秩父市在住の友人、金整司さんは私より3つ年長で、私が大学に入学した年、韓国の大学に留学していた金さんは民主化運動に参加し、逮捕され、政治犯として光州刑務所に投獄されていました。

 やはり6年もの長きにわたって別の刑務所に投獄されていた私のもう1人の知人(故人)、といっても親の世代にあたる優秀な研究者ですが、その方とのちに同じ日に釈放されて、日本に戻ってきたそうです。

 その共通の知人の縁で知り合ったのは5年くらい前ですから、もう60年を過ぎた人生の中では最近のことと言っていいくらいです。

 しかし、いつぞや、私のいささか騒がしい人生の中でも滅多にないくらいの激しい口論もして、一度絶交、いまは感覚的に地雷探知機が働くようになっている感じでしょうか。

 金さんが大学に進んだ1970代、韓国は朴正煕の軍事政権下でした。北朝鮮スパイなどの冤罪で韓国で逮捕された在日韓国人は大勢いて、金さんは2010年代初めから自身を含めて再審により冤罪を晴らす活動を続けていました。

 最近、精力的に取り組んでいるのが韓国の社会派映画の上映で、2020年2月15日に中野区のZERO小ホールで開催予定の「5.18ヒンツペーターストーリー」上映会もその一つです。


 ドイツ第一公営放送テレビカメラマンだったユルゲン・ヒンツペーター氏が1980年5月に流血の光州事件の現場に潜入して撮影したものだそうです。これはジャーナリストとして私自身も観てみたい作品です。

 上映会など人前では多くを語ってこなかった金氏ですが、この事件が起きた背景については大勢に語り伝えたいことがあるようです。

「韓国は闘って民主化を勝ちとった。私は生まれ育った日本を愛しているけど、権力と闘わないマスコミばかりで大丈夫か」

 要約するとそんな風に言えるでしょうか。最近の安倍政権とメディアの関係です。

 金さんおすすめのコーヒー店「千茶古(ちゃこ)」で食事したあと、自宅に立ち寄って名人の器で「日本茶」をいただき、自家製の干し柿を手土産にもらいました。

 私がご朱印帳を持っているのを知って、駅に向かう途中、秩父の最新パワースポットといわれる今宮神社に案内してくれました。金さん、ありがとう。