商談を不自然に切り上げて

いそいそと帰り支度に入る。

居合わせた一同からの咎めるような視線が痛い。

自称『仕事人間』の悪癖を誇るこの私が

いつからこんな腑抜けに成り下がったのか。

遥々遠方からの商談相手に

まるで『背中を刺される事を警戒する』かの如く、背を向けずに後ずさる。

その時のわたしの『不自然な造りわらい』ときたら

まだ『純粋だったあの頃の私』であろうものなら

有無を言わさず『殴り飛ばして』

『校舎の窓ガラスを割って回った揚句に、夜の戸張の中を盗んだバイクで走り出したくなる』程に

『卑屈』であったに違いない。

同席していた
『新人店長K君』も
『新入社員Nさん』も

『意味も無く後退り商談を不自然に終わらそうとした私』に

素直な『違和感』と

『こいつ浮気相手でもいるんじゃね?』との疑いを抱いたに違いない。

日頃築き上げた『誠実』『勤労』のイメージは脆くも崩れさり

私への『不信感』ばかりが募る。

(『…何とでも言えばいい…俺は修羅になる』)

私が心の中でひそかに覚悟を決め

社用車のドアに手をかけたその刹那…


『課長!尻が裂けてます!』

『バカヤロウ!尻が裂けて無くてどうするんだ!』


ズボンの尻を鞄で隠し

社用車に乗り込む私を

一同が神妙な面持ちで凝視している。

『こ、このスラックスもう3年越しでさぁ…まったく嫌になっちゃうねぇ(汗)』

既に合点がいった一同に今更必要の無い言い訳を残して

そそくさと車は走り去る。

…何と言われても構わない。

今日は『早退』…


むしろ『撤退』します(T_T)