「グリーンワールド、無事帰還しましたよ!」









トレセンに止まった真っ白な馬運車から、沖田が嬉しそうに顔を出した。


「おかえり!待ってたよ!」 有田と多良崎が出迎えた。


「それにしても、この馬運車は快適そのものですよ!”メルセデスの馬運車”なんて、初めて乗りました!」

「そうだろ?世界に7台しかないんだぜ。」有田が胸を張った。

「本業がうまくいってるとはいえ、少し散財しすぎだろ?」 多良崎は苦い顔。

「おかげで、グリもストレスなく帰ってくることができました。さあ、これからみっちり鍛え直しますよ!」

「沖田くん、頼んだよ!」

「沖田クーン、ご苦労サマ!」 やや遅れて、マスター富士川も小走りにやってきた。

そのとき、真っ赤な馬運車がマスター富士川のすぐ横をかすめ、急停車した。


「キキーッ!!!」


「うわー!」

「マスター!危ない!」

「モウ!どこ見てるんデスカ!」


「見ろよ、有田。真っ赤な馬運車だぜ・・・。」

「ま、まさか、”赤い彗星”が出てくるんじゃ・・・?」

「・・・・あのエンブレム!あれは”フェラーリの馬運車”ですね。」

「なに?!どこのどいつだ?!見栄っぱりめ!」

「有田、お前が言うな・・・。」


真っ赤に燃えるフェラリーの馬運車から、1頭の馬がおりてきた。

「ああ!リエマリア!」 富士川が叫ぶ。

「すげえ、馬を見ただけでどの馬か分かるんだ・・・。」

「あたり前デス!”天才”調教師をなめたらあかんゼヨ!」

「つ、ついにリエマリアも復帰か・・・!」 沖田の目に闘志がみなぎった。

「おもしろい!役者が揃ったじゃないか!」 勝負師・有田も楽しそうに笑った。

「さあ。同じフジキセキ産駒、どっちがNo1か勝負だな。」  


翌日、さっそく沖田とグリーンワールドは、ウッドコースを流して患部の感触をたしかめた。

『これならイケる!ありがとう・・・響さん!』

「いいかんじだね!グリ。」

すると、1頭の馬が併走してきた。

『おかえりなさい』

『アクエリアス!』 グリーンワールドは故障の原因ともなったライバルを睨みつけた。

『脚はもう大丈夫?』

『よくも・・・』

『ごめんなさい。貴女が位置取り・仕掛けが未熟なのは分かっていたから、わざと進路を邪魔したの。でも怪我をさせる気なんてなかったのよ。』

『・・・。』

『でも、アナタの最後まで勝負を捨てない走りには驚いたわ。』

『アクエリアス・・・。』


『出たいんでしょ?秋華賞?』

『も、もちろん・・・!』

『じゃあ、まずはトライアルに向けて特訓ね!私がみっちりしごいてあげる。』

『特訓・・・』

『素質だけでは勝てないのよ、G1は・・・』


『ちょっと?私もまぜてもらえないかしら。』

戦線復帰をはたしたリエマリアが、割って入ってきた。

『私にとって、最初で最後の3冠レース・・・。悪いけど、貴女たちには負けないわ』

『リエマリア・・・。私だって負けないわよ!』


「おい、見ろよ!豪華な3頭追いだな!」 朝もやに浮かんだ3頭の影を見た記者たちが驚きの声をあげた。


「こ、こら!グリ!ムリしちゃダメだよ!」 沖田が嬉しそうに手綱をしぼった。

(つづく)