チャンピオン杯の打ち上げも兼ね、神戸HCの忘年会が有馬の料亭で盛大に執り行われていた。
「それでは、乾杯の音頭をマスター富士川、お願いします!」
「イエッサー!」
「え~・・・。思い起こせば、神戸さんと出会ったのは、夏の木漏れ日がまぶしい静内・・・」
「城崎のキャバクラだろ! (第6話)」
「・・・オッホン!それでは気を取り直して、スーパーキッドのG1レース2着に乾杯!!!」
「乾杯!」
「ワイワイガヤガヤ」
「いやー、今年は充実した1年だったよ。」有田がビールをついでまわる。
「沖田くん、グリーンワールドが世話になったね。来年もうちの馬たちをよろしくたのんだよ!」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
「牧場も開設したし、来年はワシらの飛躍の年にしようじゃないか!」 古来が笑った。
「打倒・レッドバロンでごわす!」 ばんばのカツも気勢をあげた。
「ワイワイガヤガヤ」
「・・・・・・。」
「あれ?多良崎さんどうしたんですか?さっきから一言もしゃべってないようですけど?」 栄太郎が多良崎に声をかけた。
「・・・・。みんな、何か忘れていないか・・・。」
「ん?何をだ?」 有田が声をかけた。
「あ・・!もしかしてヌルハチのことでごわすか?」 ばんばのカツの一言に、場が静まり返った。
「トップガンか・・・。」
「そうだよ!デビューの目処すら立たないなんて、どういうことだよ・・・」
「まあまあ。そのうちデビューできるって。心配するな、多良崎。」
「そのうちっていつだよ?!」
「プッ!ギャヤハハハハ!」 マスター富士川が我慢しきれずに吹き出した。それまで我慢していた一同も、いっせいに笑いころげた。
「き、きさまら?!」
「デビューできないのは、ミーのせいではアリマセーン!」
「てめー、富士川!この野郎!」
「101回もゲート試験に落ちる馬なんて、聞いたことナイデス!」
「ムカツ・・・100回だよ!西郷!トップガンはおまえのお手馬だろう?黙ってないでなんとか言え!」
「なんのことでごわす?」
「て、てめー!岩見沢で”オイにはヌルハチが必要でごわす”って言っただろ?!」
「オイにはスーパーキッドが必要でごわす。」
「コ、コロス・・・」
「ウハハハハ!」
「ムキー!おれは帰らせてもらうぜ!」 そういうと多良崎は宴会場を後にしてしまった。
「あらら・・・ほんとに気が短いね、アイツは。」 有田が笑いながら茶碗蒸をかきこんだ。
「ねえ、カツさん。一度ゲート試験に騎乗してあげたら?」
「沖田はん・・・。」
「多良崎が機嫌悪いと、何をしでかすかわからんからな。オレからもひとつよろしく頼むよ。」
「有田はん・・・。わかったでごわすよ。」
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「ん?何を考え込んでるんだ、えいくん。」
「古来のオヤジさん・・・。別に・・・。」
「なんでもいってみろ」
「マルゼンエッジ・・・あんなに強い馬がいるなんて。」
「ん?」
「あんなすごい馬をみたら、なんだか自信がなくなっちゃって・・・。」
「ハハハ。たしかに強い馬だな、マルゼンエッジは。」
「僕らがどんなにがんばろうと、あの馬を超える馬は生産できないんじゃ・・・。」
「どうやらきみは、多良崎さんと同じ悲観論者のようだな。」
「そういうわけじゃないですが。エッジはなんというか、今まで見たどんな馬とも違うような・・・」
「・・・最強馬、か。」
「ええ・・・。エッジこそが史上最強馬なのでは・・・。」
「”最高の絵画はまだ描かれていない.最高の脚本はまだ書かれていない”って名言を聞いたことがないか?」
「え?」
「すでに成し遂げられてしまったものなど、何一つとしてない。世界中のすべてのものは、
これから成し遂げられるのを待っているってことさ。」
「これから成し遂げられるのを待っている・・・」
「そう。マルゼンエッジが最強馬なら、おれたちはこの先、なんのために馬を生産する?」
「オヤジさん・・・。」
「最強馬なんてものは、まだどこにもいないのさ。なあ、えいくんよ。最強馬はわしらの手で産みだされるのを待っているんだ!素晴らしきかな未来!だよ。」
「古来のオヤジさん・・・」
「 ちょっと待ったー!史上最強馬は、オカダトップガンだ!!!」
「多良崎さん?!戻ってきたんですか!」
「多良崎。トップガンは、史上最強馬「鹿」だろ?」
「ワハハハハハ!」
(つづく)