音も無く延々と渡るる廊下とすれ違う白装束の耳障るるハングルやイングリッシュやら抜き言葉や秋田弁やら
突き当たる無人の事務所の緑を帯びた遮光の中で延々と鳴り止まぬ固定電話の警鐘に目を閉じて天を仰ぐ
階下のファクトリィで吹き荒れる無価値という名の暴力…それは延々と繰り返す煮炊きと瞬間冷凍とパッキングと三現主義の惨劇と悪夢
『物を造る仕事が不況なら』
『ものを大切にする仕事をすればいいじゃないか』
売上も成果も人手も家族の笑顔も足りない消費サイクルの中で延々と繰り返す悪夢と白昼夢…
歩みを止めたら
何処までも堕ちていく
見続けられるなら
真昼の悪夢でも構わない
その悪夢に
続きがあるのならば…
お得意様にプレゼンの名目で冷凍精肉を牛にも拘わらずトン単位で押し売りに行く。
愛車ハイエースに約800kg
同行する上司のADバンに約300kg
ペダルを踏む足元から這い昇る冷気に800kg相当たる牛々の無念を感じつつ
6月並の陽気の中にあって冷房要らずで快調に横須賀のお得意様の元に到着する。
『いゃあ、本当にごめん』
『納品のエレベーター…壊れちゃって(笑)』
かれこれ10年越しのお付き合いになるお得意様は春休みで遊びに来ていた孫の姿に相好(そうごう)を崩しながらも
齢60の糸よりも細い瞼の奥からぞくりとする様な冷たい視線を投げかけて来る。きっと人の一人や二人は殺めているに違いない。
(N:『…しろばんばって読まれました?』)
(上司:『…とっと運べ!』)
かくして
1ケース約25kg、コールドスリープ状態の牛々を雑居ビル5階の大型冷凍室まで運び込む羽目になった。
人がすれ違うのがやっとという狭い階段を25kgの冷たい牛を抱きしめつつ黙々と登る。
5階の奥の大型冷凍室の更に奥深く…凍てつく空気に足元をとられつつも1頭安置♪
3頭目を安置した時点で全身から汗が噴き出し始め
5頭目で膝が…全身の筋肉がガクガクと笑い始める。
10頭(ケース)を過ぎた所でハゲ上司(失礼)が『俺実はヘルニアなんだ』と弱音を吐いて脱落。
N:『ハゲ上司(失礼)め!ハゲ(失礼)の上に仮病か!このハゲ(失礼)め!』
人を呪わば穴二つ…そんな事は口が裂けても穴を掘っても言える訳も無く(注:ハゲていませんから)
ニッコリと笑顔で再び牛を霊安所(失礼)に運び始める。
残るは30と数ケース…この時既に時刻は16時を回り、間もなく訪れるであろう逢魔刻とその冷気が辺りに充ち始めていた…
約3時間後…辺りがすっかり夕闇と冷気に包まれた頃
5階奥の大型冷凍室のその奥で40と数ケースの冷凍牛々を前に不本意ながら凍り付いた床に寝そべる独りの漢(おとこ)の姿がそこにあった。
(N:『…駄目だ、今動くとリ・バースしてしまう…』)
冷機のスイッチを一次的に弱めているとはいえ、汗だくのシャツが次第に凍り付くのを判りつつも身動きが出来ない。
今頃、お得意様は孫達をつれて出掛けている頃であろうし
ハゲ(上司)は『肉のプレゼン』と称して解凍した牛々を供養しつつ、得意先の娘さん達に品性と知性のかけらも無いセクハラはげ…発言を無闇に連発しているに相違無い。実に羨ま…無念である。
口惜しさに袖を濡らしつて数億の雑菌と共に凍り付いた床にあられもない態勢で寝そべるわたくしの耳に
冷凍室の入口に近付いて来る微かな足音…やがて足音は入口付近で立ち止まった。
N:『入って来いよ…だらし無い姿を見せてやる。可愛い子ちゃん(死語)なら尚更歓迎だぜ…』疲労に蝕まれた思考はもはや常軌を逸していた。
『…』
わたくしの悪意に満ちた強烈な念を察知してか、入口の主はしばし無言のまま立ち尽くし…
『バタンッ』
冷凍室のドアが閉まり刹那、辺りは暗闇に包まれる。
『ゴオォォッ』
当然の様に冷機が全快で稼動されてブリザードの如き強風と冷気が吹き荒れる。
N:『ぉぉ~ぃ…』
誰の応(いら)えがあるはずも無く『THE THING(邦題:遊星からの物体X)』ばりに只々凍るに身を任せる…
『…言っておきたい事が~』
『…今更聞いてもしょうが無いよ』
映画のラストシーンと最後の台詞がフラッシュバックする。
そんな時
不意にケイタイ電話が鳴った…ハゲ(上司様)からだ!
『お前いつまでもトロトロやってんじゃないぞ!』
『美味しいお肉もお姉さん達もお待ちだぞぅ?ん?』
ハゲに事の次第を伝えようとした時、不意に通話が途切れる。
着信履歴にリダイヤルするも圏外表示のまま繋がる様子も無い。
…ジ・エンドであった。
嗚呼
夢なら覚めないで…
悪夢なら終りにして…
そして早く…早くここから連れ出してにございます(^ ^ゞ
突き当たる無人の事務所の緑を帯びた遮光の中で延々と鳴り止まぬ固定電話の警鐘に目を閉じて天を仰ぐ
階下のファクトリィで吹き荒れる無価値という名の暴力…それは延々と繰り返す煮炊きと瞬間冷凍とパッキングと三現主義の惨劇と悪夢
『物を造る仕事が不況なら』
『ものを大切にする仕事をすればいいじゃないか』
売上も成果も人手も家族の笑顔も足りない消費サイクルの中で延々と繰り返す悪夢と白昼夢…
歩みを止めたら
何処までも堕ちていく
見続けられるなら
真昼の悪夢でも構わない
その悪夢に
続きがあるのならば…
お得意様にプレゼンの名目で冷凍精肉を牛にも拘わらずトン単位で押し売りに行く。
愛車ハイエースに約800kg
同行する上司のADバンに約300kg
ペダルを踏む足元から這い昇る冷気に800kg相当たる牛々の無念を感じつつ
6月並の陽気の中にあって冷房要らずで快調に横須賀のお得意様の元に到着する。
『いゃあ、本当にごめん』
『納品のエレベーター…壊れちゃって(笑)』
かれこれ10年越しのお付き合いになるお得意様は春休みで遊びに来ていた孫の姿に相好(そうごう)を崩しながらも
齢60の糸よりも細い瞼の奥からぞくりとする様な冷たい視線を投げかけて来る。きっと人の一人や二人は殺めているに違いない。
(N:『…しろばんばって読まれました?』)
(上司:『…とっと運べ!』)
かくして
1ケース約25kg、コールドスリープ状態の牛々を雑居ビル5階の大型冷凍室まで運び込む羽目になった。
人がすれ違うのがやっとという狭い階段を25kgの冷たい牛を抱きしめつつ黙々と登る。
5階の奥の大型冷凍室の更に奥深く…凍てつく空気に足元をとられつつも1頭安置♪
3頭目を安置した時点で全身から汗が噴き出し始め
5頭目で膝が…全身の筋肉がガクガクと笑い始める。
10頭(ケース)を過ぎた所でハゲ上司(失礼)が『俺実はヘルニアなんだ』と弱音を吐いて脱落。
N:『ハゲ上司(失礼)め!ハゲ(失礼)の上に仮病か!このハゲ(失礼)め!』
人を呪わば穴二つ…そんな事は口が裂けても穴を掘っても言える訳も無く(注:ハゲていませんから)
ニッコリと笑顔で再び牛を霊安所(失礼)に運び始める。
残るは30と数ケース…この時既に時刻は16時を回り、間もなく訪れるであろう逢魔刻とその冷気が辺りに充ち始めていた…
約3時間後…辺りがすっかり夕闇と冷気に包まれた頃
5階奥の大型冷凍室のその奥で40と数ケースの冷凍牛々を前に不本意ながら凍り付いた床に寝そべる独りの漢(おとこ)の姿がそこにあった。
(N:『…駄目だ、今動くとリ・バースしてしまう…』)
冷機のスイッチを一次的に弱めているとはいえ、汗だくのシャツが次第に凍り付くのを判りつつも身動きが出来ない。
今頃、お得意様は孫達をつれて出掛けている頃であろうし
ハゲ(上司)は『肉のプレゼン』と称して解凍した牛々を供養しつつ、得意先の娘さん達に品性と知性のかけらも無いセクハラはげ…発言を無闇に連発しているに相違無い。実に羨ま…無念である。
口惜しさに袖を濡らしつて数億の雑菌と共に凍り付いた床にあられもない態勢で寝そべるわたくしの耳に
冷凍室の入口に近付いて来る微かな足音…やがて足音は入口付近で立ち止まった。
N:『入って来いよ…だらし無い姿を見せてやる。可愛い子ちゃん(死語)なら尚更歓迎だぜ…』疲労に蝕まれた思考はもはや常軌を逸していた。
『…』
わたくしの悪意に満ちた強烈な念を察知してか、入口の主はしばし無言のまま立ち尽くし…
『バタンッ』
冷凍室のドアが閉まり刹那、辺りは暗闇に包まれる。
『ゴオォォッ』
当然の様に冷機が全快で稼動されてブリザードの如き強風と冷気が吹き荒れる。
N:『ぉぉ~ぃ…』
誰の応(いら)えがあるはずも無く『THE THING(邦題:遊星からの物体X)』ばりに只々凍るに身を任せる…
『…言っておきたい事が~』
『…今更聞いてもしょうが無いよ』
映画のラストシーンと最後の台詞がフラッシュバックする。
そんな時
不意にケイタイ電話が鳴った…ハゲ(上司様)からだ!
『お前いつまでもトロトロやってんじゃないぞ!』
『美味しいお肉もお姉さん達もお待ちだぞぅ?ん?』
ハゲに事の次第を伝えようとした時、不意に通話が途切れる。
着信履歴にリダイヤルするも圏外表示のまま繋がる様子も無い。
…ジ・エンドであった。
嗚呼
夢なら覚めないで…
悪夢なら終りにして…
そして早く…早くここから連れ出してにございます(^ ^ゞ