「ん?」


「響牧場で、マルゼンエッジの世話をしてきましたよ。」

「エッジの世話?!つらくはなかったのか?」

「今度の事故はエッジには何の責任もないですから。」

「そりゃ、そうだが・・・。」


「マルゼンエッジは、チャンピオン杯の疲労がかなり濃いようです。」

「ほう。」

「カイバもろくに食べませんし、馬体重も出走時から20kg近く落ちてました。」

「激走の反動か・・・。」


「生来、脚元の弱い子のようなので、戦線復帰はだいぶ先になりそうですね。」

「そんなに悪いのか?」


「ええ。父も、皐月賞に間に合うか微妙だ、と言ってました。」

「そうか。えいくん、古来さんの死でツライときにすまないね・・・。」

「いいえ。僕はオヤジさんと約束したんです。二人で最強馬を産みだそうって」

「最強馬・・・」

「はい。それで、マルゼンエッジから何か学べるものがないか、自分なりに観察してきたんです。」

「えいくん・・・。」

「マルゼンエッジの強さは高い心肺能力もさることながら、その脚に秘密があったんです。」


「脚に秘密?」

「エッジの脚には特徴があって、”つなぎ”の部分が、異常なまでに柔らかいんです。」

「”つなぎ”?」

「”つなぎ”とは人間のくるぶしにあたる箇所で、球節と呼ばれる関節の部分です。 」

「ほう。」

「マルゼンエッジの脚は、10万頭に1頭いるかどうか、という珍しい脚のようです。」

「10万頭?!」 多良崎が思わず声をあげた。

「”つなぎ”がクッションのように柔らかいので、エッジの歩様は弾んでるように見えるんです。」

「たしかに、チャンピオン杯のパドックで、ヤツの歩様が気になっていたんだよ。」

「球節が柔らかいことで、トモの蹴っぱりに弾力が増し、あの爆発的なスピードを生み出しているんです。」

「なるほど・・・。」

「しかし、この”つなぎの柔らかさ”は、エッジにとって”諸刃の剣”でもあるんです。」




「・・・驚いたよ、よくそこまで調べたな。まさに、”男子三日会わざれば、刮目して見よ”だな。」


「頼りのオヤジさんは、もういませんからね・・・。オヤジさんの遺志は、僕が継がないと!」

「天国のオヤジさんもきっと喜んでくれてるよ。えいくん、頼りにしてるぞ!」

「はい!」


「ひとつ聞いてもいいか?」 横で聞いていた多良崎が割って入った。






「なんでしょう?多良崎さん。」





「結局、どうすればマルゼンエッジに勝てるんだ?」

「そ、それは・・・きっとマスターが考えてくれますよ! (^▽^;)」





(栗東・富士川厩舎)




「ヘックション! (><;) 」











(つづく)