幾年振りに還った古巣に

置き去りにされたボタンが一つ待っていた


切れかけて明滅する電球と暗がりのなか

オリーヴ色のボタンだけが鈍く光る


掛けた言葉に応(いら)えも無く

巣立って行ったオリーヴ色の

気丈で…淋しげな後ろ姿がつい今しがたの様に甦り

その瞳の色さえ思い出せず

祈る様に空を仰ぎ見て

『ソラミタコトカ』と

オリーヴ色の瞳が

暗がりからじっと睨む


『…電話も出やし無かったくせに』

応えぬを幸いと

追えぬ己を棚にあげる程に悔やむ


『オリーヴの君は今頃どの空を飛んでいるやら』


知る由も応えも無くあの時のまま

ボタンだけがオリーヴ色のまま

周囲と共に世界は色を失う


それでもあなたは

今もオリーヴ色のままなのでしょうか













『ちょっと…見ていただけませんか?』


昼下がりの閑散としたオフィス

総務の四橋さん(三十路の美人妻)がためらいがちにわたくしに助けを求める。

(『そんな事言われて応えぬ男子が世にいるものか?否!』)

見るなと言われてもちょっとと言わずたっぷり見てやると心中即意を決して彼女の隣に素早く移動する。

『…コピーした時に…計算式が…ずれたんですねぇ…』

エクセルを開発した某MS社に手放しで心からの賛辞を送りつつ

作業と説明をする振…傍ら、四橋さんの薄手の開襟シャツの…胸元では無く、あくまでもシャツのボタン…正確にはボタンの外し具合を確認する。

シャツは第三ボタンまで深々と開放され

乳房頭頂部…専門用語で言う所の『ナブラチロワポイント(NP)』の中間座標にまで達している。


『ここですか?』


不謹慎なイメージを勝手に内包したまま四橋さんのマウス捌きをしばし凝視、生返事になるのは致す…致し方無かろう。


『近づかないと…見えないです』


画面に近づくべく前のめりになった四橋さんの『ナブラチロワポイント(NP)』が眼前に迫るという人生最大の歓迎すべきハプニングを神に感謝したその時

奇妙な違和感に襲われ、純粋な気持ちで『ナブラチロワポイント(NP)』を視認すると…



(『…御起立ジャポン!?』)



『何故』なんて疑問は愚問である。

暖かい午後の陽気とハイレベルな薄着に全力で感謝しつつ

生まれたての赤子の如く『御起立したナブラチロワポイント(NP)』を眼と脳裏に焼き付ける。


沈黙を不信に思ったのか

こちらを振り返った四橋さんと視線がぶつかり…







『…ここ?押すんですか?』






押忍!?ここ!?どこ!?


押したボタンはマウスかキーボードかはたまた『ナブラチロワポイント(NP)』か…



二人だけの秘密にございましょう(^^ゞ